ある程度まとまった分量の文章を書いている最中に、いろいろな「思い」や「考え」が吹き出してきて、なんとも収集がつかなくなり、入力が止まってしまうことがあります。
書きたいことはたしかに自分の中にあるのに、単語やイメージだけが次々と浮かんでは消え、あげくは言葉が絡まり合ってほどけなくなるのです。チェーンの細かいネックレスを、無造作にしまっていたときに似ています。焦って、ほどこうとすればするほど、よけいにこんがらがってしまうという、アレです。
そんな時は、落ち着いて、1つ1つ解きほぐしていくしかありません。思い浮かぶ語句やフレーズを、順番や関連性などは気にせず、書き出していくのです。すべてを書き出してから、つながりやまとまりを探します。
拙著『「次もよろしく!」と言われるための仕事術』を書いているときも、何度もこの書き出しを行いました。そこで今回は、書き出しに使ったツールを2種類紹介します。
- 1.MDノート(紙のノート)
- 2.Scapple(MacおよびWindows用ソフトウェア)
とにかく手を動かして書きなぐるためのMDノート
ミドリカンパニーのMDノートがどういうものかについては、以前、詳しくご紹介していますので、そちらをお読みください。
» シゴタノ! 書き心地がなめらかで気持ちいい ミドリカンパニー「MDノート」
MDノートには、さまざまな種類のサイズや罫線のタイプがそろっていますが、書き出しに使う時には、大きくて無地の方が使いやすいため、A4変型版の無地を選択しました。バッと開いて、とにかく書きなぐります。色は、基本的には1色で書き始めて、気になるキーワードがあれば、他の色で囲んだり、線を引いたりしていきます。
私は、マインドマップも習いに行ったことがあり、ときどき書くこともありますが、こういう時には使いません。マインドマップを書く時に使う文字と文字を結ぶ枝が、なぜか邪魔に感じられるからかもしれません。とにかく、単語でも短い文章でも、思い付くことを書き出すことによって、自分の中に隠れていて見えなかったモヤモヤを、俯瞰できるようになるまで、これを繰り返します。
上の写真は、本を書いているときに書き出したノートの一部です。他の部分はあまりにグチャグチャで、たいへん見苦しいので、比較的お見せできそうな部分を拡大しました。語句を書き出すときには、適度に余白を空けて書きます。また、突拍子もないアイデアが出てきたときは、ノートの端に書いておいたりもします。後で、全体をボーッと眺めている内に、線で結べる点を見つけたり、余白を埋めていくような考えが浮かんだりするのです。
Scrivenerに取り込むことを前提に使うScapple
手で書き出したMDノートは、このままでは文章になりません。実際には、文章はパソコンで書いていますから、ノートに書いたことを、文章を入力することを補助してくれるような素材に落とし込みたいと考えます。そこで、登場するのがScappleです。
Scappleは、シゴタノ!でも何度か登場しているScrivenerの販売会社であるLiterature & Latteからリリースされている、アイデア書き出し用ツールです。カード型でもなく、マインドマップ型でもない。まさに、私がノートに書き出しているような形式で、画面に書き出しができるツールなのです。Mac版とWindows版があります。
» Literature and Latte – Scapple for Mac OS X and Windows
Scappleを選択したのは、MDノートに書いているのと同じような状態で、デジタルファイルを作成することができ、執筆に利用していたScrivenerに、簡単に取り込むことができるからです。執筆中の原稿と、必要な資料を、すべてScrivenerに集中させることができるというのは、本を書いているときの私にとって、本当に便利でうれしいことだったのです。
具体的には、冒頭の写真のように、ノートから単語を書き写しながら整理していくところから、Scappleを使い始めました。そして、Scapple上で、次の写真のような構成案にまで、内容を発展させていったのです。
Scappleの操作方法は、驚くほどシンプルで、ほとんどヘルプなどを読まなくても使えました。使いこもうと思えば、もっといろいろなことが設定可能なのでしょうが、目的は、ソフトウェアを使いこなすことではなくて、「まとまらない考えをまとめて、執筆できる状態にする」ことでしたので、本当に基本的な操作方法しか、まだ知りません。それでいいのです。
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自分がフィーリングで取捨選択し、試行錯誤してやってきたことを、本で他の人にも分かるように、順序立てて説明するのは、本当に大変なことでした。普段、記事を書くときの何倍ものエネルギーを使ったのではないかと思います。その過程をここに書くことで、誰かのお役に立てればうれしいなと思います。
▼海老名久美:
フィーリング重視のガジェッターでライターで翻訳者。「SPEAQ」の中の人。