主人公は、
1.相手の本名がフルネームでわかっていること
2.相手の顔を知っていること
という2つの条件が整えば、その相手をあやめることができる。
これは、最近読み始めたある漫画のプロットを強力に下支えするルールです。名前はあえて伏せますが、ご存知の方は「あぁ、あれか」とお気づきになると思いますし、ご存知なくても続きを読む上では支障はきたしません。
これまでも、読み始めたら、あるいは観始めたらやめられなくなったという書籍や映画はいくつかご紹介してきましたが、漫画は初めてです。僕自身、あまり漫画を読まないということもありますが、最近は読むようになりました。
形はどうあれ、
1.「どうしてこんなに人を引き付けるんだろう?」という実体験ができる
2.1の体験を追想することによってメタ認知ができる
3.人を引き付けるコツを自分で新たに作るヒントが得られる
4.人を引き付けるコツを自分で作ってみたくなる
5.人を引き付けたくなる
6.モテたい
という段階を経て、最終的には落ち着くところに落ち着きます。「マーケティング」とか「アイデア・マネジメント」とか「スキルアップ」とか「○○術」といったクールでシャープな形容をしたとしても、詰まるところは同じだと思うのです。
であるならば、駆け引き無しにストレートに迫った方が潔いはず。
冒頭で取り上げた漫画では、登場する人物たちに共通するのは、Aができる代わりにBはできない、Cをすると即アウト、Dという条件のもとでならCは可能だが寿命が半分になる、などなど厳格な“取引条件”の下にいることです。
これは、スーパーマンでもウルトラマンでもスパイダーマンでも「MATRIX」のネオでも、必ず背負っている宿命です。制約があるからこそ、「いまスペシウム光線を使わないと時間がない!」とか「マスクを取られたらマズイ!」といったピンチが生まれます。正確に言えば、ピンチを演出することができるようになります。
逆に、制約のない無敵のヒーローの場合は「どうせ弾に当たっても平気なんでしょ」とか「捕まったみたいだけど、鎖ぐらいすぐに引きちぎるんでしょ」という冷めた観られ方をされてしまい、どんなにがんばってピンチを装ってみても信じてもらえません。
モテるヒーローというのは共通して、弱点を持っており、それを観客に知られているものです。だからこそ観ている側をして「あー、そこに行ったら危ない!」とか「いまそれを言ったらバレちゃう!」あるいは「志村、うしろ!」という言葉を言わしめるのでしょう。
仕事でも、制約があるからこそ工夫の余地が生まれるのだと思います。そして、制約は何も与えられるばかりのものではなく、自分で「ここまで」と線引きすることもできます。
例えば、何が何でもノートPCのバッテリーが切れるまでに終えるのも1つの方法でしょう。
つまり、できることを限定することによって、何でも自由にできる状況からは想像もできないようなエネルギーが生まれるわけです。そして、限定するからこそ、仕事の成果の純度を高めることにもつながるはずです。
あまり複雑な制約はやる気を喪失させるだけですが、シンプルな制約であれば、それは自分を仕事に引き付ける強力な吸引力になります。冒頭に取り上げた漫画でも、いくつかの制約が重なって少し分かりづらくなることがあるのですが、原則として上記の2つのルールがベースになっているため、思わず読み進めてしまうのだと思います。
このような制約を設けるには、要するに自分は何をしたいのかを明らかにし、それ以外のことはばっさり忘れること。「仕事を終わらせること」なのか「相手にYESと言ってもらうこと」なのか。ここを後回しにして「どうあるべきなのか」にこだわるとカッコいい仕事ができるようになります、モテるかどうかは別として。