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結局、目次案作りは何をしているのか?



倉下忠憲前回紹介したことをさまざまに行い、アウトラインは以下のようになりました。



やはり各章の「概要」を一通り書くと、全体がビシッと締まってきます。いかにもこれは本の目次です、という顔つきになってきます。ある種の「もっともらしさ」が宿り始めると言い換えてもいいでしょう。

あとは、

  • 項目を整理し
  • 本文を肉付けし
  • 概要をre:整理する

の繰り返しで、徐々にこのアウトラインは本へと近づいていきます。言い換えれば、アウトラインの育成が、本の執筆に近似できます。

この点について、もう一度整理しておきましょう。

アウトラインを育てるということ

アウトラインを作り、それを育てることには以下の意義があります。

  • 内容の撒き餌
  • 構図・流れの確認
  • もっともらしい設計図

まず「内容の撒き餌」です。ある項目を書き出すことで、関連する別の項目が出てきます。それは、内容をより掘り下げるものかもしれませんし、兄弟になる要素かもしれませんし、一つ上の階層かもしれません。ともかく、頭の中にある状態から「書き出して」みることで、新しい内容を引きつける効果が生じます。

次に、そうして書き出した項目がどんな構図になっているのか、どんな流れになっているのかを確認し、調整します。AとBという二つの要素があるとして、A→Bと並べるのか、B→Aと並べるのかによって、そのコンテンツが持つ意味というものが変わってきます。言い換えれば、そのコンテンツの意味は、要素の配置により決定されます。よって、内容を肉付けしていきつつも、その流れを確認することは大切です。

さらに、そうした要素をまるっとひっくるめた全体象がどうなっているのかを確認することも重要です。単に流れだけであれば、「あれがこうなってね、で、次にそうなって、最後にああなるだけど、その途中にあれが出てきて……」のような語りで説明できます。しかし、そうして一つひとつの流れを追いかけているだけでは、全体像はわかりません。

本の骨子となるのは、全体を貫く一つのメッセージです。それを確認するためには、全体を一覧し、できれば粒度を変えて内容を確認したいところ。だからこそ、それが最終形でないとしても、ある時点での全体象(≒こうなるだろうという設計図)が必要となります。

無限の調整とその終わり

さらにです。上記の三つは互いに影響を与え合います。

内容が増えれば流れが変わり、流れが変われば全体像も微妙に動きます。全体像が変われば、求められる内容が変わり、内容が変われば流れもまた変わります。

ある部分を固めたら、自動的に他のものも次第に決定されていく、という簡単なものではありません。一つの要素の変化は、他のものに影響を与え、調整の連鎖は永遠に続いていく、かのように思われます。

しかし、実際はそうではありません。それがどのタイミングなのか予想はできませんが、ある段階で、まるで天啓が降りたかのように、「うん、これだ」というものが固まります。「これ以外には、考えられない」というような確信が得られます。生涯を共にするパートナーを見つけたかのような感覚です。

それが得られれば、少しずつ変化の波は鎮まっていきます。調整の揺れ幅は小さくなっていきます。そうなれば、作業があとどのくらい残っていようが、本はできあがります。というよりも、それが「本」としてこの世に顕現できる確信を持てる、という感じです。

さいごに

もちろん、その確信は、真理とイコールではありません。「生涯を共にするパートナーを見つけたかのような感覚」が、正しいとは限らないのと同じです。

本が書き上がり、三ヶ月して見返したら、「もっと違う形にできたよな」と思うことはよくあります。でも、その想像自体にあまり意味はありません。書いていた時点での確信は、そのときの自分の限界だからです。自分が成長すれば、限界も変わる。ただそれだけの話でしかありません。

そして、たとえその確信が真理とイコールでないにせよ、確信がないことには、パブリッシュは難しいものです。

だからこそ、アウトラインをいろいろに動かし、「これでいい」と思えるような形を模索し続けるのです。

▼参考文献:

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「アウトラインを育てる」という話は、上記の本でも学べます。どれも面白く、有用な本です。

▼今週の一冊:

最初はノウハウ系の本なのかなと思っていましたが、「ヒット」という現象にフォーカスを当てた本で、読み物としても面白く読めます。

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▼編集後記:
倉下忠憲



全体的に予定が変わってきました。じっくり企画案を進めるが、ゆっくり企画案を温めるくらいになっています。まあ、そういうことができるタイミングは限られているので、今できる限りのことをやってみたいと思います。まったく新しい形の本の書き方へ。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中