全企業の「コモディティ化」が進む世の中で、唯一の富を生みだす時代のキーワードは、「差異」である。「差異」とは、デザインやブランドや会社や商品が持つ「ストーリー」と言いかえてもいい。わずかな「差異」がとてつもない違いを生む時代となったのだ。
マーケターとは、「差異」=「ストーリー」を生み出し、あるいは発見して、もっとも適切な市場を選んで商品を売る戦略を考えられる人間だといえる。(p.129)
※赤字は大橋。
前回は、本書には意味の異なる2つの「差異」が登場することをご紹介し、まずは1つ目の「差異」を取り上げました。
今回は2つ目の「差異」です。
前回の「差異」はひと言でいえば、「作り手には分かっても、お金を出す人には分からない差異」でした(日産の例)。
今回の「差異」はこの逆で、「お金を出す人に分かる差異」です。
最近目にした以下の記事ではまさにこの2つ目の「差異」がカギになっていることがわかります。
「サイクロン」にしても、「エア・マルチプライアー」にしても、ひと目見ただけで従来の商品とは違うというインパクトを与える。
だからこそ、掃除機や扇風機という、すでに成熟してコモディティー化したと思われていた市場において、他の商品よりも価格の高い「ダイソン・プレミアム」を成立させることに成功できた
ここで言う「インパクト」こそが「差異」の現れであり、そのベースにはストーリーがあるわけです。
とはいえ一つ注意したいことがあります。それは「差異」は生み出すものではなく、生じるものである、ということです。
「差異」を生み出すことに囚われすぎると続きません。本来もっている持ち味を少しずつ出していくことで、おのずと他との「差異」が立ち現れてくる、というのが本来だと思うのです。
痩せることに夢中になりすぎて健康を害するという罠を避け、健康な状態を維持していく中で少しずつ痩せていくのが望ましいものですが、「差異」の話はこれに似ています。
上記の記事の中でも以下のような記述が見られます。
小手先のデザインで誤魔化そうとするのではなく、まさに技術のど真ん中で勝負する。
小手先の“ブランディング”で勝負しようとしていませんか?