2000年にアル・ゴアが米大統領選に出馬したとき、彼の政治顧問は、当時まだ世間の関心が低かった「気候変動問題」を議論しないように助言した。
じつは、ゴアは大学生のころからの熱心な環境保護提唱者で、気候変動問題を最も重要視していた。それだけに、自分がホワイトハウスに入れば状況を大きく変えられる、と彼が感じていたとしても不思議ではないだろう。大統領になることは目的ではなく、目的を達成するための手段だったのかもしれない。
フロリダ州の投票が再集計される茶番もあって、ゴアは選挙に敗れるが、チャンスは予期せぬ形で到来した。
政治家を辞めてからの講演活動や、多くの議論を呼んだドキュメンタリー映画『不都合な真実』の公開が実って、彼はいまや環境問題の第一人者となっている。“明確で大きな目標”に向かって、おそらく大統領としてでは成し遂げられなかったような大きな仕事をしているのだ。当初思い描いた手段とは違っていた、というだけのことである。(中略)
ヒルは、明確で大きな目標は不可欠だが、達成する方法に関しては固執しすぎないように、と警告している。自分の計画を厳格に守ろうとしすぎると、不運や失敗に紛れて不意にやってくるチャンスを見逃してしまうからだ。(p.12)
- やめる:方法にこだわる
- 始める:明確で大きな目標にこだわる