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仕事を気持ちよくさばくためのタイミングとは?

すべては「先送り」でうまくいく
すべては「先送り」でうまくいく フランク パートノイ 上原 裕美子

ダイヤモンド社 2013-03-28
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この本は非常に面白いのですが、私にしてみれば何とも困ったタイトルです。何しろ私のメインテーマは「いかに先送りを防ぐか?」にありますし、私の一番売れている本もそれをテーマにしたものです。

それなのに「すべては先送りでうまくいく」?

でも、読み進めるうちに安心しました。本書のタイトルとなっている「先送り」と私が使っている意味は少しちがいます。そして結局、本書で言いたいことと私が言いたいことはほぼ一致しているのです。

ベストのタイミングまで「待てる」ことの重要性

この本で「先送り」と言っているのは、まず「ガマンできる」ことなのです。本書の最初の方に「マシュマロテスト」が出てくるのがそのいい証拠です。マシュマロテストというのは、しかるべき時まで「待つ」ことができた子供が、ご褒美がもらえるという心理テストのことです。

こういう文脈では普通「先送り」とはいわないでしょう。「衝動を抑える」とか「早まらない」といったりするはずです。「先送りでうまくいく」というのはこの場合、「早まらない」ことなのです。

スポーツをよくやる人ならこのことの重要性は知っているでしょう。「身体が突っこむ」という表現があります。「体重を残す」という言い方もあります。テニスでも野球でも「打ち気にはやった」りすれば、「振り遅れた」時と同じように、ベストショットは打てません。

でもこれは「マシュマロテスト」と同じように難しいことです。テニスをやったことがある人で「来たっ」と思ってボレーをネットに引っかけたことのない人は、たぶんいないでしょう。

球を打つのにぎりぎり間に合う時間まで、スイングの判断を遅延することができる。

たしかにそうなのですが「遅延」というのも何かおかしな表現だという気がします。早まってはいけないとしても「遅延」してもいけないのです。ただこの「タイミングがくるまでマツ」ことはたしかに重要な能力であり「やみくもに即決できればいいというモノではない」というのはたしかです。

では「第1感」は?

著者はこういう話を巧みに展開してきます。無意識の高速性を「遅延させる能力」から、マシュマロに手を出してしまうのを「おさえられる能力」や、「システム1」と「システム2」の話など。

「過度に高速な判断や行動は有害である」というエピソードを巧みに紹介されてみると、だんだん気になってくるのは「直感システムの優秀性」を論じていた議論との整合性です。例えばマルコム・グラッドウェルの「第1感」が一時話題になりました。

「最初の2秒」の「何となく」が正しい、というやつです。どうもその意見と「拙速はダメ」というのとは相性が悪そうです。もちろん「ベスト・タイミング」とはベストのタイミングでなければならず、遅ければ遅いほどいいなどということにはならないでしょうが、「早ければ早いほどいい」には少なくとも本書の著者は反対しているわけです。

本書でもっとも注意を促されているのは「遅延を生み出すシステム」なのです。なぜ優れたプロのアスリートは「その一瞬」まで待てるのか? なぜある種の子供たちは「マシュマロテスト」に合格するのか? 私達にもそうした能力があるとして、どうやればそれをよりよく活用できるのか?

本書はそれを解き明かしてくれる本です。

▼編集後記:
佐々木正悟

6月9日 第9回タスクセラピー「今日何をしていたんだろう?」をなくす(東京都)

タスク管理においても同じようなことが言えます。タスクというのは「何でもすぐやる」ということができないから管理することになるからです。

物事を進めるには、実行するべきタイミングというものがあります。陳腐な例ですが「ハガキを出そう」と思うのはポストの前を通りがかったときが最適です。しかし、出す時ハガキを「持っている」には、家にいるときにハガキを持つことを思い出せなければなりません。

やりたいと思う、やるべきだと思う、実際にやる。全てのタイミングが一致しているのが理想ですが、なかなかそうならないのが現実です。遅延させたり、早めたりして、感情と行動が一致するようにする。それもタスク管理の目的です。