※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

よい資産運用アドバイザーの選び方/バイサイドアドバイザー・第4回

井上正明
連載第4回となります。


人間性よりもパフォーマンスで選ぶ

資産運用アドバイザーは、お客様の命ともいえる資産を託されています。明らかに人間性を疑ってしまうような人から、資産運用のアドバイスを受けたいと思う投資家はまずいないでしょう。アドバイザーにとって、お客様に信用していただけるだけの人間性は、重要な能力のひとつです。

ただ、ここで気をつけなければいけないのは、あくまでもアドバイザーが売りとするべきは、人間性ではなくパフォーマンスだということです。

当たり前の話だろうと思われるかもしれません。しかし、日本人はどうしても、良くも悪くもドライになりきれない民族です。「一にパフォーマンス、二に人間性」であるべきところを、順番がひっくり返ってしまいがちです。

昔の証券マンは、新聞記者の夜討ち朝駆けのごとくお客様の元に日参し、「これだけ来てくれたから」と取引をしていただいたものでした。

そして、情がつながったお客様には無理が利くので、パフォーマンスが期待できない商品もお買い上げいただき、そうこうしているうちに転勤が決まるといったことも珍しくありません。

当然ながら、情にほだされること自体は悪いことではなく、情をかけていただいたアドバイザーも、意気に感じそれに応えようとするものです。

ただ、最終的には、上司から「もっと売って」と言われるなどして、プレッシャーに負けてしまうことも珍しくありません。私自身も新入社員時代を思い返せば、その心当たりはいくつもあるというのが正直なところです。

信頼出来る第三者の存在が重要

少し話がそれてしまいますが、私は今後の日本社会にとって、信頼出来る第三者の存在が重要なものになるのではないかと考えています。

例えば、振り込め詐欺があると、そのニュースを見るたびに「被害者の方に気軽に相談できる第三者がいれば、このような被害は防げていたに違いない」と感じるのです。

根本的な問題としては、核家族化が進んでいる日本の構造もあげられるのでしょうが、こういったことは家族だからこそ相談しにくいものだと思います。

詐欺師の電話の内容が、孫が交通事故を起こしたというものであったなら、電話を受けた方にアドバイザーのような存在がいれば、被害の多くは防ぐことができたのではないでしょうか。

そんなとき、信頼できる第三者の財産コンシェルジェであるバイサイドアドバイザーがいれば、お金の話も日常的にしているわけですから、気軽に「こんな電話があったのだけど──」といった相談もしやすいでしょう。

特に、会社都合の転勤の心配もなく、お客様の利益のために一対一で向き合っていくバイサイドアドバイザーは、江戸時代の商店における番頭のような存在になれると思っています。

成果をあげているアドバイザーは、人間としてもお客様に信頼されていく

番頭とは、その家の人間以上に店のことを知り、家族のような存在でもあります。ですから、私自身はアドバイザーの人間性を非常に重要視しています。

しかし、それでも人間性は、パフォーマンス以上に重要な要素ではないのです。

私自身がその時代の恩恵を受けた世代でもあるのです。もしかしたらかつての日本であれば、人間性を重視するくらいでよかったのかもしれません。

放っておいても平均株価があがり続け、上司の意向を優先してもそれほど大きな失敗もなく、また投資家自身も「お知り合いの旦那様が証券会社に勤めているから──」といったお付き合い感覚で金融商品を買っている方が珍しくありませんでした。

対して、今日資産運用をしている方や、してみたいと考えておられる方は、切実に日本や世界の未来に不安を感じておられる方がほとんどです。

どれだけ情でつながった間柄であっても、そのような方々に損失を与えてしまう「いい人だけど運用下手」のアドバイザーでは問題です。

また、成果をあげているアドバイザーは、おのずと人間としてもお客様に信頼されていくものです。そういった意味においても、アドバイザーの能力はパフォーマンスで判断するべきだといえるでしょう。

よいパフォーマンスとは何か

よいパフォーマンスが期待できるアドバイザーとは、どのようなアドバイザーなのか。これに関しては、まずよいパフォーマンスとは何か、ということを定義する必要があります。

私の考えるよいパフォーマンスとは、「資産を目減りさせることなく、年間3%程度の利回りを目指す」というものです。

もちろん数字は多ければ多いほどよいのですが、仮に3%としたこの数字を地味なものだと思われる方は、“投資”ではなく“投機”を指向されているのではないでしょうか。

本稿で対象としているのはあくまでも投資であって、ギャンブル的な投機ではありません。

手持ちの資金を2倍・3倍と増やしたいのであれば、デイトレードのようなごく短期の値動きを見据えて、信用取引の枠いっぱいにお金をつぎ込むといったやり方でなければ難しいでしょう。

しかし、富裕層の投資家の方々がアドバイザーに願うことは、「財産を保ってくれればよい」というものです。

もちろん、増やしたくないと考えているわけではないのですが、減らさないことを何よりも重要視されているのです。

先行き不透明な時代にモノを言うのは「経験」

資産運用をされており、リーマン・ショックや東日本大震災、ヨーロッパ各国の経済危機といった後世の歴史にも残るだろう経済危機や天災のたびに、資産を減らしてしまった読者の方も少なからずおられるでしょう。

そんな方の多くは、その損失を「こんな大変なことがあったのではしょうがない。もう同じようなことは起こらないだろう」と、受け止めることができていないように思います。むしろ、きっと近いうちに、またこんなことが起こるのではないかという危機感を抱いておられるのではないでしょうか。

リスクを最大限に回避しつつ、着実に利回りを出すというパフォーマンスは、簡単なように見えて、非常に高度な資産運用の結果としてもたらされるものです。

この世界中に嵐が吹き荒れている社会情勢の中で、安定した航行を続けるために何より重要なのは裏付けされた経験です。

もちろん、いたずらに歳を重ねているだけのアドバイザーもいるでしょうから、単に年齢が高ければよい、といった話ではありませんが、医師や税理士や弁護士などにせよ、新人とベテランであればベテランのほうが安心できるのと同じことです。アドバイザーとしてどれだけ濃い経験をしてきているかに注目するべきです。

特に「失敗経験」に注目する

初めて会うアドバイザーには、世間話の体で、それまでの経験を尋ねてみるとよいでしょう。そこであなたの興味を引くエピソードのひとつも出てこないようであれば、その人物はまだ経験不足である可能性が否定できません。

また、尋ねたところで、それをどれだけアドバイザーが教えてくれるかはわかりませんが、実は最も重要なのは失敗経験であるように思います。

「失敗は成功の母」とは、あまりに使い古された言葉ですが、お客様の大切な資産を預かっておきながらそれを減らしてしまうという、大きすぎる過失だからこそ、アドバイザーはそこから多くを学びます。

どれだけ運用が上手なアドバイザーでも、失敗経験が少ない場合、大きな失敗をしてしまった際に対処法がわからず、いたずらに傷口を広げてしまいがちです。

晴天時には、若い才能が興味深いチャレンジを見せることも珍しくありませんが、悪天候時に船を沈ませない知恵に関しては、何度も修羅場を経験してきた者に一日の長があるものです。

「わからないから買わない」

例えばウォーレン・バフェットは、ITバブルの際に、なぜヤフー株などを買わないのかと叩かれたことがありました。

ひところのヤフー株は、いつまでもあがり続けるかのような勢いでしたが、バフェットは「わからないから買わない」とそのような意見に一切耳を傾けませんでした。

ITが物珍しいものではなく、人々の生活に必要不可欠なものとなるに従って、その後のヤフー株は常識的な範囲での値動きを見せるようになりました。

しかし当時IT関連株の多くは、バブルの時限爆弾が仕掛けられた、長期保有に耐えうるものではなかったのです。

たとえバフェットでも、そのことは分からなかったと思いますが、内容が分からないものは手にしなかったため、爆発にまきこまれることはありませんでした。これこそが賢人の知恵なのです。

投機による一攫千金のチャンスは、そこここに点在しています。1998年から2002年のヤフー株も、短期であれば大もうけできたかもしれません。自分の得意なジャンルに網を張って、千載一遇の好機が訪れるのをじっくり待てば、どこかで大きなチャンスをつかめることもあるでしょう。

しかし、中長期を中心とした投資で、先の見えない世界情勢の中で堅実に資産運用を行ないたいのであれば、リスクヘッジの術に長けた、経験豊富なアドバイザーを見つけるのが成功への近道なのです。


▼井上正明:
Avalon株式会社代表取締役兼CEO。
1959年兵庫県生まれ。香川大学卒業。

日興証券、日興証券ニューヨーク支店、日興証券シドニー支店、日興証券インドネシア支店、その後外資系証券であるメリルリンチシンガポール支店、帰国後メリルリンチ日本証券、独立系FP事務所にてFP業務を経て、現在は、独立し、富裕層向けにバイサイドの資産運用アドバイスを行う。