人間、どこかで「何とかなるサ」って開き直ることがないとね。リスクなんて考えてたら、結局は何もできませんよ。
─西村京太郎(作家)
リスクを冒す人は、「何とかなる」と思っているからこそリスクを冒せるのだと思う。リスクを冒すための準備をし始めたらキリがない。石橋を叩き続けて人生を終える。
やってみたら意外とできた、という予想外の結果は、やってみた人にしか訪れない。
寸分違わず予想通りの結果になることは皆無に等しい。何か行動を起こせば、必ず何らかの予想外の結果、あるいは予想外の効果があるもので、それが良いものなのか悪いものなのかが事前にわからないことが、リスクを冒す上での最大のブレーキになると同時にリスクを冒すに値する最強のメリットになる。
考えた末にブレーキを踏む人と、直感でアクセルを踏み込む人の違いは意外と紙一重なのかもしれない。
以下のくだりは、『仕事は楽しいかね?』の序盤の主人公の独白。この段階の彼はまだ「考えたすえにブレーキを踏む人」にとどまっている。
私がどれほど困惑したか、読者の皆さんにはおわかりいただけると思う。それまでに出会った中で一番出世していた人でさえ、成功の秘訣として私の知っていたあらゆることをミックスさせていたのに。そうした秘訣の代わりに「試してみることに失敗はない」などという言葉を提案されたのだから……それも、きわめて説得力がある、というわけでもないフレーズを。