いつか自分で書くつもりだったのですが、Scrivenerの入門書が発売されました。
» 考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ[Kindle版]
目次は以下の通り。
- 【ユーザインタビュー】小説家・藤井太洋氏に聞く、Scrivenerの使い方
- Chapter 1 クイックツアー
- Chapter 2 インストール
- Chapter 3 プロジェクトを始める
- 【ユーザインタビュー】大学生・小野みきさんに聞く、Scrivenerの使い方
- Chapter 4 構想を練る
- Chapter 5 本文を書く-1
- Chapter 6 本文を書く-2
- Chapter 7 出力する
- Chapter 8 応用
- 【メイキング】本書執筆にあたっての、Scrivenerの使い方
本当に丁寧に、Scrivenerの使い方が解説されています。
Scrivenerとは?
Scrivener(スクリヴナ)は、WindowsおよびMacで使える高性能エディタツールです。リッチテキストを扱えるのでWordやPagesと似たところがありますが、実際はそれ以上の存在です。プログラミングにおける「IDE」(統合開発環境)のような位置づけの執筆ツールだと捉えておけば良いでしょう。
執筆プロジェクトのスタート(アイデア出し)から本文執筆、資料や進捗状況の管理、それに複数のスタイルを選択できるコンパイル(出力)まで、さまざまなことがこのツール一つでこなせます。
さすがに2000字程度の文章を一回書いて終わり、という作業ではほとんど出番はありませんが、大規模な執筆プロジェクトでは大いに活躍してくれます。
ただし、あまりにも多くの機能を持つため、初心者には導入の敷居が高いという問題を持っています。しかもメニュー周りが英語なので、日本人ユーザーはそれだけで気が引けてしまうこともあります。でも、それはちょっともったいなと感じるぐらい優秀なツールなのがScrivenerです。
本書は入門書らしく、初心者が躓きそうなところを徹底的にフォローしています。また全体の2割ぐらいで少し高度な内容も扱っています。初心者〜中級者向けの本と言ってよいでしょう。とりあえず基本的な操作に関しては、本書を読めばクリアできるはずです。英語の問題も「日本語化」の手順が紹介されているので安心です。
ちなみに私は
Scrivenerについては本書を読んでいただければ十分だと思うので、少し私の使い方の紹介をしておきましょう。
私は、紙の書籍や電子書籍を執筆する場合、必ずScrivenerを使います。原則は1プロジェクトにつき1ファイルですが、「続き物」の企画のときは同一ファイルに原稿をまとめるときもあります。
ただし執筆に関してはScrivenerに直接書くのではなく、他のエディタで文章を書き上げて、それをScrivenerに持ってきます。これは単に、「その方が書きやすいから」という理由でしかありません。
実際にScrivenerで行うのは、本としての「構成」作業です。どんな章を作るのか、そこにどの原稿を配置するのか、といったことを思考・試行するわけです。
さらに本に含まれる見出しの粒度を整えるといった作業でもScrivenerは活躍します。一つの章ごとに一つのテキストファイルを作っているだけだと、こうした全体を見通した作業がやりにくいのです。
各原稿のデータにはそれぞれアイコンがついており、それを任意で変更できるので、一回見直した終わったものは「ブルーフラッグ」のアイコンにし、二回終わったら「グリーンフラッグ」、三回終わったら「レッドフラッグ」という風に視覚的に進捗を管理することもやっています。
子どもの遊びのように感じるかもしれませんが、こうした要素は長期的かつ大規模なプロジェクトを進める上で地味に効いてきます。
他にも目標の文字数を管理することもできますし、個別の原稿および全体の原稿の文字数を把握することも容易です。そうした情報も、執筆プロジェクトを進める上で役立ってくれます。
さいごに
私の仕事においては、Evernoteこそが「なくてはならないツール」ですが、Scrivenerもそれに迫る勢いを持っています。
一応Scrivenerでできることは他のツールでも「やってやれなくはない」のですが、それを実現するためには大きな手間が必要です。物書きのツボを押さえたScrivenerは、非常に快適に執筆に寄り添ってくれます。
本書はその導入の一助となってくれるでしょう。
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こうやって丁寧に書かれた入門書を読むと、「自分が書いたらまずこんなに丁寧にはならなかっただろうな」と思わずにはいられません。私はいちいち「論」を語りたくなるので、どうしても操作説明などはおおざっぱになりがちなのです。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
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