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情報に押し流されないための基本的なテクニック

倉下忠憲
溢れかえる情報に押しつぶされそうになっていませんか?

毎日受信箱に溢れるメールにウンザリ。ウェブサーフで面白そうな情報を見つけるけど記憶には残らない。いったい何のための情報なんだか・・・

もし、そんな感覚を覚えておられるならば、前回紹介した『グーグル時代の情報整理術』に出てくる、「えり分け」と「繰り返し」という二つのテクニックが使えるかも知れません。

グーグル時代の情報整理術 (ハヤカワ新書juice 9)
ダグラス・C. メリル, ジェイムズ・A. マーティン
早川書房 ( 2009-12 )
ISBN: 9784153200098
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

著者のメリルは現代を生きる我々が抱える課題をこのように表現しています。

p151
「日々、無数の情報が私たちのもとに押し寄せる中で、無視すべき情報、あとで使うためにデジタルや書面で保管すべき情報、脳に記憶すべき情報を、どのように見分ければよいのか」

まさにその通りです。情報は集めようと思えばいくらでも集められます。むしろ意図的に遮断しない限りありとあらゆる情報が私たちに向けて流れ込んできます。

そのような状況の中はで、「必要な情報はどれか」という判断を下す必要があります。そのような判断がなされなければ脳は即座にオーバーヒートしてしまうことでしょう。

メリルが実践してきた「えり分け」と「繰り返し」の原理を理解すれば、自分にあった整理術の構築に役立つかも知れません。

「えり分け」とは?

「えり分け」とは入ってくる情報を選別することです。深く考えたり、実際に処理に入る前に、その重要度や文脈にに応じて情報を分別していく作業を行います。

郵便受けを想像してみて下さい。そこにはいろいろな「手紙」が入っています。

友人からの手紙、銀行からの通知、まったく興味がないダイレクトメール、同窓会への参加のお誘い。
それら全てに一つ一つ目を通していくのではなく、必要のない物、返事を書く必要があるもの、保管しておく必要があるもの、といった具合に分けていく。これが「えり分け」です。

メリルの言葉を拝借すれば

「重要だと思う情報だけを残し、そのほかはいっさい無視する」

となります。

「繰り返し」とは?

「繰り返し」は同じ情報に繰り返し接することです。「選り分け」によって重要な情報が分けられているので、繰り返す作業そのものに大きな時間はかかりません。また、文脈がはっきりしているので「情報」の使い勝手や、作業の効率も上がっています。

本当に記憶・理解するためには何度も情報に触れる必要があります。それを行うのが「繰り返し」です。

この二つのステップを実行することによって、

  • 全ての情報に均一に接することなく
  • 重要な情報には十分時間をかけ
  • 不要な情報には時間をかけない

という環境が実現できます。

実際の例

実際の運用方法を「グーグル時代の情報整理術」(p155)から引き出してみましょう。この例で使われているのは「数学の教科書」です。

数学の教科書での運用手順

第一段階:初読

  • 四本の蛍光マーカーと明るめの色のペンを用意する
  • ページをざっと読みながら読んでいる目的にとって重要だと思われる内容を探す。
  • 興味のある内容が見つかったら、カラーペンでその脇の余白に☆マークをつける

第二段階:読み返し

  • ひとつの章を読み終えたら☆マークを付けた文章や段落だけを読み返す
  • 情報の目的に応じて☆マークの項目を大きく四つに分類し、蛍光マーカーで色づけする
    1. 新しい用語や概念の定義 →記憶する
    2. 数学の公式やその変化形 →パターンを見つけ出す
    3. 理解できなかった部分  →あとで詳しく読み返す
    4. 練習問題の解答     →自分の解答と照らし合わせる


第三段階:二回目の読み返し

  • 重要な部分がマークされているので、その目的にそって読み返す

簡単にまとめると、最初に全ての情報の中から重要そうな情報をピックアップし、その後それらを分類し、さらにその後にそれらをまとめ直す、という作業です。

やや泥臭いように感じられるかも知れません。一度にすっきりと処理した方がスマートに感じられるでしょう。しかしこういったやり方が一番「脳」の機能に適しています。短期記憶が弱い我々の脳は、全ての情報を一度に処理することはできません。また記憶に関しても一度接しただけで、それを十分に消化することもできません。

メリル氏はこの手法を使いメールの処理、会議のメモ、執筆などを処理しているそうです。

本の執筆の場合は、編集者が要求する処理に関して「手のかかるコメント」と「かからないコメント」に分け、さらに作業内容や難易度に基づいた分類を行っているようです。

メールについてはGmailのフィルタリング機能による「えり分け」方などが本の中で紹介されています。

まとめ

今回紹介した二つのテクニックはごく「基本的」なものです。基本的であるがゆえに、様々な場面に合わせて応用することができそうです。

もし、処理しなければならない情報の多さに圧倒されそうになったら、まず必要なさそうな情報をばっさりと切り捨て、重要そうな情報を分類し、あとで何度も見返せるようなシステムを構築してみることをおすすめします。

 
▼今週の一冊:
佐々木俊尚氏の新刊です。最近セルフブランディングに興味があったので、タイトルを見て飛びつきました。単なるウェブツールのHowToだけではなく、どのような戦略を持ってネットと接していくべきなのか、という指針にもなる一冊です。

会社の看板の「人脈」から個人の「信頼」による仕事獲得へのシフト、というのはこれからの社会で生きていくためには一度は真剣に考えるべきテーマであると思います。

佐々木 俊尚
宝島社 ( 2010-01-09 )
ISBN: 9784796674850
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

 

▼編集後記:
倉下忠憲
一月の半ばになって最近めっきり寒くなってきました。ストーブが心強い味方、というかライフラインみたいなものです。

しかし、渡部昇一氏は「知的生活の方法」という本の中で「同じ部屋の中で酸素を消耗する暖房器具はすべて頭の敵と思わなければならないのである」と書かれています。

快適な知的生活空間を作るのも、なかなか難しいものです。

 
 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。