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文脈を飛び越える本との出会い方

By: Noodles and BeefCC BY 2.0


倉下忠憲
皆さんはどのようにして読む本を選んでおられるでしょうか。

今までは書籍は本屋で購入するのが当たり前でした。最近ではAmazonなどのネットショップが勢力を伸ばしてきています。そして電子書籍が徐々に普及しつつあります。そんな変化も踏まえて、どうやって本を探すのかを考えてみたいと思います。

 

本屋の場合

普通の本屋さんの特徴は「最新刊」「売れている本」「話題の本」が見つけやすいこと事です。しかし、これは逆に言うとそれ以外の本が見つけにくいという事でもあります。本棚に突っ込まれフラットに並べてあるだけの状態ではなかなか目に留まりません。

知的生産がいくつかの情報の組み合わせで成り立つものとするならば、「売れている本」「話題の本」ばかり読んでいては「新しいアイデア」はなかなか生まれにくいと思います。

また、タコツボ的に自分の興味ある本ばかり読むというのも同様です。「経済学」の本ばかり読むよりも、「環境学」や「生物学」などにも触れる事によって新しい視点から「経済学」を見つめ直す事ができるかもしれません。例えば最近話題の「行動経済学」は古典的な経済学の文脈の中からでは決して生まれてこなかったでしょう。

 

ネットショップ

Amazonなどのネットショップでは一般の本屋と比べて品揃えは大変豊富です。それが魅力の一つといってもいいでしょう。しかし、そこでは「検索」が基本です。探せば見つかりますが、探さなければ見つかりません。

ネットショップでは「検索」に加えて、「おすすめ」という機能もあります。自分の購入履歴から類似の本を提示してくれたり、あるいは同じ本を買った人の購入履歴から関連する本を提示してくれる、という機能です。

これは、ある分野の本を収集する場合には非常に便利に使えます。一冊の入門書から類似の本を探す事ができます。また著書の名前で検索を書けて見つけた本から関連する本を探して、また検索・・・という方法を使えばいくらでも本は見つかるでしょう。

しかしこの「検索」+「おすすめ」システムでは新しい本を見つける事はできません。新しい本とは「文脈を飛び越えるような本」です。

 

文脈を飛び越える

「文脈を飛び越えるような本」とはどのような意味合いでしょうか。「読んだら興味を覚えるはずの、しかしまだ今のところは興味の無い本」と言い換えてもまだ分かりにくいかもしれません。

簡潔に表現すれば、「自分の新しい関心のドアを開いてくれる本」、ということです。

こういう本は普通の本屋さんやネットショップではなかなか出合う事ができません。限られた時間で本屋を探索する場合は、まず自分の興味ある分野のコーナーから見て回るでしょう。これでは「未知の本」と出会える確率はあまり高くなさそうです。

ネットの検索やオススメでも検索軸は「自分の(現在)関心ある本」であって、未知なる本はその対象外です。

自分の関心という文脈において本を探す場合、その外に広がる本との出会いは絶望的です。

 

書評ブログやソーシャルメディア

「文脈を飛び越える本」との出会いの可能性があるのが「書評ブログ」やTwitterのような「ソーシャルメディア」といった存在です。

“餅は餅屋”という言葉がありますが、読む本については読書を数多くこなしている人に聞くのが一番です。書評ブログを継続的に更新されている方は本当に数多くの、そしてあまたのジャンルの本を読んでおられます。

それらのブログの中では、本屋でタイトルを見ただけでは手に取る事もなかったであろう本たちが、要約と共に「どんな風に読んだのか」といったところまで踏み込んで紹介されています。

今まで興味が全然なかった分野でも、「どんな風に読んだのか」という点に関心を持てる本が、「文脈を飛び越える本」というわけです。

例えば私の場合だと、とあるBlogで『経済は感情で動く』という本の書評を読むまでは、「行動経済学」というジャンルの存在すら知りませんでした。それが今では関心の高いジャンルの一つになっています。こういう例は多分私だけではなく、多くの方が経験されているのではないでしょうか。

普段からそういったブログの情報に接しておけば「文脈を飛び越える本」との出会いの確率は高まります。もちろん、現在関心のある分野のブログをチェックしておけば「面白そうな本」も知る事ができます。

 

まとめ

現在では、本と読者をつなぐものは本屋だけありません。特に「紹介」という役割は本屋において限りなく小さくなってきています。

さらに電子書籍を考えてみると、そこには「本屋」が存在しません。ネットショップとブログやソーシャルメディアが流通と紹介の役割を担う事になります。そういった環境においては、有益な書評ブログを知っている事が良い本を知るための手段となっていくでしょう。

本との出会いがそういった新しい流れに向いていく事は悲観すべき事ではないと思います。「文脈を飛び越える本」や「面白くても話題になっていない本」との出会いが増えるのだとすれば、それは喜ぶべき事なのではないでしょうか。

▼関連書籍:

経済は感情で動く―はじめての行動経済学
マッテオ モッテルリーニ
紀伊國屋書店 ( 2008-04-17 )
ISBN: 9784314010474
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

記事中で紹介した本。「行動経済学」という言葉よりも「脳のトラップを知る」という表現の方が分かりやすいかもしれません。興味ある方はぜひどうぞ。

▼今週の一冊:

先週も紹介しましたが、しつこく今週もこの一冊。4月15日発売なので、すでに書店にも並んでいると思います。書き手と読者をつなぐ出版と出版業界の変化は無関心ではいられないほど大きなインパクトを持っていると思います。

電子書籍後の世界で「書き手はどうあるべきか」とか「必要なスキルは何か」を一から考え直していく事が必要になってくると思います。本書で紹介されている音楽業界の実情は参考になる事例が沢山あります。本を書いている人や、これから書きたいと思っている人には必読といってもいいかもしれません。

佐々木 俊尚
ディスカヴァー・トゥエンティワン ( 2010-04-15 )
ISBN: 9784887598089
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

 

▼編集後記:倉下忠憲
iPadの発売が延期になったということで、いろいろな衝撃がでているようですね。残念に思っている方は沢山おられると思いますが、逆に見ると米国で予想以上に売れている、という事です。iPadが持つ力の大きさが計り知れます。ますます、欲しくなりますね(笑)