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アイデア作法マトリクスで、発想力不足をチェックする

By: OlearysCC BY 2.0


倉下忠憲
世の中には、「発想法」に関するコンテンツが山のようにあります。

が、一口に発想法といっても、実際その中身は一様ではありません。

拙著『ハイブリッド発想術』では、発想法の形態に注目して以下の4つに分類してみました。

  • 自由連想法
  • 制約設定法
  • トリガーワード法
  • メタ思考法

この軸で、たいていの発想法は分類できます。

が、今回はすこし違った視点で発想術__あるいは発想に関する作法(さくほう)__をまとめてみましょう。

アイデア作法マトリクス

二つの軸を使います。

一つは「即効性・緩効性」の軸。すぐに使えるのかどうか、という視点です。

もう一つが「収穫・土壌」。こちらは技巧に関することなのか、土台となる脳に関することなのか、という視点です。

それらの軸を交差させると、次のような図になりました。

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[速効・収穫]「効率よい収穫」

発想を効率よく引き出す手法、と言えるでしょうか。

代表例が「トリガーワード」です。

「何かを代わりに使えないか?」
「逆向きにするとどうなるか?」
「一つに絞込むとどうなるか?」

こうした質問に答えることで発想を促します。アイデアのチェックリスト的な側面がありますね。

即座に使えるが最大の魅力ですが、残念ながら「思いつかないもの」(連想できないもの)は収穫物にはなり得ません。

[速効・土壌]「栄養剤投入」

発想の幅を、一時的に拡大する方法です。

たとえば板坂元さんが『考える技術・書く技術』で紹介している、「ブレーン・ストーミング読書」なんてものがあります。といっても大げさなものではなくて、ジャンルを問わずに適当な雑誌を手当たりしだいに読んでいくという方法です。

あるいは「ウィキペディア・ウォーキング」も速効性のある方法と言えるでしょう。
※ウィキペディアのリンクを気ままに辿っていく方法。

他分野の知識を仕入れることで、現状のアイデアに新しい視点を加えることができます。しかし、それは自分の中に定着する知識ではなく、あくまで一時的に借り入れたものでしかありません。

[緩効・収穫]「丁寧な収穫」

じっくと考えを拡げていく方法。たとえばブレインストーミングからのKJ法がこれにあたります。

あるいは何度も書き直すマインドマップも、ここに加えられるでしょう。

一気に答えを求めるのではなく、アイデアのコアにたどり着くために、周辺部分を含めて丁寧に掘り進めていくような手法です。

アイデアを出すのに時間が掛かる、という点もありますが、その手法に慣れるためにも時間が掛かるという点もあります。

[緩効・土壌]「土壌を豊かに」

自分が連想できるものの幅を拡げていく方法。

ある分野についての体系的な勉強や、実地的な経験を積み重ねていくことがここに入ります。

あるいは「メタノート」と呼ばれる、長期間にわたって自分の着想を書き付けていく行為も、自身の発想の幅を拡げてくれる効果があるでしょう。

続ければ続けるほど効果が上がりますが、今日明日に効果を求めることはできません。

さいごに

なんのためにこのような分類を行ったかというと、「足りていない部分はないか」を自問するためです。

即効性のある手法・方法は、使いやすく成果も得られやすいものですが、長期的な視点において得られるものはそれほど多くありません。どれだけ発想のテクニックを身につけても、自分の中に無いものをひねり出すことはできないからです。

逆に豊かな体験や知識があっても、それをうまく収穫できなければ、発想を「アイデア」の形に落とし込み、現実的な問題解決に役立てることができません。

バランスが大切です。

上の分類を眺めてみて、自分のアイデア作法に偏りがないかを一度チェックしてみると、「発想法」の話題をより活用できるようになるかもしれません。

▼参考文献:

「ブレーン・ストーミング読書」だけではなく、知的生産についての面白い話がいくつも紹介されています。


KJ法については、この本を参照してください。

▼今週の一冊:

書店をぶらぶらしていたら、見知った本の新版が発売されていました。

自分の(あるいは他人の)行動をどのように変化させればよいのか。そのテクニックが紹介された一冊です。チャールズ・デュヒッグの『習慣の力』と似た感じがあるかもしれません。

「セルフコントロールは消耗資源だ」

という認識に立てば、自分の行動管理のやり方もきっと変わってきます。

内容も面白く、読みやすく、役に立つ一冊です。

スイッチ! 〔新版〕― 「変われない」を変える方法 (ハヤカワ・ノンフィクション) →アフィリリンクお願いします

▼編集後記:
倉下忠憲
この記事は、アイデアプラント代表の石井力重さんのFacebookの投稿に触発されて書いてみました。発想技法の分類軸は、これからも考えてみたいところです。

▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。