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直感を活かす3つのアプローチ

直感を活かす3つのアプローチ
photo credit: h.koppdelaney via photopin cc

倉下忠憲アイデアを生み出す行為において、「頭を使う」部分には二つの工程があります。

一つは連想を広げる工程。もう一つは広げたものを絞り込む工程です。

前者には直感的思考が、後者には分析的思考が用いられます。というか、用いないとうまくいきません。これを逆にしたり、あるいは同時に起動させてしまうと、発想は前進しないのです。
※アクセルとブレーキをイメージしてみてください。

この二つの思考は、「右・左脳」、「システム1・2」、「R・Lモード」、などさまざまな名前が付いています。そして、名前はこの際気にしないでおきましょう。重要なのは、それぞれが違う──時に正反対の──特性を持っているということです。

そして、少々扱いがやっかいなのが「直感的思考」の方です。


受け身の直感的思考

分析的思考は、ある程度意識的に立ち上げることができます。「~について考えよう」と思えれば、それはもう分析的思考に足を踏み入れていることになります。

逆に、「直感的に考えよう」というのはやや矛盾をはらんだ表現です。私たちが意識的にそれを起動させることはできません。直感というのは意識の領分ではないからです。意識からすると、直感というのは受動的なものであって自身の機能ではありません。

すると私たち(の意識)が出来ることは、

  • 直感が働きやすい環境を整えること
  • 直感が妨げられないようにすること
  • 直感による連想力を大きくすること

といったことになります。

直感が働きやすい環境を整えること

直感は、ある種のインプットに対する反応です。であれば、「何を目にするか」を変えることで直感を働きやすくしたり、あるいはその機能を低下させたりすることができるでしょう。

環境については、散歩をする、作業場所を変える、雑誌をめくる、などいろいろ考えられます。あるいは、「手を使う」「音を耳に入れる」など、多感覚にアプローチする方法を取ってみるのもよいでしょう。

ツールとしては、「智慧カード」など強制的に連想を促すものをつかったり、あるいは未成熟でもとりあえずプロトタイプを作ってみることも有効です。

直感が妨げられないようにすること

ようは分析思考に少しの間黙ってもらう、ということです。意識的に呼吸を止めることが難しいように、意識的に分析的思考のスイッチをオフにするのも難しいものがあります。しかし、手段がないわけではありません。

アルコールを摂取するというのが一番身近な例です。「なんであんなことを・・・」という経験は、分析的思考が沈黙していたことを示しています。もちろん、お酒の力を必ずしも借りる必要はありません。

たとえば「言葉」を使わないで考えてみるという手法があります。イメージや音といったものを使うということです。思いつくままに文章を書き連ねるフリーライティングや、マインドマップも分析的思考の口数を減らしてくれるでしょう。変化球としてロールプレイにチャレンジする方法もあります。

なんにせよ、分析的思考が顔を出しにくい状況を作ってみることです。

直感による連想力を大きくすること

直感の起動が任意でできなくても、それによってもたらされるものを大きくすることはできます。

Aから、BとCだけを連想するのと、B、C、D、E、F、Gが連想できるのでは、良いアイデアに遭遇する確率は変わってくるでしょう。

これはとても簡単です。情報のインプットを増やせばよいだけです。ただ、情報の多様性には気をつけておいた方がよいかもしれません。似たような種類の情報をたくさんインプットしても、連想は広がりません。幅なり深さなりを大きくするようなインプットが望ましいでしょう。

さいごに

最後に一つだけ書いておくと、直感は意識ではコントロールできないので、「メモ」が最重要になります。

いつ、なにが直感によってもたらされるのかは予測不可能です。なので、いつでもどこでもメモできるものを持ち歩く必要があります。これは発想における基本中の基本と言ってよいでしょう。

記憶力に自信が無い人、直感による連想力が貧困だという実感がある人ほど、メモは常備しておいた方が賢明です。

▼参考文献:

本書では二つの思考は「Rモード」(リッチモード)、「Lモード」(リニアモード)と呼ばれています。確かに分析的思考はリニアな感じですね。その他脳の使い方について、頭の働かせ方について面白い話がたくさん紹介されています。


▼今週の一冊:

一瞬タイトルを空目しました。表紙デザインの類似性から「55歳からのハローワーク」と読んでしまいそうになります。が、実際は「ハローライフ」。

共通のテーマを持った中編の小説が、和音を響かせながら一冊の本にまとまっています。どうやって生きるのか、あるいは生きることとどのように向き合うのか。いつの時代でも切実なテーマなのかもしれませんが、しばらく放置されていた問題とも言えるかもしれません。この日本においては。


▼編集後記:
倉下忠憲




ようやく原稿の終わりに目処が付いてきたところですが、なにやら別のところでいろいろトラブルが。やはりというかなんというか、強いストレスは集中力や精神力に悪影響をもたらしますね。まあ、なんとかやっていくしかないわけですが。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。