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書いたことから、書くことを見つける

KJ
photo credit: Jeff Van Campen via photopin cc

倉下忠憲ブログにはテーマがあります。

この「R25の知的生産」は、その名の通り“若い世代向けの知的生産術の紹介”というのがテーマです。こうしてテーマが決まっていると書くことを決めるのはそれほど難しくはありません。

しかし、私が運営しているBlogには一言で表現できるようなテーマがありません。その時々の関心事に応じて記事を書いているので、カテゴリーが日々増えていっています。ようは「テーマがないのがテーマ」な状況です。

そんな状況で、「今後の展開はどうしようか?」と考えてもなかなかラチがあきません。

そういう時にはKJ法です。


まずは要素を拾う

まず、どのような記事を書いてきたのかを拾い上げてみます。私の場合Wordpressというサービスを使っているので、PHPでちょこっとコードを書くと、エントリーリストは簡単に作成できます。

試しに、最近の100エントリーをリストアップしてみました。

» 直近のエントリー100(R-style)

100という数が適切かどうかはわかりませんが、とりあえず今回はこれでいきましょう。要素の列挙はこれで完了です。

このエントリー名を一つ一つ付箋に書き写していってもよいのですが、さすがに100個は骨が折れます。

というわけで、iPadの出番です。

付箋で並べる

使うのはiPadアプリの「iCardSort」。画面上で小さい付箋を操作できるアプリです。

iCardSort

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まず、ちょっと下ごしらえをしておきましょう。適当なテキストファイルに先ほどのエントリーリストをコピペして、DropBoxに保存。そのファイルをiPadで開きます。後はリスト全てをコピー。これで準備完了。
※その他どんな方法でも、iPadのクリップボードにリストがコピーできればOKです。

まず、iCardSortで新規のドッグを作成します。しかる後に、画面を二本指でダブルタップ。

IMG_0563

この入力画面で複数の付箋を一括で作成できます。

一行が一つの付箋になるので、リスト形式が最適ですね。先ほどのコピーしたものをこのウィンドウに貼り付けます(※)。後は、完了をぽちっと。
※操作ミスがなければ、自動的にクリップボードの中身が貼り付けられています。

ダダッと流れるアニメーションと共に付箋の作成が終わりました。小さいですが100枚の付箋がここにあります。

IMG_0564

適当に散らばせてみましょう。

IMG_0565

ちょっと100枚は多すぎたかな・・・というぐらいのボリュームですね。これを自分の感覚に沿って仕分けしていきます。あくまで「感覚」であって、既存のBlogのカテゴリーは一切気にしません。

ちなみに、付箋を使ってこうした仕分けをする特徴は、自分が感じる感覚的な距離感を、物理的な距離感で表現できることです。つまり、AとBはすごく似ていると感じるなら、AとBをくっつける。AとCはB程には似ていないけれどもDよりは似ているというのならば、Bよりも遠い位置、Dよりも近い位置にCを配置する、といったことが可能なわけです。

縦一直線にしか並べられないアウトラインプロセッサではこうしたことができません。
※基本的な役割が違うので、これはまあ当然なのですが。

試行錯誤を繰り返して、なんとかいくつかの仕分けの山ができました。

IMG_0566

見出し付けを行うことで見えてくるもの

さらに、これに一手間加えましょう。「見出し付け」です。これを行うと全体像がぐぐっと掴みやすくなります。

iCardSortは付箋の色は変えられても、付箋のサイズは変えられないので、別のアプリを用います。先ほどの付箋の配置完了の画面をスクリーンショットで保存して、「UPAD」でその写真を読み込みます
※もちろん、写真に書き込みができるアプリであればなんでもOKです。

UPAD

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付箋の山を見ながら、そこに見出しを付けていきます。

この作業がなかなか面白いのです。個別の要素しかみていないときと、全体の中にその要素が配置されたときでは、自分の感じ方が違ってくるのがわかります。また、実に不思議ですが、自分で書いた記事ながら「そうか、このエントリーはそういう意味があったんだ」ということを発見したりもします。

IMG_0567

二つのはぐれもの

今回の「見出し付け」では、二つの付箋グループの存在が気になりました。

一つは、他のどの付箋ともグルーピングされない孤独な付箋です。簡易的に見出しを付けると「その他」になってしまうやつです。異色、あるいは異分子と言ってもよいでしょう。これをどう扱うのかはいろいろ__無視するのか、別のブログを立てるのか、今後書き足していくのか__考えられます。

もう一つは、複数の見出しにまたがってしまう付箋グループ。

中途半端な記事とも言えますが、いままでの方向性が集約して新しいカテゴリーが生まれつつある、と言えるかもしれません。点と点をつないで線にする、というやつです。少なくとも、そういうカテゴリーは(たぶん)私にしか書けないでしょう。力を注いでみる価値はありそうです。

なんとなくですが、「今後の展開はどうしようか?」についていくばくかのヒントが得られました。

さいごに

こうしてボトムアップ的に進めていく方法も簡易的なKJ法と言えるでしょう。先週はアナログ付箋で実施しましたが、今回はiPadのアプリで行ってみました。

個人的には「見出し付け」まで考慮されたiPadアプリがあれば、最高の「考具」になると思うのですが、今のところなかなか見かけません。しかしそれはそれとして、テキストを眺めているだけではなく、こうして付箋の形でいろいろ遊んでみると思わぬ発見があったりします。

もちろんボトムアップ方式で何かを考える場合、まずそのボトムになる要素が必要なことは言うまでもありません。線を生むためには、まず点を打つ必要がある、ということですね。

▼関連エントリー:

『知的生産の技術』をKJってみた 

▼今週の一冊:

「人が何かに快感を感じ、それが中毒になるのはなぜか、あるいはどのような仕組みなのか」
これが解説された一冊です。

依存症を生み出すような薬の話から始まって、食べることやギャンブルなど身近な話題にうつり、「悪徳以外の快楽」にまで話は広がっていきます。

興味深いのは、人は情報からもたらされる物だけでなく、情報そのものからでも快感を得られるという指摘です。そういう視点で見ると、現代は「情報中毒症」を引き起こしやすい環境なのかもしれません。

» 快感回路—なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか


▼編集後記:
倉下忠憲




じわじわと原稿を進めています。というか、最大限の駆け足で進めなければいけない状況なんですが・・・。しかし、本を書くというのはほんとうに難しいですね。いまさらながらに実感を重ねております。


▼倉下忠憲:

新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。