『「絶対に達成する」習慣』という本で紹介されていた「成功に至るまでの4つのステップ」。
いま自分がどのステップにいるかを知ることで、次にすべきことが見えてくるのでおすすめです。
4つのステップとは、以下です。
- 1.バッド(bad)
- 2.ノーマル(normal)
- 3.グッド(good)
- 4.グレート(great)
グレートに至る険しい道のり
物事が成功に至る道には四つのステップがあります。
まず最初の段階はバッド(bad)。これは誰がどう見ても悪い状況です。企業で言えば売り上げが減っているとか、収入が支出をまかなえないというような状態です。
これではまずいということで、次に目指すのがノーマル(normal)という状態です。世間並みの収入で世間並みの家に住み、世間並みの生活を送れる段階です。
しかしこれではまだ不足を感じ、多くの人はその上のグッド(good)を目指します。より高い所得を得、よりよい車に乗り、よりよい家に住む。余裕のある生活と言えるでしょう。ほとんどの人がここまで来ると、自分の人生は成功だったと満足し、これ以上の段階を目指さなくなってしまいます。
でも実はこの上にもう一段階、グレート(great)という世界があるのです。
それなのになぜ多くの人はグッドの段階で満足してしまうのでしょうか。
それは経済面での目標しか持っていないからです。経済的な目標だけだと、ある一定の水準に達すると、「これ以上収入を増やしても税金が増えるだけだからこれでいいや」という結論に陥りがちなのです。つまり、グレートにステップアップする理由がなくなってしまうのです。
グッドをグレートに引き上げるには?
今年の5月1日に、本書の著者である武沢信行さんが主宰する経営計画合宿に参加しました。そのときの参加動機がまさに「グッドをグレートに引き上げる」でした。
結果から言うと、この合宿の中で、グッドからグレートに引き上げるためのあるアイテムを手に入れることができました。
もともと自分の中にあったものを再発見した、といってもいいでしょう。
グッドで十分?
バッドからノーマル、そしてグッドにいたるまでの過程はドラマです。
ドラマにおけるハッピーエンドとはたいていグッドであってグレートではないでしょう。なぜなら、グッドで十分に満足だと感じる人が多いからです。グレートまで描く必要がないわけです。
「めでたし、めでたし」はバッドを克服して、到達したグッドな状態であり、たいていはそこでドラマは幕を閉じます。
現実は、しかし、その後も続きます。
この「その後」を巧みに描いた作品の1つが『成功者の告白』です。
問い合わせが殺到し、その数は連日100件を超えた。しかもホームページでは、神崎からもらったアドバイスが機能している。その結果、ほとんど手がかからずオンライン受注できるようになっていた。あまりに受注が殺到したので、価格を二倍に値上げした。値上げしても、受注は落ちなかった。
会社は猛烈に忙しくなった。三時間の睡眠時間が続いた。
とはいうものの、サラリーマン時代とくらべ身体は疲れなかった。通勤時間がなくなったので、家族と食事が毎日一緒に取れるようになり、子供をお風呂に入れる気持ちの余裕もできた。はじめは子供がいると集中力が妨げられると思っていたが、疲れたときに子供と遊ぶことは、何よりのリフレッシュとなった。
毎日が給料日だった。サラリーマンのときに一年かかってやっと貯められた金額が、毎週振り込まれるようになった。預金通帳を記帳しにいくたびに感激した。記帳の際に残高をタイプする印字の音が、美しい調べのように聞こえる。
タクは嬉しかった。ユキコも嬉しかった。
タクは、自分のつくりだしたビジネスが回転しはじめたことを感じていた。半年たってみると、契約率は神崎のいうとおり資料請求数に対して12パーセントに落ち着き、マスコミ記事から得られた問い合わせに対しては25パーセントとなった。こうして数字が見えてくると、方程式のように安定した、そして予測できる経営が可能になった。
もう生活費にも、支払いにも心配する必要がない。
顧客からは感謝された。取引先からも信用された。
忙しい。しかし、いまだかつてないほどの充実感を覚えていた。
誰にも頼らず、自分ひとりで生きていけるという自信をはじめて持つことができた。
〈戦争がはじまっても、大地震が起こっても、僕は生きていけるだろう。焼け野原に立たされたとしても、数日後にはビジネスを立ち上げ、自分の家族を養っていくことができるだろう〉
タクは湧き上がる生命力を感じながら、経営者への道を踏み出したのであった。
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読者諸兄姉の皆さん。通常の起業小説ならば、ここでハッピーエンド。「めでたし、めでたし。タクとユキコは一生、幸せに暮らしました」と幕を閉じる。しかし残念ながら、この物語はハッピーエンドでは終わらない。タクとユキコのハッピーエンドは、じつはこれからはじまる真実の物語の、ほんの序幕にすぎなかったのである。ハッピーエンドの向こうには何があるか、あなたはご存じか?
多くの方にとって、これから先は未体験ゾーンへ入ることになる。今までのビジネスに対する概念が根底から崩れ去っていく。ビジネスと家庭とが密接に関わっていること。それが容易にはほぐせないほど絡み合っていること。その真実をあなたは目撃することになる。
そこで舞台は、タクの仕事場から、家庭の場に移る。
常識では捉えきれない新しい世界に、そろそろあなたをご案内することにしよう。
この後の展開はまさにグッドからグレートに至る険しい道のりです。何度読み返しても毎回もれなく唸らされます。
グレートに挑むときに必要なアイテム
冒頭で引用した『「絶対に達成する」習慣』では直後に以下のように続きます。
グッドで満足してしまう人、そこでは満足せずグレートへ向かう人。両者の違いは何かというと、明確な「理念」を持っているかどうかなのです。
理念というのは、言い換えれば「志」ということです。
先ほど、グッドからグレートに引き上げるためのあるアイテムを手に入れた、と書きましたが、それが引用にもある「理念」です。
理念や志の特長を一言でいうと「達成不可能」です。
自分にとって一生追求し続けられる、終わりのないゴール。それが理念や志、ということになります。
達成可能なものを目指す限りはそれはグッドに留まってしまいます。
『あえて、つながらない生きかた』という本に以下のようなくだりがあります。
講演会などで、「お金持ちになりたい。もっとたくさんお金が欲しい」という人に出会うことがあります。「ではいくら欲しいのですか」と聞くと、答えに窮してしまいます。さらに「それは何に使うためのお金ですか」という問いには、もっと大きな家に住みたい、カッコいい車に乗りたいなど、自分の欲望を満たすためという本音が出てきます。それ自体は決して非難すべきことではありません。欲望も野望も、人生を前に進めるためのエネルギーになり得るからです。
しかし、お金を稼ぐことが目的になってしまうと、大金が手に入ったときに、人生の目的を達成してしまうことになります。そこから先の人生の意味がなくなってしまいます。あるいは、さらにお金を追いかけて、常に「足りない」状況に陥ってしまいます。十分にお金があっても、常に足りないと思っている状況は不安で不幸なものです。友達も幸運も去っていってしまうでしょう。
お金を稼ぐことが目的になると、その目的は達成可能になってしまいます。
達成する以前に達成可能であるということが分かると、人はそこで歩みを緩めてしまうでしょう。
「これ以上収入を増やしても税金が増えるだけだからこれでいいや」という一言はまさにこの気持ちを表しています。これ以上がんばっても損をするだけだ、というわけです。
成功者の多くがトライアスロンやウルトラマラソンに取り組むのは、そこに達成の余地が無限にあるからでしょう。がんばればがんばっただけ記録が改善されるという成長の喜びが感じられ、それでいて際限がありません。
「これ以上記録を改善をしても損をするだけだ」という“天井”が事実上存在しないのです。
自分らしい時間的豊かさを追求する
僕自身の目下の活動理念は「自分らしい時間的豊かさを追求する」です。
「経済的豊かさ」も大事ですが、それ以上に「時間的豊かさ」のほうこそ、優先されるべきだとつねづね考えてきました。
お金があっても時間がなければ本当の意味で豊かな人生が送れないからです。
会社員時代の僕は常に時間に追われていました。
時間的な窮乏状態にあったのです。
朝9時の始業時間から定時のはずの18時をかるく超過して、早くても深夜0時、遅いと明け方の4時まで会社で仕事を続けるという毎日。
当然、20代の若かりし頃だったからこそ、そして、20世紀の牧歌的な時代だったからこそ、続けることができた日常です。
幸いなことに、単価は安いものの残業代はいっさいカットされずに会社から支払ってもらえていたため、経済的には20代のわりには裕福でした。
でも、そのお金を使う時間がまったく無かったのです。
そんな「バッド」な日々があったからこそ、今があるといえるのですが、それ以上にその日々にこそ理念の素が埋もれているのだな、と改めて思います。
単なる「時間的豊かさ」ではなく「自分らしい時間的豊かさ」としているのは、人それぞれに「豊かさ」の尺度があり、正解がないからです。
自分で見つけだしていくしかない。その時のしるべとなるのが過去の体験です。これを手がかりにして手探りで進んでいくことで、少しずつ手に入れていくもの。それが「自分らしい時間的豊かさ」だと考えています。
これをお読みいただいている方の中で、現在ノーマルやグッドに甘んじているという自覚をお持ちの方は、かつてのバッドな日々を思い出してみる、あるいは記録が残っているなら読み返してみてください。
グレートに至るための手がかりを見つけ出すことができるはずです。
参考文献:
著者の体験談がいちいち心に響きます。それはきれいごとを徹底的に排除して、本音で語られているからでしょう。
どんな本も、時をおいて読み返すと違った味わいがあるものですが、本書ほどその味わいが深く濃いものはほかにないでしょう。自分のライフステージ・ビジネスステージが変わるたびに、本書から発せられるメッセージが変化します。まるでプリズムのようです。
リッツ・カールトンの元日本支社長である高野登さんの著書。静かなる内省を促してくれる一冊です。