著書は読んでいましたが、その著者の以下の動画を見て、改めて「そうだな」と強く思えました。
英語ですが字幕つきですので是非チェックしてみてください、19分05秒の動画です。時間がない人は日英両方の書き起こしが動画の下に掲載されていますのでそちらで。
特に共感したのは以下のくだりです。
しかし祖父の問題は儀式上の役割を果たしながらも本当はすごく謙虚で内向的な人柄だったことで、説教をするときにアイコンタクトをとるのが難しいほどでした。62年間説教してきたまさにその聴衆が相手であるのに関わらずです。演台から下りてさえそうで、誰かと世間話をしていても突然会話を打ち切ることがよくありました。相手の時間を長く取り過ぎてはいないかと怖れていたのです。
交流会は苦手
僕自身、「7人以上の飲み会は辞退する」というマイルールを持っていますが、それだけの人数になると話題があちこちに飛んで話が深まらないことが多い、ということ以上に、「ほかにもたくさん人がいるのに、自分なんかと話して時間が無駄になったら申し訳ない」という気持ちが大きいのです。
少人数の集まりなら、お互いによく知っているもの同士か、あるいはその集まりの趣旨に賛同した人ばかりになることが多いので、このあたりの気持ちは少し和らぎます。
以前は数十人から数百人規模の「異業種交流会」にもよく参加していましたが、上記のような事情で、その場になかなかなじむことができず、帰宅すると疲れ果てていました。
それでも、「出会い」や「チャンス」を得るためにはそういった場に身を置くことが近道であることは間違いありません。
ただ、今ふり返ってみると、そこで得られた知己で、今も続いているのは、僕自身と同じようなパーソナリティをもつ人たちばかり。
つまり、内向的な人たちです。
このあたりから人間関係には大きく分けて次の2つのカテゴリーがあるのではないかと考えるようになりました。
- 自らの得意を拡張させるための関係
- 自らの不足を補完しあうための関係
「自分にできること」を見つけてこれに打ち込む
前者は自分と同じようなパーソナリティ、すなわち内向的な人たちとのつながりで、後者は自分にはないパーソナリティを持つ人たちとのつながりです。
孫引きですが、『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』という本にある以下のくだりに目が留まりました。
有能な人びとは強みのうえに仕事を築き上げる。こうした人びとの設問は、“自分にできないことは何か”、または“彼のできないことはどんなことか”ということではなく、“自分にできることは何か、そして彼のできる仕事は何か”という問題である。(『経営者の適格者』)
僕はこの部分を「できるだけ多くの時間をできることに注ぎ込む」と解釈しました。言い換えれば、自分にできないことをがんばって身につけるよりも、まず自分にできることで前に進もうとする。もっと言えば、何か新しい技術や能力を身につける前に、今の自分にできることで誰かの役に立てることはないかを探す、ということです。
一方、自分にできないことはできる人、すなわち「補完関係にある人」に躊躇なく任せる。
いわゆる「できる人」というのは「できることをしている人」なのではないかと思うのです。
たとえば、以下の記事で紹介した「偏差値40以下の中学生だけを教える家庭教師」の事例。
そこで彼女は戦略を変更する。「偏差値40以下の中学生だけを教える家庭教師」を始めたのだ。
彼女が家庭教師を始めた地区は、教育熱心な地域であったため、学習塾も数多くあったが、そのほとんどは勉強のできる子どもを対象とする、有名私学を目指す指導を行っているところばかりであった。彼女はそうした学習塾がまったく相手にしていない、勉強ができないけれど、せめて高校ぐらいは卒業しておきたい、と考える親とその子どもをビジネスの相手としたのである。
しかも彼女は「高校に無事に合格できたら特別ボーナスをいただきます」と成功報酬制の契約を結んだことから、初年度から大きく稼ぐことが可能となった。
彼女の短大出という弱みは、基礎から親切に教えてくれそう、苦労しているから弱い人の気持ちが分かる、と逆に強みになったわけである。
『小さな会社・儲けのルール』 p.150
あるいは、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』に載っていた田中孝顕さんの事例。
田中は自分を変えるために自己啓発にのめり込み、「人格改造」を求めるひとたちにそのノウハウを販売するようになった。だが当の本人はあいかわらず人づきあいが大の苦手で、八ヶ岳の別荘でただ一人、賄いの夫婦に世話をしてもらいながら、孤独な執筆活動をつづけている。田中夫妻のあいだに子どもはなく、実質的にビジネスを取り仕切る妻とは一年の大半を離れて暮らしている。もちろん、友人との交流もいっさいない。
極端すぎる例ですが、自分にできること、自分にしかできないこと、自分が没頭できることを見つけて、これに打ち込むことができた人が「できる人」、すなわち抜きん出た人になる可能性が高いわけです。
自分にできないことをやろうとするよりも、あるいは(ダメな)自分を変えようとするよりも、まず今の自分、これまでの自分をふり返ってみると、そこから道が開けるのではないかと考えています。
冒頭の動画でプレゼンをしているスーザン・ケインさんは『内向型人間のすごい力』という著書で「内向型」を取り上げていますが、このテーマが彼女にとって最も「できること」だからです。この本を読んで、仮に「自分は内向型ではないな」と思ったとしても、その人は別の何かで『○○型人間の時代』を語り出すことになるかもしれません。
そんなヒントが見え隠れする一冊です。