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情報摂取におけるマネジメント | Aliice pentagram



倉下忠憲

» 前回:情報摂取が抱える課題 | Aliice pentagram

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前回は「情報摂取」において生じる問題を検討しました。今回は、その改善策について考えてみます。

情報のやっかいな性質

前回検討した課題は、総じて言えば、「適正がわからない」のひと言に尽きます。

  • シグナル&ノイズ
  • フィルターバブル
  • 時間不足
  • ジャンクフード

「シグナル&ノイズ」は、何がシグナル(必要な情報)で、何がノイズ(不要な情報)なのかが判断できないこと、「フィルターバブル」は、どういう情報を仕入れれば偏っているのか(あるいは偏っていないのか)の判断ができないこと、「時間不足」はほどよいインプット時間、「ジャンクフード」は、脳(あるいは心)に良い情報が見極められないことが問題なわけです。

情報そのもの、その質、インプットに使う時間、情報から作用を受ける私たちの精神、そのすべてが目に見えないのですから、こうした混乱が生じるのはやむを得ないと言えるでしょう。

かといって、手をこまねいているだけなのはなかなかシャクです。

3つのマネジメント

「情報」を直接管理できないのであれば、間接的にそれを管理するのがよいでしょう。たとえば、次のようなものです。

  • ソースの管理
  • 時間の管理
  • 行動の管理


ソースの管理

情報摂取の一番の基本となるかもしれません。情報ではなく、情報源を管理するのです。

「〜〜速報」といった信頼度が怪しいサイトはチェックしない、やたら感情を煽り立ててくるブログは見ないようにする。たったこれだけのことでも、「シグナル&ノイズ」や「ジャンクフード」問題は改善します。

ようするこれは、RSSリーダーに何を登録するのか、Twitterでどういう人をフォローするのか、という情報ポートフォリオの構築の話であり、ここに気をつけていれば、情報の質の管理は(間接的ではありますが)達成できます。

ただし、バランスは必要です。

第一に、「普段正しいことを言っているサイトでも間違うことがある」こと。第二に、「自分が好きな情報ばかりに寄せてしまうと、偏ってしまう」こと。第三に、「ソースの性質は変化する」ことです。

これについては、改めて次回に詳しく書くことにしましょう。

時間の管理

もう一つ、重要な管理対象が「時間」です。

現状を冷静に直視しなくても、情報は無量大数ぐらいあります。言い換えれば、インプットにはそもそもとして際限がありません。しかし、私たちの手持ちの時間は明らかに有限です。自分の好きな情報を満足いくまで摂取していたら、あっという間に時間は無くなってしまうでしょう。

どれだけ関心があろうとも、時間的制約を考えればトリアージ的処置は必要となります。「読まない」「見ない」と判断することも、情報摂取においては重要なのです。

「ウェブサーフィンは一日一時間まで」

と、堅苦しく時間の使い方を制約する必要まではありませんが、一度タイマーを使って、自分がどれだけインプットに時間を割いているのかを知ることは有用でしょう。また、忙しいときに、「これだけは読む」「これは読まなくてOK」というように、インプットをパージできる仕組み(たとえば、RSSリーダーの重要度別フォルダ分け)を作っておくことも効果がありそうです。

行動の管理

栄養摂取のメタファーを用いるなら、カロリー過多を避けたければ、「運動」するのが一番です。情報摂取ならば、アウトプット、つまり情報整理や情報発信がそれに当たるでしょう。

情報発信に光を当てると、他の要素との関係も見えてきます。

一週間情報をインプットしているのに、何も書くことが思い浮かばないのなら、おそらくそれはデザート的なインプットに始終していたのでしょう。インプットのソースを見直した方がいいかもしれません。また、自分が何かを書こうとしているとき、そこにムカムカした気持ちがあるならば、それを起因させたであろうソースは「ジャンクフード」な可能性があります。そういうソースには、今後は近づかない方が健全に生きられるでしょう。

また、自分がアウトプットしていると、「脇の甘い情報源」が見えるようになってきます。書くことによって、読むことが強化されるのです。そうした力によって、読むものを厳選でき、結果的に時間の節約にもつながるでしょう。

さらに、自分が情報を発信していると、自分と関心が近しい人とつながることができ、それが新しい情報源の情報(メタ情報)ともなります。基本的に、アウトプットすることは、インプットに質的な良い影響を与えます(そればかりではありませんが)。

さいごに

インプットの管理は、実は容易ではありません。

今回は、「読み物」を中心に考えていますが、「聴く物」や「観る物」も現代では溢れかえっています。そして、何をどう考えても、それらすべてを摂取することはできません。日本全国の美味しいお店を回りきれないのと同じです。「自分の好みの情報」に限ってすら、全国制覇は無理でしょう。

その点を念頭において、ソースの選別、時間の使い方、自分の行動というものをバランスさせていかなければいけません。難しい課題です。

その中でも、一番重要度が高いと思われる「ソースの選別」については、次回に続きます。

▼今週の一冊:

一瞬、会社でしかめっ面人が机を囲む「会議」をいかに進めるのか、という話かと思ったのですが、もう少しファシリテーション寄りの内容でした。が、それはそれとして、人が集まる「会」という場において、何が大切なのか、どのような心構えを持っていればいいのかがわかりやすく解説されています。

» 会議のマネジメント – 周到な準備、即興的な判断 (中公新書)


▼編集後記:
倉下忠憲



11月に入りました。ゴールテープが見えていて、ぜいぜい言いながら、ふらつく足で競技場を走っている気分です。あと、もう少し。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由