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アイデアを出せる人のマインド・スタイル

idea
photo credit: nhuisman via photopin cc

倉下忠憲
「必要は発明の母」という有名な言葉があります。意味はそのまま、

“必要に迫れらると、発明や工夫が生みだされる”

ということ。

確かに、アイデアの歴史を振り返ってみると、必要に迫られて新しいアイデアが生まれてきた事例は多く見受けられます。

もちろん「必要」があれば、かならず新しいアイデアが生まれる、ということはないでしょうが、新しいアイデアを生み出す素地の一つ、ぐらいには言えそうな気がします。

「じゃあ、必要に迫られれば、アイデアが生み出しやすくなるんですね」

と、前向きな気分になるのは良いのですが、そもそも「必要に迫られる」って一体どんな状況なんでしょう。


ストックデールの逆説とアイデア

「ストックデールの逆説」をご存じでしょうか。『ビジョナリーカンパニー2』という本の中で紹介されています。その本から言葉の定義を紹介してみます。

ストックデールの逆説

 どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。
  そして同時に
 それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない。

アイデアを生み出せる人のマインドというのは、おそらくこういう形をしているのでしょう。

どんな問題にぶつかっても、最終的にそれを解決できるという確信がなければ、そもそも行動を起こすことはできません。

もし、「この問題は、どうしようもない・・・」と考えているとすれば、それはすなわち「打つ手がまったくない」と考えているということです。そんな状況ではアイデアがうまれるはずもありません。

かといって、短絡的な楽観主義__「なんとかなる」__も危険です。

この「なんとかなる」が、「(なんにもしなくても)なんとかなる」という気持ちの表れならば、アイデアの必要性はゼロということです。必要がないのだから、アイデアも生まれ得ません。

「現状は安泰だ」とあぐらをかいている人から、斬新で画期的なアイデアが生まれる、というのはちょっと想像しにくいですよね。

さいごに

これらを乱暴にまとめると、

「現状は問題があって、しかもかなり困難な問題だが、良いアイデアを考えられるはずだし、そのアイデアによって問題を解決できるはず。だから、なんとかなる」

という捉え方が「アイデアの必要に迫られている」と言えるのかもしれません。

問題を認識し、アイデアの力を信じること。

とあるブロガーの肩書きをもじれば、現実主義のロマンチスト、という感じですね。これがアイデアを出せる人のマインド・スタイルなのでしょう。

▼参考文献:

本文で紹介した「ストックデールの逆説」が紹介されている本です。本書自体は、いかにすれば偉大な企業になれるのかがテーマです。良い企業から、偉大な企業への道のりがデータ分析により示されています。


▼今週の一冊:

「アイデアってすごいんだな~」と改めて関心させられる一冊です。アイデアの力がもたらすものの大きさは、ちょっとはかりしれません。

震災という困難な状況にぶつかって、もうダメだと頭を抱え込んでしまっては、何も解決しません。しかし、放っておけばなんとなる、と考えられる状況でもありません。困難だけれども、自分に出来ることは何かを考えて、問題解決に向けて動き出す。こういう姿勢が必要なのでしょう。

著者の西條さんが、ボランティア経験ゼロから、どのように支援組織を作っていったのか。そして、その中で展開されたアイデアがどのような効果を生み出したのか。そういったことが紹介されています。

本書の帯で糸井重里さんが「西條さんの学問は、実戦的で痛快だ」と書かれていますが、まさにその通りの印象です。アイデアの力に興味がある人は、是非ご一読ください。


▼編集後記:
倉下忠憲



プライベートでいろいろありまして、原稿に追われております。

突然の出来事は、当然予知できないので、どうしようもありません。かなり余分に空けてたバッファーも全て食い尽くされてしまいました。でも、まあなんとかなります。もちろん、いろいろなアイデアを駆使して、なんとかします、という意味です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。