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「二兎を追って、二兎を得る」ための発想術

  1. 極性思考を脱する
  2. 選択肢をふやす
  3. あいまい耐性を高める



1.極性思考を脱する

発想術や思考法に関する書籍は、すでに何冊かありますが、本書がユニークな点は、「人生の望みをより大きく満たす」ために発想法を惜しみなく活用しよう、というテーマに絞っているところです。具体的にはたとえば、「社会人大学へ通って学び直したいが、そんなことをするだけの金銭的な余裕もなければ、時間もない」という状況に直面した際、「仕事とお金を犠牲にしても、学校へ行く」という選択肢をとるか、「学校をあきらめる」という選択肢をとるかではなく、「第3の道」を発見、あるいは発想することで、いずれの問題も解決してしまうことができる、と言っているわけです。

そのために最初に必要なことは、私たちの「思考のクセ」を排除して、「創造的選択」が選択できるようになる必要があります。「二者択一」に絞り込むというのは、そんな「思考のクセ」の代表例なのです。つまり、上の例で言えば、「社会人大学へ通って学び直したいが、そんなことをするだけの金銭的な余裕もなければ、時間もない」という状況に直面しているのではなく、そのように考えてしまう「思考のクセ」に絡みとられているに過ぎない、ということです。

したがって、この思考癖から抜け出すことができれば、「創造的選択」へ一歩近づくことができるわけです。

2.選択肢をふやす

「二者択一」に代表される、どうにもうまい選択ができなくなるような思考のクセを脱するために、著者は具体的な発想訓練法を提案しています。その方法は6つありますが、いずれもこのタイプの書籍に親しんだ人なら、どこかで見たことのあるものでしょう。

しかし繰り返しになりますが、本書の発想法を独特のものにしているのは、見たことのある発想法がたくさん載っている、ということではなくて、私たちが陥りがちな思考癖を指摘して、それを乗り越え、新しい「方途」を見つけ出すように、提案してくれているところなのです。

「二者択一」を脱し、「第3の道」を選択できるためには、少なくとも「二項目」以上の選択肢を考え出すことが必要です。本書で紹介されているのは、そのための6つの発想法ということになりますが、個人的に一番興味を引かれたのが、「WIN-WINダイアグラム」です。これはいわゆる「WIN-WIN」戦略を考え出すための補助となるメソッドとも言えますが、むしろ1つのネットワークの流れの中で、結果として「WIN-WIN」がもたらされるようになる、そういうネットワークを作り出す発想法です。

こうしたやり方で目指すのは、もちろん、「二者択一」を超えた、もっと全体に大きな満足をもたらす選択肢を、見つけることです。そのような選択肢が二つ、三つと見つかっていえば、それらがすなわち「創造的選択肢」ということになるのです。そのような選択肢は間違いなく、「AをあきらめてBをとる」選択よりも、数段満足をもたらすものでしょう。

3.あいまい耐性を高める

とはいえ、本書を読んだからといって、そんなうまいやり方がポンポン見つかるかどうかは疑わしい、と思われるかもしれません。もちろんそれはそうでしょう。

そもそもどうして、誰もがあまり好意的に評価しない「二者択一」に私たちが陥りがちかといえば、鮮やかな「創造的選択肢」がなかなか見つからないなからです。見つからないのでもどかしく、心理的な不快感に耐え難くなり、「即断即決」に至りたくなるのです。この、どちらとも決められない宙ぶらりんな状態から逃れたいという衝動にしたがって、「即決」してしまうことは、決して「創造的選択」とは言えないものです。

私は以前、「結果を強く求めるものの、結論を急ぎすぎない」ということの難しさについて、この「シゴタノ!」にエントリを載せたことがありました。ここで述べたことは、本書の「あいまいさに耐える」ということと、基本的に同じ意味です。

現に、たとえば好きな人ができたとき、イエスともノーともつかない、「生殺し」の状態に置かれると、ストレスがかかります。それから逃れたくて、「どっちかはっきりしてくれ!」と拙速に迫ってしまい、すげなく「ノー」といわれてしまうパターンも少なくないでしょう。(身に覚えもあり)。

こういう状況に直面したとき、「あいまい耐性」はとても有効です。「結果を強く求めるものの、結論を急ぎすぎない」という態度が、必要になるわけです。そういった意味で、「恋愛」もまた、「けものみち」と言えるのかもしれません

成功の「ミッシング・リンク」を求めて
https://cyblog.jp/596

創造的選択にいたる直前の段階には、このような「宙ぶらりんのあいまいゾーン」があるのです。私たちは、創造的選択に至りたいと思うなら、このゾーンに置かれる不快感に耐えられなければなりません。ここで1の「二者択一」に舞い戻ってしまって、サイコロを振ってどちらを選ぶか決めるのでは、「創造的選択」は遠いといわざるを得ないでしょう。

本書は以上三点に集約できるような本では、もちろんありません。直感と偶然のことや、選択肢を見つけるための6つのトレーニングの詳細など、得られる知識はたくさんあります。本書がもっとも役に立つのは何と言っても、冒頭であげたような「状況」に直面して悩み出したときです。本当は「状況」に直面しているのではなく、ただたんに「葛藤にはまってしまう思考パターン」に陥っているだけかもしれません。そのことを指摘してくれて、そのパターンから抜け出す方法を提示してくれて、その先にあるものに気づかせてくれるのが、本書なのです。