『拝啓、本が売れません』を一読した。
面白かった!
とは言え最初この本を読んだときは、ちょっと「選挙カーみたいだな」と思った。
「本が売れない本が売れない本が売れない!」
「あと一歩、あと一歩なのだ!」
「本当に、本当に、本当に本の好きな人だけが」
といったリズムでやたらに迫ってくる。
スタイルなのか、なにかひどく切実なものが常に胸にこみ上げているのか、とにかくすぐ近くで連呼している人がいる、といった印象が強い。
そのうち話の展開がわかってきた。
これは「本が売れない著者が、凄腕で本を売っている人にアドバイスを求めて成長していく話」なのである。
これが面白かったのはもちろん私が「ビジネス書作家」であり、ビジネス書が売れない、本が売れないという話を、毎日のように目にしているせいだ。(気分も不景気になる)。
この本では2章目「ラノベって?」という問いから大事な話が始まる。「ラノベの定義に意味なんてない」という「発見」に至るあたりがとても大事なのだ。
著者は文芸の人で、私とは一見かなりズレがある。
しかし、やっていることはよく似ているし、抱えている悩みもよく似ているし、行動パターンも、動機も、取り替えがきくほど相似している。「仕事に対する姿勢」がやや違う、くらいなものである。
しかし似ていても同じではない。たとえばこの著者の作品はそのうち「映像化」(第5章)されるやもしれず、そうなったら彼女の人生は一変するだろう。私にはそういうことは起こらない。
だから、こういう本を読むととても面白いのである。
自分のやっていることを、客観視できる面白さがあるのだ。私は「文芸の人」ではないから。
文芸の人ではないけれど、私の悩みの根本も、結局は「本が売れない」ことだ。
しかし売れる本もないわけではない。(というよりも、「売る方法」があるのかも知れない…)。
売れれば良いってわけでもないが・・・といったところもよく似ている。
しかしたとえば「ラノベだって売れてない」といった「発見」をするところにヒントらしきものが見えてくるのは、よくわかる。
本は、面白ければそれで売れる、というわけにはいかないのである。
肉を食べたい人のところへ「おいしい野菜炒め」を持っていっても、「それはもちろんおいしいのでしょうけど・・・」となる。この例をスパッと出すあたりはさすが「凄腕編集」さんなのだろう。
私たちはやってはいけないというより、意味がないと知りつつも、こういうことをやってしまう。肉を食べたい人のところへおいしい野菜を持っていってしまう。いまの時代でも、これをやらずにうまくやるのは、決して簡単ではない。
世には必読書にあふれている。知っているべき教養書も、一生かかっても、いや「十生かけても」読み切れないほどあふれている。しかも私たちは本だけ読んで生きていくことはできない。面白い動画、面白いゲーム、おいしい食べ物、楽しいスポット。人が経験主義になって、その経験を取りこぼす「苦しみ」にあえぎ出すのもわかるというものだ。
こんな状況にさらに1Tweetをつぶやき、1記事のブログを提供し、さらに1冊の本を提案するというのである。「面白い」だけでダメなのは、いうまでもない。誰にとって面白いのかがわかるようでないと、受信者が困り果てる。実際にいま、みんな困っているのだ。
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リアルのほうは満員御礼となってしまいましたが、オンラインのほうはまだ少し空きがございます。
オンラインですから、そのあと懇親会などもないですが、ご自宅で受けられますし、内容も違いはありません。
ご都合よろしければぜひご参加ください。