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文章のよくある5つの形式


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倉下忠憲前回は、「書く要素」と「書き方」を分けて考えるテクニックを紹介しました。

まずは書き出す内容についてだけ考える。そうすることで、脳への負荷を抑制できます。一度にいろいろなことを考えようとしても、どこかに限界はやってきてしまうので、作業の分別は大切でしょう。

さらに前回では、「書く要素」の書き出し方も紹介しました。箇条書き、材料メモ、ラフスケッチなどの手段です。

では、「書き方」についてはどうでしょうか。

「書き方」には、無限のバリエーションがありえますが、あえて話を限定すれば、〈形式〉と〈順番〉の二つに分けられるでしょう。今回はこの〈形式〉について考えてみます。

論説文型

いかに文章を書くのかに関しては、計量できないほどのバリエーションがある。ここでは話を限定して、〈形式〉と〈順序〉に限定して議論を進めていこう。まずは、〈形式〉について考察していく。

固く、分析的に話を進めていく形です。論証をかため、堅実に理論を展開していく。論文や学術書などに見られる形ですが、一部のビジネス書(特に経営書)などにも用いられています。

教師-授業型

どうやって文章を書くのかは、実はいろいろなバリエーションがあります。そのすべてを網羅するのは難しいので、この講座では、〈形式〉と〈順番〉に絞って話を進めていきましょう。

まずは〈形式〉についての解説からです。

やや固く、網羅的に話を進めていく形です。全体を知る〈教師〉が、初心者に内容を伝授する雰囲気が近しいでしょう。広くビジネス書で使われている形式です。

体験告白型

これまで文章をたくさん書いてきて、気がついたことがあります。それは、「どうやって文章を書くのか」という話題には、〈形式〉についての話と〈順番〉についての話があるということです。もしかしたら他にももっとあるのかもしれませんが、僕が気がついたのはこの二つだけなので、この二つについてちょこっと書いてみます。

やや柔らかめで、口語的に話を進めていく形です。何かを教えるというのではなく、自分の体験を伝える雰囲気が近しいでしょう。『ゼロからトースターを作ってみた結果 』という本が、このような形で語られています。

対話型

徹人 君は知っているかね。
青年 なんです、唐突に。
徹人 「文章の書き方」は、いくつかの話題で構成されているのだよ。
青年 興味深いお話ですね。いったい何が含まれているんですか。
徹人 少しは自分で考えてみたまえ、と言いたいところだが、ヒントを出そう。一つはどのように書くか、つまり〈形式〉だ。語り口と言い換えてもいいね。
青年 ということは、そこには〈強弱〉も含まれるんじゃないですか。自信なさげに語ったり、あるいは強気に語ったりとか。
徹人 なるほど。その視点はなかったね。私が想定したのは、どんな順で話を並べていくのか。つまり〈順番〉だ。

かなり柔らかめで、口語で話を進めていく形です。形式上、雑多な話題が扱える点と視点を二つ以上示せる点が特徴ですが、その分文章量は増えます。『嫌われる勇気』などが代表例でしょうか。

物語型

「次は、文章の書き方ね」とアルテさんは言った。
「いよいよ本番ですね」と僕は答えた。ノートの新しいページを開き、シャーペンの芯を新しく出しておく。
「やる気があるのはいいことね」
「それだけが取り柄ですから」
 僕は苦笑して答えると、アルテさんもほのかに笑った。
「じゃあ、まずは復習ね。文章を効率的に書き進めるために必要なことは?」
 アルテさんの右手がビシッと伸び、僕の鼻の頭を突き刺さんばかりに人差し指が突きつけられる。
 僕はしばらく考えてから答えた。
「工程を分けること」
「正解ね。素材出しと、書き方については分けて考えること。だったら、書き方についても分けて考えましょう。〈形式〉と〈順序〉を分けて考えるの」
「〈形式〉と〈順序〉」
 僕はノートにその言葉を書き留めた。

さらに柔らかめで、地の文が入ってきます。ようするに小説ということです。さらに状況がイメージされやすくなりますが、もちろんその分文章は増えます。『数学ガール』シリーズや、『Dr.Hack』などがここに当てはまるでしょう。

さいごに

もちろん、ここに挙げたのは大雑把な分類でしかありませんし、これ以外にも形式は存在しているでしょう。さらに、一つの本の中に複数の形式を盛り込むこともできます。この5つの形式のどれかを使うことだけが正解ではありません。

それでも、まずこのような形式を念頭においておけば、書き方について無限に悩むことは避けられるでしょう。

ちなみに選び方のポイントは読者の想定です。どんな人がどんな風に読むのか。言い換えれば、どんな人にどんな風に読んでもらいたいのか。それをイメージすることで、適切な形式が選択できるようになるはずです。

▼今週の一冊:

本文中でも名前が出てきた『数学ガール』の最新巻が予約開始になっています。発売が4月と少し先ですが、今から楽しみですね。


▼編集後記:
倉下忠憲



体調不良も7~8割まで復調してきました。おかげで仕事も少しずつですが進んでおります。不思議なことに、こういうタイミングで新しい企画の話を頂くものです。めぐり合わせというか、人生は機を窺っている、と言えるかもしれませんね。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。