お手伝いをさせていただいた本のご紹介です。
『BUY SIDE ADVISOR』という本です。
著者の井上正明さんは、日興証券 → 日興証券ニューヨーク支店 → 日興証券シドニー支店 → 日興証券インドネシア支店 → その後外資系証券であるメリルリンチシンガポール支店 → 帰国後メリルリンチ日本証券 → 独立系FP事務所にてFP業務を経て独立。
現在は富裕層向けにバイサイドの資産運用アドバイスを行っていらっしゃいます。
「バイサイド」が本書のキーワードです。井上さんのキャリア遍歴も興味深いところがありますので、そのあたりも含めつつ、何回かに分けてご紹介いただきます(大橋)。
はじめに
今日では、ネット証券が一般的になったこともあり、自分自身で資産運用を勉強してみようと行動されている投資家の方がたくさんいます。
書店にも資産運用の本が数えきれないほど並んでいます。
しかし、どれがよいのかわからず、何冊か手にとってみたり、インターネットでいろんなページを探してみたりしても、どれももっともらしいことが書いてあり、結局のところ、何が正解なのかよくわからないという思いをされたのではないでしょうか。
かといって誰かに相談する気にもなれず、また何とはなしにインターネットで検索し、たどり着いたのが今回ご紹介する拙著『BUY SIDE ADVISOR』だと言う方もおられるのではないでしょうか。
ところで、こんな経験はありませんか?
- 大手金融機関が薦めるから大丈夫だろう。
- 商品の内容はよく理解できないが専門家がそう言っているから大丈夫だろう。
- 元気よく一生懸命に薦めてくるから大丈夫だろう。
そうして購入した商品で、結局損をしてばかり……。
どうしてそうなってしまうのでしょうか。
資産運用がうまくいかない理由
ここでひとつ、思い出してみて下さい。
あなたがその金融商品をなぜよいと思ったのか、買いたいと思ったのか?
大切なことは、森を見ずに木を語ってはいけないということです。
ここで言う“木”とは、株式や債券など、投資家が購入した商品のことです。
では“森”とは何でしょう。この場合の森は、証券会社のネームバリューや担当者の熱意ではありません。その商品を購入するに値するだけの、世界経済の状況と金融市場の大きな流れを把握することなのです。
すなわちマクロを読み解くということです。
- マクロ経済を見ずに日本だけに投資をする。
- 分散投資と言っているが、流行っている世界各国の商品を高値で買っている。
- 上手に分散するまではよいが、刻一刻と世界の経済は動いているのに分散した商品を見直すことをしない。
そのようなことをしていては、失敗してしまうのも無理からぬところです。
好景気で、何を買ってももうかった時代はとっくに終わりを告げています。いまの時代の資産運用はそう簡単なものではないのです。
しかし、この状況を改善するために、どうすればよいのかわからない。
結局これまで通りのやり方を繰り返し、また損失を出して後悔する。これまで以上に勉強しなければと思っても、何をどう学べばよいのかわからない。
それならいっそ、資産運用などしないほうがいい──と思い、株式などに手を出してみた経験はあるものの、すぐにやめてしまった方もおられるに違いありません。
そして、それはある意味、正解だと言えます。資産運用は重要なことですが、非常に難解なのです。
資産運用がうまくいっている人たちに共通する3つのポイント
ところが、私の周囲には還暦を迎えてもなお元気ハツラツで、毎日エネルギッシュな人生を送り、なおかつ資産運用を行なっている方がたくさんおられます。
そして、それには確固たる理由があるのです。
彼ら彼女らは、自分の趣味や得意分野を生かした人生を楽しみ、自分の専門分野外である資産運用に関する勉強はほとんど行なっていません。
いま資産運用がうまくいっていない投資家の方は、自分で勉強をしなければいけないと思われているでしょう。しかし、その時間はとても貴重なものです。
資産運用がうまくいっている方々の中には、運用の勉強に時間を費やさずに人生をエンジョイして、一定の運用成果をあげている方もいるのです。運用資産が日々上下しているにもかかわらず……。
このような投資家に共通しているポイントは次の3つです。
- 資産運用には専門のアドバイザーが必要なことを理解している
- 専門のアドバイザーを使うためにコストをかけている
- 信頼できるアドバイザーを探すのは非常に難しいということを知っている
例えばコーチというものを考えた場合、タイガー・ウッズやウサイン・ボルトにもコーチが存在しています。世界一の才能を持っている彼らでも指導者が必要なのです。
これは金融業界にも当てはまります。多くの投資家は普通の人です。そのような人たちにコーチが必要でないはずがないのです。
自分で資産運用のことを猛勉強する必要はありません。いままでアドバイザーに嫌な印象を持っておられる投資家の方は、よいアドバイザーに出会えていないだけなのです。
例えば、あなたがボルトのコーチになったなら、彼の世界記録をさらに伸ばすことができるかといえば、まず無理でしょう。
あなたが資産運用というフィールドで結果を出すことができていないとすれば、それはあなたがコーチングなしの我流で無謀な戦いを挑んでいたか、あるいはコーチはいたものの優秀なコーチではなかったか、十中八九そのどちらかに当てはまるでしょう。
資産運用のよいアドバイザーに出会うには?
では本題に戻ります。どのようにすれば、よいアドバイザーに出会うことができるのでしょうか?
それにはまず、資産運用のアドバイザーには「セルサイド(売り手側)」と「バイサイド(買い手側)」の2つの存在があることを理解しなければいけません。この両者については後ほど詳しくご説明いたします。
金融先進国のアメリカでは、バイサイドのアドバイザーは買い手の立場として活躍し、富裕層の間では常識になっています。
幸せな資産運用は、バイサイドアドバイザーによって、やるべきことをやり、やってはいけないことをやらずに済んだ結果として、もたらされる可能性が高いのです。
本書では、私が日系証券会社、外資系証券会社、そして独立後と、30年近くアドバイザーとして働いてきた経験から見えてきた「こんなことをしてはいけない」という、資産運用で失敗するポイントとその対処法をご紹介します。
それらのポイントをいくつも見ていくと、資産運用で幸せになれる人と、不幸になってしまう人とを分かつ境界線が、次第にはっきりと浮かびあがってきます。
次の表は、本書で紹介する、投資をする上でのチェックリストです。
多くの方がこれらの行動を積み重ね、資産運用を失敗してしまいます。本当はもっと幸せな資産運用をできるはずが、気がつけば不幸のスパイラルに陥っているのです。あなたにも当てはまっているところがあるかもしれません。
いかがでしたか? このリストの項目については、本書で詳しくご紹介いたします。
現在ご自身で資産運用を行なっており、ひとつでも右に該当するところがあった方は、ぜひ本書を最後までお読み下さい。
本来やるべきことをしっかりとやっていれば、このような厳しい時代においても、幸せな資産運用と、充実した人生を送ることは可能です。
いまからでも、始められます。
次回は、「私がバイサイドアドバイザーを始めた理由」についてご紹介したいと思います。
▼井上正明:
Avalon株式会社代表取締役兼CEO。
1959年兵庫県生まれ。香川大学卒業。
日興証券、日興証券ニューヨーク支店、日興証券シドニー支店、日興証券インドネシア支店、その後外資系証券であるメリルリンチシンガポール支店、帰国後メリルリンチ日本証券、独立系FP事務所にてFP業務を経て、現在は、独立し、富裕層向けにバイサイドの資産運用アドバイスを行う。