「ッ!!」と、アイデアが閃くのはなかなか心地よいものです。関係性のないものに道筋を付けたり、あるいは全体をまとめる視点を見いだせたときに、独特の心地よさ(あるいは快感)を感じることがあります。
何かについて考えたときに、すぐさまその「心地よさ」にたどり着ければよいのですが、なかなかそうはいきません。むしろ、出口が見つからないような感覚を覚えることの方が多いかもしれません。どれだけ考えてみても、さっぱりとアイデアが見つけられない、そういった状況です。
「産みの苦しみ」という言葉がありますが、閃きの直前までは、そういう苦しみに直面することが多々あります。この「苦しみ」を100%回避するのは難しいと思いますが、考え込みすぎてずぶずぶと泥沼にはまり込んでしまうことだけは避けたいところです。一度泥沼にはまり込んでしまえば、視野が狭くなり、ますます打開策が見つけにくくなります。
そういう状況に対抗するためには、何かを変えてみるのが有効です。今回は、考えが行き詰まったときに試してみたい3つの変化を紹介してみます。
環境を変える
一つ目の変化は、自分の周りの環境を変えてみることです。
例えば、考え事をする場所を変えてみるというのがその一例です。周りが騒がしくて思考に集中できないならば、一人になれる場所に。逆に周りから何の刺激も得られない場所にいたのならば、雑音が混ざり込むカフェに、といった感じで普段とは違う場所に身を置いてみるというのが「環境」の変化になります。
じっとしていたら、歩いてみる。座っていたら、立ってみる。座っている椅子の方向を変えてみるのも、一つの変化になります。
また、一人で考え込んでいたのならば、他の人に話をしてみるというのも一手です。逆に会議でまとまらないならば、一人で考えるという変化もありうるでしょう。とりあえず周りの状況に変化を加えるというのが、自分の頭を動かすきっかけになります。
あるいは、まったく別の作業をしてみるというのも環境の変化と言えるでしょう。別の仕事をしたり、部屋の整理をしたりと、思考を一度別の方向にずらしてみることで、新しい着想が湧いて出てくるかもしれません。
道具を変える
二つ目の変化が、道具を変えることです。この場合の道具には、マテリアルとしてのツール、と思考の型になるツールの二つの意味合いがあります。
アナログツールを使っていたのならば、デジタルツールでやってみる。あるいは紙とペンを普段とは違うものを使うというのも変化です。B5の紙からA4の紙へ。A4の紙からA3の紙へ。横罫から方眼へ。ペンが黒色ばかりだったら、赤とか青を使って。ボールペンから万年筆へ。サインペンから絵の具へ方眼から無地へ。変化のバリエーションはいくらでもあります。
日常とは違う道具を使って、アイデアを書き出してみるだけで何か変化してくるかもしれません。
思考の型になるツールとしては、アウトライナー、図化、KJ法、マンダラート、マインドマップ、ストーリーボード・・・といった手法があります。これらも普段とは違うツールを使ってみることで、新しい発見があるかもしれません。
見方を変える
最後の一つが「見方」を変えることです。上の二つとは違い、考えている問題そのものについてのアプローチになります。
これについては別に1エントリーぐらいかける要素がありますが、まずは自分が考えていることを文章化してみるのがとっかかりになります。
あとは、それを別の表現に置き換えてみたり、あるいは疑問詞を変更したりして、問題そのものを別の視点から眺めてみるという方法です。こうすることで、問題に潜む制約や曖昧な前提が見えてきます。つまり、問題そのものを別の環境に置いてみる、というのが目指す変化です。
柳澤大輔さんの『アイデアは考えるな』という本では、「そもそも、何でだっけ?」という質問の掘り下げ方が紹介されています。
例えば、「満員電車を楽しくするアイデア」というお題があったときには、「そもそも……なぜ満員電車は楽しくないのか?」と問いかけます。
この「なぜ」を考えると、いくつか原因が思い浮かび、そこからなにを改善すればよいのか、というアイデアにつながっていきます。
また、「アイデアのヒント」という本では、哲学者ケストラーの次のような言葉が紹介されています。
「科学の革命をもたらした人々の偉大さは、正しい答えを発見したことよりも正しい質問を投げかけたことになる。それまで誰も気がつかなかった観点から問題を見たこと、『どうすれば』の代わりに『なぜ』と問いかけたことが偉大なのだ」
こちらも「なぜ」という問い掛けの重要さが語られています。
ある種の問題に正面からぶつかっても答えが出ないときは、横や後ろに回り込んで、別の視点からその問題そのものを考え直してみることも必要でしょう。
さいごに
今回は、アイデアに行き詰まりを感じたときの対応策というのを考えてみました。
これは、私が本の構成案について悩んでいたときに、いくつかの書籍から拾い上げ、実際にやってみたトピックスです。
考えがうまくまとまらないというのは、なかなか苦しいものです。今回紹介した方法を試してみれば、受動的に「アイデアが浮かばないかな〜」と待ち構えているよりは、主体的に「どうやってアイデアを出そうか」と取り組むことができるようになるでしょう。
さらにいえば、「どうすれば考えがまとめられるだろう…」と悩むのではなく、「なぜ考えがまとまらなのか」という疑問を持つことができれば、アイデアについての本が一冊書けるかもしれません。
▼参考文献:
アイデアを生み出す際に必要な心構え、注意点が紹介されています。この本を読むだけで、前向きにアイデアと付き合えるようになるでしょう。
「とにかく何かをやることだ。ぼんやりと座ってアイデアのほうからやってきてくれるのを待っていてはいけない。追いかけて行け。くらいつけ。探し求めよう。行動を起こそう。
アイデアは「質」よりも、「量」。「すごいアイデア」を求めて悪戦苦闘するのではなく、「すごくないアイデア」を山のように生みだそうというアドバイスが詰まった一冊。
▼今週の一冊:
タイトルを見ただけで敬遠する人もおられるかもしれませんが、珍しい一冊であることは確かです。
サブタイトルは「最小のインプットで最良のアウトプットを実現する霞ヶ関流テクニック」。多忙な官僚がどのように仕事をこなしているのか、あるいは組織の中での処世術といった事柄が紹介されています。
大量の仕事を時間内に処理すること、それもできる限り「速く」処理することが求められていました。
こういう仕事の処理について興味ある方は、何かヒントが見つかるかもしれません。
Follow @rashita2
iPad2、とても良い感じです。
PC周りの機器というよりは、完全にノートの延長線上__つまり文房具という位置づけになっています。ノート系のアプリを中心に、アイデア・エンジニアリングに関係するアプリもいろいろ試していますので、また連載の中で紹介したいと思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。