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柔軟にアイデアを広げる 〜Idea Arts その4〜

By: Ewen RobertsCC BY 2.0


倉下忠憲

の続きです。

第四の習慣:柔軟にアイデアを広げる

第三の習慣は、アイデアの準備段階でした。準備が終われば、次は実行です。

アイデアは一度出せば終わりというものではなく、それを展開し・発展させてこそ完成度の高いアウトプットになりえます。

実行段階では、小さかったアイデアの種を実行段階では大きく育てていかなければいけません。

その際、気をつけたいのは、「柔軟にアイデアを広げる」ことです。

具体的には、

  • ダイバーシティーに浸る
  • 失敗を踏み台にする
  • アイデアに息をさせる

の3つがポイントとなるでしょう。

ダイバーシティーに浸る

アイデアを広げていく上で、大切なのは多様性です。

「これは良い」と思いついたアイデアを肯定していく方向で発展させることは難しくありません。どんどんプラスを積み重ねていけば良いだけです。でも、それだけだと広がりがありません。

ときにアイデアを否定する方向、あるいはまったく関係ない方向へも考えを展開し、考えを鍛え上げていきたいところです。

  • 言葉の定義を再確認する
  • 古典にあたる
  • 過去のアイデアノートを読み返す
  • 最上の理想の着地点をイメージする
  • 自分で自分の考えに反論する

以上のようなアクションが役に立つでしょう。

失敗を踏み台にする

第三の習慣には「改良できるプロトタイプを作る」がありました。

プロトタイプを作ったら、それを実際に使ってみることです。そして、そこで得られた知見をアイデアの改良に役立てることです。

私は物書きですので執筆に関して言うと、とりあえず「どこか一章」を書いてみることがこれにあたります。実際に書いてみて、それを読んでみる。すると、想定していなかった問題が必ずと言っていいほど出てきます。うまくいかないことが発見されるのです。

そうして書いた原稿はそのままの状態では使えません。言い換えれば、「失敗作」です。しかし、それを作ってみないことにはわかりえないことがたくさんあるのです。

脳内の創作工房だけでなく、プロトタイプによるフィードバックをアイデアの発展に活かしましょう。

そのためには、「完成形をあらかじめ固定しない」「アイデアをオープンにしておく」が必要です。

頭の中で「これはこうだ」と思っていても、プロトタイプがそれを否定しているなら、現実の状況をベースに考え直した方が賢明でしょう。また、他の人から得られたフィードバック(否定であれ、肯定であれ、無関係であれ)にも耳を傾けることです。

アイデアに息をさせる

上記のようなアクションでアイデアを発展させ、一応の「よし」と思える形ができあがるかもしれません。あるいは逆に、「うむむ」と壁にぶつかることもあるでしょう。

そういうときは、時間をおくことです。

別の作業に着手したり、雑誌や映画を観たり、あるいは徹底的に散歩したりといった具合に、「直接的に考える」工程を一時的に止め、脳を切り替えるのです。

脳のブラックボックス度合いはまだまだ高いので、その間に何が起こっているのかははっきりと断言できませんが、そうして時間をおくと、「よし」と思えたアイデアに難点が見つかったり、「うむむ」とぶつかった壁に突破口が見つかることがあります。

おそらく、無意識下でそのアイデアについての検討が進められているのでしょう。その力はぜひとも活用したいところです。

さいごに

第四の習慣は「柔軟にアイデアを広げる」でした。

単にアイデアを広げるだけでなく、「柔軟に」広げることが肝要です。そのために使えるものは何でも利用しましょう。過去の事例、他の人の感想、失敗、時間(あるいは無意識)……、と使える道具はいろいろあります。

▼今週の一冊:

紙の本と電子書籍。

両方を「本」として好むと共に、それぞれのメディア的特性を活かした「本」も求める。

現代の本作りは、確実に多様性を増しています。混乱も多いでしょうが、あたらしい作品が陽の目を浴びるようになってきているのも間違いありません。

まだ明確な答えや形が見定まっていない現代からこそ、「本」についていろいろ考えたいところです。

» ぼくらの時代の本


▼編集後記:
倉下忠憲



2月の電子書籍も無事終わり、確定申告も目処が付いて、ようやく一息というところですが、3月号の準備を進めなければいけません。いろいろ忙しくはありますが、その忙しさに若干慣れかけている自分を発見しつつあります。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。