この商品の企画を発表した会議では、「こんな商品、誰が買うんだ?」と15人の役員中14人が反対したそうだが、ある役員一人だけが「待ちに待っていた製品だ」と絶賛したことから、発売が決まった。
しかし実際にポメラが発売されると、すぐにライターやブロガーなど、テキスト入力を毎日の仕事とする人々の間で大きな話題となる。結果的に、年間で10万台以上が売れる異例のヒット商品となった。
多くの人が欲しがる製品ではなく、ごく一部の人にしか必要とされないが、熱烈に欲しがってもらえる商品を作り出したことがポメラのヒットの要因であるといえるだろう。
一部の人の「まさに欲しかった商品だ」という思いをすくい上げ、それを商品という形に結実させたマーケターの感性が光る仕事だ。(p.135)
※赤字は大橋。
前回は「お金を出す人に分かる差異」について書きましたが、今回のポメラの事例は「お金を出す人」にフォーカスしています。
どんな「差異」を提示したら、「お金を出す人」が反応するのか。言うまでもなく万人受けする「差異」などはありません。「違い」のわかる限られた人だけが反応するからこその「差異」なのです。
同じことはブログにも当てはまります。
多くの人に読まれる記事とは、ごくごく少数の人にとって「グッ」とくるポイントについてツッコんで書かれている記事といえます。
記事に最初に反応する人は、それを誰かに伝えたいという思いから周りの人にクチコミをします。「周りの人」というのは当然、その人の属性や好みに近しい人であり、その人ほどではないにせよ「濃い」人ですから、そこからさらにクチコミが波紋のように広がっていきます。
「違い」がわかる人とは、言いかえれば特定の領域を深く深く掘り続けている人です。意図的にそうしている人もあれば、「好きだから」という理由で知らず知らずのうちに深みに飲み込まれている人もいます。
いずれにしても、周りが見えなくなるくらいまで入り込んでいるがゆえに、外の世界との断絶が起こるのです。この断絶を埋める手段の1つがブログを書くこと。
たとえ読者が少なかったとしても、誰かの目に触れる場所に書き続けることによって、しかるべき人に“発見”される日がやってきます。
まずは自分にとって「グッ」とくることについて書くこと。その意味で、ライフログは有効です。自分にとってさほど関心のないことはわざわざ書かないからです。そもそも目に止まることもないでしょう。書かれることは必然的に何かしら関心をいだくことができたもの、ということになります。
その時その時はわからなくても、時間をおいて読み返すことで浮かび上がってくることもあります。
「自分の強み」を見つけよう、といったことがもてはやされていますが、それはどこかを探して見つけるものではなく、何かを書き続けることで副次的に見つかるものだと僕は考えています。
僕にとって、ブログを書くことも武器の1つです。