「世にある知的生産系の本から、ノート術をピックアップする」
という企画の第二弾。
いささかタイトルがややこしくなってしまいましたが、今回取り上げるのは森清さんの『仕事術』という本です。
本書で取り上げられているノート術を紹介してみましょう。
ノートの構成
まずは構成の全体像から。4つのパーツがあります。
- 「何でもノート」
- 「システムノート」+「バインダー」
- 「構想ノート」
それぞれみていきましょう。
「何でもノート」
ベースとなるノートです。
名前の通り、何でも書き付けるノートで、著者は大学ノートを使用していたようです。
わたしが会社で働いていたときは、大学ノートを二冊持っていて、公と私を分けて時系列に記していた。電話の記録も会議の記録も同じ公のノートに書いておく。
書き方としては、「一冊のノートにすべてまとめる」メソッドに似ていますが、公と私で分けているのが特徴でしょうか。そうしておかないと、仕事中に同僚と一緒にノートの内容を確認しにくいから、という理由のようです。
たしかに、同僚とデータを共有する場合、私的な書き込みが入っていると使いづらいものがありますね。全ての情報が一冊にまとまっているのはある種の理想ではありますが、役割ごとに分けておく方が、実際的な方法と言えるでしょう。
記入に関しては、情報をカテゴライズせずに時系列で記入していきます。
「システムノート」+「バインダー」
システムノートは、何でもノートの補助的な位置づけになります。システム手帳、あるいはルーズリーフバインダーのようなものをイメージすればよいでしょうか。
リフィルのメモは何でもノートや構想ノート(後述)に貼り付けたり、パソコン内に打ち込んだりして時折り点検し、不要なものは捨てる。それでも残る会議録やプロジェクトの打合せメモは、別の保存用バインダーに収める。バインダーを短大関係やプロジェクト別にして時系列で整理している。
ようはメモの「inbox」的な位置づけです。ここに格納されたメモは、その後適切な保管場所に振り分けられることになります。
面白いのはリフィル(替え紙)を、主題別に使い分けている点。短大用は薄青い紙を、職業の在り方研究は黄色い紙を、といった感じでプロジェクトごとに色を割り当てる使い方をされていたそうです。視覚的に管理しやすいメリットがありますね。
「構想ノート」
構想ノートは、A4サイズのノートを使います。用途は、考えの整理や構成の工夫を行う場所です。
上記のノート群が、記録に重きをおいたものだとすれば、こちらは思考の作業場といったところでしょうか。
やはり、考えごとを広げるためには、一定の空間的スペースがあった方がよいようです。これは、実体験からも頷けます。ブレスト的な作業を行う場合は、A4かそれ以上のサイズが欲しいと私も感じます。ですので、普段使いのノートとは違ったノートを使いたいですね。
ノートの使い方
こうしたノートによって、ノートシステムを組み上げるわけですが、実際の書き方にも工夫が見られます。特に余白とペンの色の使い方は参考になるでしょう。
まずは余白について。
何でもノートについては、普段は右側のページだけを使います。左側のページは、空けておくわけです。で、右側のページに対する補足や関連した考えを空いた部分に記入します。
構想ノートでも同様に、主題を右側のページに書いて、そこから派生した考えを左側のページに書きます。デジタルノートと違って、アナログのノートは後からスペースを付け加える、というのが苦手なので、意識に余白を作っておくわけです。コーネル式ノートなどにも、余白を意識的に作る使い方が見られますが、これは大変有効な手法です。
また、ペンについては3色ボールペンを使い、
- 黒は単なる記録
- 青は自分の考え
- 赤は発生した仕事の処理方法(タスク)
と分けて記入する方法が紹介されています。
黒と青で事実と考えを区別し、実行が必要なタスクについては赤で際立たせているわけです。現代でも似たような手法がありますね。ペンを切り替える手間さえ厭わなければ、情報を見やすくする良い方法です。
さいごに
これらのノート術のポイントをまとめてみましょう。
- 情報は役割ごとで一元化する(時系列)
- inbox的な存在を持つ
- 発想を広げるためのノートを別に持つ
- 見返しやすいように色分けして記入する
これらをデジタルナイズするのは難しくありません。たいていのことはEvernoteだけでこなせます。時系列で記録を保存していくことも、色分けして記入するのも問題ありません。
ただ、構想ノートにあたる役割は現段階では難しいかもしれません。アウトライナーのような機能が付いていないからです。それについては、別途別のツールを用いるか、あるいは潔くA4ノートを使うのがよいでしょう。
というわけで今回は『仕事術』のノート術をご紹介しました。また次回をお楽しみに。
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▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。