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テーマを一つ決める前の準備

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倉下忠憲ブログをゼロからスタートさせるときに、真っ先に問題にあがるのが「テーマ」ですね。どんなテーマをどのように設定するのかは、簡単には解決できない問題です。

外山滋比古氏の『思考の整理学』に次のような文章が出てきます。

論文を書こうとしている学生に言うことにしている。
「テーマはひとつでは多すぎる。すくなくとも、二つ、できれば、三つもって、スタートしてほしい」。

「テーマはひとつでは多すぎる」

はてさて、どういう意味でしょうか。


ワンテーマ問題

外山氏は次のように説明しています。

ひとつだけだと、見つめたナベのようになる。これがうまく行かないと、あとがない。こだわりができる。妙に力む。頭の働きものびのびしない。

ところが、もし、これがいけなくとも、代わりがあるさ、と思っていると、気が楽だ。テーマ同士を競争させる。いちばん伸びそうなものにする。さて、どれがいいか、そんな風に考えると、テーマの方から近づいてくる。

「ひとつだけでは、多すぎる」のである。

なるほど。確かにこういう側面はあるかもしれません。

たとえば、企画書。

Aという企画のアイデアを企画書に落とし込むタスクがあるとします。その際、「よし、今週一週間はじっくり時間をかけて、この企画書作成だけに取り組むぞ」とやってしまうと、うまくいかないことがあります。

たいていの企画案は、まっすぐに「企画」の形にはなりません。本の企画であれば、章立てをどのようにするとか、キャッチャーな要素をどのように入れるのかという要素が必要になってきます。「The course of true idea did run smooth」とつぶやきたくなるくらい、必ずどこかで、うむむ、と唸るタイミングが訪れます。

そういう場合に、企画書Aしかタスクが無ければ手詰まりです。

頭をひねっている間は作業はまったく前には進みません。こういうのは、ある程度「寝かす」必要があるので、精一杯頭を働かせたからといって、すぐに答えが出てくるものではありません。「うなり続けている」のは時間の無駄、とは言い過ぎかもしれませんが、実りの少ないことに時間を使っていることは間違いないでしょう。

また、同じことばかりずっと考えていると、どんどん視野が狭くなってしまう問題があります。本来重要でないものを必要以上に重要視したり、あるいはその逆に重要なものを見落としてしまったり、という状況です。

行き詰まった時は、窓を開けて部屋の空気を入れ換えるように、新しい情報に触れて思考の切り替えを行うのがよいでしょう。別の企画案について考える、というのがこの「思考の切り替え」に役立ちます。

なので新企画について考える場合は、複数の企画案を持っておくのが有効です。

ブログに置き換えると?

では、ブログのテーマはどうでしょうか。

これも同じようなことが言えると思います。一つのテーマに固執すると、後々やっかいな状態に陥るかもしれません。「これしか書かない」と決め打ちするのは一見楽なようですが、それについて書けなくなれば更新がストップしてしまいます。ブログを始める前に、「このテーマなら毎日書ける」と思っていたことでも、実際に始めてみると・・・というのはよくある風景です。

しかし、まったく何もテーマを設定しないのは、「何を書いていいのやら」と途方に暮れる可能性もあります。「自由なご感想をお書きください」というアンケートに答えるのが難しいのと同じです。

これらを合わせると、「スタートは二、三のテーマを持って始める」という手法はなかなか有効そうに思えます。

もし書き続けている間に、テーマの一つに対して「自分はこれしかない」と確信できるのならば、路線を切り替えてそれ一本に絞る方法はあるでしょう。書籍と違って、柔軟性があるのもブログのメリットです。

とりあえず、最初からあまり「固く」考えてしまわないのがポイントと言えるでしょう。

さいごに

今回はブログのテーマ設定について少しだけ考えてみました。

斬新な切り口のテーマで、人気のブログを作る!みたいな意気込みは大切なのかもしれませんが、続けられなければ意味はありません。

でもって、自分はどういうテーマなら続けられるかは、始めてみないと分からないものです。

外山氏がおっしゃるように最初のうちは「テーマ同士を競争させる」感覚で、複数のテーマをブログに持ってみてはいかがでしょうか。もしかしたら、そのテーマの「組み合わせ方」自体が斬新さを生むかもしれませんし。

▼参考文献:

頭の使い方、情報の扱い方について多くの示唆を与えてくれる一冊です。


▼今週の一冊:

ソーシャルウェブはどのような構造を持ち、どんな特徴があるのか。人はそのなかでどのように行動を決定するのか。といったことが取り扱われている本です。現代の情報伝達の形を理解する入門書的な一冊と言えるでしょう。

他人に影響を与えるためにどうすればよいかを理解したければ、個々の人間の行動ではなく、人々の間の関係性を理解する必要がある。

という指摘は大変重要です。これはネット上のソーシャルだけに当てはまるものではありません。

マーケター向けの本と言えますが、ソーシャルメディアに興味を持っている人なら面白く読めると思います。


▼編集後記:
倉下忠憲



今回ブログのテーマについて書いたのは、自分が新しいブログを立ち上げようとしているからです。

あんまりあれやこれやと考え出すと、なかなか踏ん切りがつかないんですよね。100%自分で決められるが故に、なかなか決断ができない。ありがちな問題です。とりあえず3つぐらいに絞ってみることにします。


▼倉下忠憲:

新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。