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プレゼンテーション発表における2つの「準備不足」/ビギナーズ・ハック第13回

北真也

ベック君はじめてのプレゼン発表の巻

その夜、ベック君は緊張のあまり眠れなかった。
遡ること12時間前・・・、出来上がりの資料をオオハシ課長にレビューしてもらっていた。

 
オオハシ課長 :お、資料できたんだね。いいじゃん、いいじゃん。

メホリ先輩 :ええ、この2日間で数えること22回のリテイクを繰り返しましたからね。良いスライドになったんじゃないかと。

ベック君 :メホリ先輩には沢山ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。

オオハシ課長 :まぁまぁ、結果こうやって良い資料ができたんだからいいじゃない。ところで、メホリ君、あの件はもう話した?

メホリ先輩 :ああ、すっかり忘れてました。

 
ニヤリと笑う二人。

 
メホリ先輩 :明日、お客さんへのプレゼンはベック君がやってね(ハァト

オオハシ課長 :重大任務だけど頑張ってね☆

 
「えっえっ」と戸惑うベック君。
メホリ先輩は時計を指さして

 
メホリ先輩 :午後丸々練習に使って良いから、まぁ余裕でしょう。

 
ベック君は一人で会議室にこもってプレゼンの練習に励んでいた。
以前受けたプレゼン研修の資料を読み返してみると・・

ベック君 :ふむふむ。資料や手元の原稿を見ずに聴衆の目を見て話す・・・原稿は書いても無駄なのか

 
2時間ばかり練習した頃にメホリ先輩が様子を見に来た。
取り敢えず練習した内容をメホリ先輩に聞いて貰う。

 
メホリ先輩 :うーん。なんか要領を得ないなぁ。資料に書かれている物を説明してるって感じもするし。台本は作った?

ベック君 :いえ・・原稿は読んじゃ駄目って研修資料に書いていたので。

メホリ先輩 :なるほどねぇ。確かに原稿を読んだり、丸暗記したりするのは良くないね。

メホリ先輩のプレゼン講座
プレゼンの基本は「聴衆に向かって話すこと」です。

姿勢と視線を聴衆に向け、スライドも指し示すとき以外は見ないようにしましょう。

その為には、プレゼンで話すことを覚えて於く必要がありますが、これは原稿を丸暗記するのではなく、役者が台本を頭に入れて演じる感覚に似ています。

台本はそのシーンで伝えたいことが最大限伝わるように、台詞や演技、演出まで含めて組み立てられています。台詞を丸暗記するだけでは役柄は演じることはできません。

台本を一旦頭にインプットして、体が覚えるまで練習し、時には台本の内容に自分の知識や経験を付け足しながら、自分のアウトプットにする必要があるのです。

まぁ、プレゼンは台本を書く所から自分でやらないといけないから大変な訳ですが、いやはや。

ベック君 :なるほど。よく分かりました!

メホリ先輩 :それから、有名なプレゼンターの映像なんかも参考にすると良いよ。

 
メホリ先輩はそう言ってiPhone4 を取り出し、一本のビデオを再生した。それは、かの Apple CEO スティーブ・ジョブスが iPhone3G についてプレゼンをしている映像だった。

 
メホリ先輩 :iTunes Storeなんかでも無料で落とせるし、Youtubeにもあるはず。シゴタノ!であの人が取り上げて、一時期シゴタノ!ベストセラーにもなっていた『スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン』なんかを読んでも良いかもね(キリッ)

ベック君 :あ、あの誰に向かって話されているんですか?

メホリ先輩 :おっと・・失礼。ついついカメラの向こうの視聴者を意識してしまった。ほら、この本だよ。貸してあげるから取り敢えず第3幕以降を読んでごらん。

ベック君 :(カ、カメラ!?)ありがとうございます!

 
その時、メホリ先輩の携帯のアラームがけたたましく鳴り響いた。

 
メホリ先輩 :そろそろ会議の時間か。今日はもう見る時間ないと思うから、後は頑張って!

 
メホリ先輩が彗星のごとく去ってから更に6時間。ベック君は台本を書いて覚え、本や映像を参考にしながらプレゼンの練習に取り組んだ。家に帰る道すがら、家で風呂に入りながら、そして、布団の中でも翌日のイメージトレーニングに取り組んだ

緊張して眠れない。

ベック君は2in1両面で印刷されたプレゼン資料を取りだした。
既に書き込みで一杯で、今日一日握りしめていたせいで少しぐちゃっとなっている。

スライドが映されたスクリーンの横に立つ自分と、そこから見える景色を思い浮かべる。

すぅっと息を吸い込んで、出だしの一言を発してみた。
後の言葉はするりするりとごく自然に続いていく。

 
3周ほど通しで練習したところでベック君は眠りに落ちた。

 

プレゼンテーション発表のビギナーズハック

プレゼンシリーズ第4回はプレゼン発表のビギナーズハックです。

そもそもプレゼンを行う目的は「聞き手に伝えたいことを伝える」ことなのですが、残念なことに昨今のビジネスシーンでも、文字だらけの資料をひたすら読み上げるだけのプレゼンが少なくありません。さっと目を通せば5分で済むところを、詰まりながら、しどろもどろに、一言一句漏らさず、20分かけて読み上げられる状況は悲劇そのものです。

プレゼン発表が上手くできない要因は大きく分けて2つの「準備不足」です。
1つはプレゼンスキルの準備不足、もう1つはこれから発表するプレゼンに対する準備不足です。

プレゼン発表を成功裏に終わらせる為に、こえらの準備をどの様に行えば良いかをみていきましょう。

プレゼンスキルの準備不足

スポーツでも、楽器の演奏でも、文章を書くことでも、スキルを一朝一夕に伸ばすことはできません。育ってきた環境で最初から人並み以上に上手くできたり、適正によって上達速度に差があったりすることはあっても、練習を一切せずにサッカー選手やバイオリニストになった人を私は見たことがありません。そして、この「スキルを向上させるためには練習が必要」というご一般論に異を唱える人もいないでしょう。

これらの例と何ら違いはなく、プレゼンスキルも練習なしに向上させることは難しいのです。
プレゼンスキルというと幅が広くなってしまうので、ここでは発表時における以下の2点について考えてみましょう。

  1. 姿勢
  2. 話し方

 
1.姿勢で気をつける点

・聴衆にアイコンタクトを送る
・聴衆に体を開く(体を向け腕組みをしない)
・体を左右にゆらさない
・ジェスチャーなどのボディランゲージは抑止しない

手元の資料や映し出されたスライドばかりを見て聴衆のことを一切見ないというのはありがちな失敗例です。アイコンタクトを送ることと体を開くことを意識して、聴衆にしっかりと「私はあなたにメッセージを送っているんですよ」という意思表示を行いましょう。また、無意識のうちに体を前後左右に揺らしている人も良くいます。緊張しているんだなと捉えられればいいのですが、落ち着きがないと曲解されてしまう可能性もあるので、意識して癖を直すようにしましょう。

自分がとにかく何かを伝えたいときに身振り手振りを加えるタイプなのであれば、ジェスチャーを抑止すべきではないようです。『スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン』には次のようにあります。

シカゴ大学のデイビッド・マクニール博士は1980年から手の使い方を研究し、しぐさと言葉に密接な関係があることを発見した。身ぶり手ぶりを使った方が考えがまとまり、プレゼンテーションでいいしゃべりができる。逆に体を動かさずにいようとすると、意外なほど注意力を取られてしまう。

 
2.話し方で気をつける点

・「えー」、「あのー」、「そのー」といったつなぎ言葉をなくす
・早口にならないように注意する
・抑揚、音量、間を意識する
・無理に丁寧な言葉を使う必要はない

例えば5分の発表の間にご自身が何度「えーっと」「あのー」というかを数えてみるとその多さにビックリすると思います。あまりにもつなぎ言葉が多いと、聴衆はそちらが気になってしまいますし、「何も考えて来ていない」と曲解されてしまうかもしれません。

また、多くの人は緊張と共に早口になってしまいますが、これにも注意が必要です。早口は聞き取りづらいだけでなく、「焦っている」という良くない印象を相手に与えてしまいます。その他、抑揚や音量、間をコントロールできるようになると、重要なポイントを強調できるだけでなく、変化ができるために聴衆が飽きにくくなる効果も期待できます。

これは私が昔に嵌ってしまったことなのですが、無理に丁寧な言葉を使おうとするあまり、気持ちの入っていない、どこかぎこちない話し方になってしまいました。特に私が関西出身だったということもあり、「ビジネスの現場では標準語」という固定観念に縛られていたところもあったのだと思います。

話に熱が入ったり、本気で何かを伝えようとした時に地の関西弁が出ることに気づいた上司に「関西弁で良いからもっと自然に話してごらんよ」とアドバイスを貰ってから、自分のプレゼンでの話し方は大きく変わり、確実に以前よりも伝わるようにななったと実感しています。大事なことは「伝えよう」という意思を何らかの形で表に出すことなのです。

 
プレゼンスキルを磨くために

先ほど挙げたプレゼンスキルを磨くための方法を簡単に列挙しておきます。

・優秀なプレゼンターの発表映像を見る
・プレゼン本を読む
・人にプレゼン発表を見て貰いフィードバックを貰う
・自分の発表をビデオに撮影して見る

特にビデオ撮影は自分の癖をチェックするのに効果絶大ですので、是非一度お試し下さい。プレゼン本としてはこれまでとりあげた『スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン』の他、『プレゼンテーション Zen』なども有名です。

 

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
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5 いい本です。
4 魂を揺さぶるプレゼンテーションは絶対に必要だ
5 プレゼンテーションの本質とは
5 アナログ
3 評価が高すぎる。実際プレゼンを見ればほとんどがわかること


プレゼンテーション Zen
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5 プレゼンテーションに留まらない示唆を与えてくれる本
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これから発表するプレゼンに対する準備不足

プレゼンに対する事前準備は以下の通りです。
例として私が各段階でやっている内容を記載しています。

  1. 台本を書く
  2. 最初は台本を読みながらプレゼンを進める
  3. 台本を見ないでプレゼンの練習を行う
  4. 簡単なメモのみ手元においてリハーサルを最低3回行う

 
1.台本を書く

台本の記載レベルは人によって異なると思いますが、私の場合は話す内容をまずは一言一句漏らさず書き出します。台本のレベルで「笑い」が取れるところはどこか、「重要なポイント」はどこかを考えながら話を構成していきます。また、台本には直接書かないのですが、「この部分はちょっとまくし立てるように言おう」とか「この部分は貯めてみよう」などの演出もこの時に簡単にですが考えます。

 
2.最初は台本を見ながらプレゼンを進める

まずは台本を見ながらプレゼン資料の説明を行います。ただ、もうこの時点で台本の一字一句は余り大切ではなく、書いてある内容と言い回しを変えてみながら自分がしっくり来る話し方を模索します。台本に書いてある話の流れがだいたい頭に入ればこの段階は完了です

 
3.台本を見ないでプレゼンの練習を行う

次に一切台本を見ずにプレゼンの練習を行います。話の流れにさえ沿っていれば、言い回しが違っても気にしません。台本を見なくてもスムーズに通せるようになったならこの段階は完了です。だいたいこのあたりか次のリハーサルで他の人にプレゼンを見て貰います。

 
4.簡単なメモのみ手元においてリハーサルを最低3回行う

後は、簡単なメモを手元に置いて、ひたすらリハーサルを繰り返します。プレゼンの長さによりますが、20分程度のプレゼンであればリハーサルを最低3回は行うようにしています。ちなみに手元に置くメモですが、これは簡単な話の流れを書いておくか、自分がよく忘れる箇所(何故かいつも2,3カ所苦手なポイントができる)について忘れないように強調して書いておきます。

 

最後に

これだけ準備しても発表当日は緊張や、不測の事態で頭が真っ白になることも多々あります。

そんなときでも、しっかり体にプレゼンの内容をたたき込んでおきさえすれば、頭が真っ白なのに口が勝手に動いてくれる(体が覚えている)とか、適当に言って誤魔化すとか、「つながりが悪くなったからあの部分飛ばす」などのアドリブが利くようになります。

あのリンカーンも「木を切るのに私に6時間与えられるとするならば、私は最初の1時間を斧を研ぐことに使うだろう。」と言っていた位ですので、何事も準備が大切だということですね。皆さんも、プレゼンを行う機会があれば、是非入念に準備作業を行ってみて下さい!

▼今週のPick APP!

ATOK Pad for iPhoneがリリースされました。iOS4からまだましになったiPhoneの日本語変換ですが、やはりATOKを使ってみるとその変換精度の高さには驚かされます。ただ、IMEとしての提供ではないので、ATOK Padというメモツールの上でしかこの変換機能が使えないというのがとても残念ですね。(IME機能の公開をお願いします!>Appleさん)

救いはこのATOK Padがメモアプリとしてもとても優秀です。

  • メール(PC/SMS)、Twitter、Evernoteへの投稿機能有り
  • 定型文を登録しておける
  • 起動が軽い
  • 絵文字が使える
  • メモの履歴が残り再編集が可能

つまり、何かを思いついたら取り敢えずATOK Padを起動して、タスクならToodledoにメールを送って、アイデアならEvernoteに送って、つぶやきたいだけならTwitterに送ることで、頭の中にあるものをどんどん書き出し必要な場所へと配置するところまでこのアプリ一つで実現できるのです。(同様のツールとしてはHayamemoがあり)

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今はIMEでないので他のアプリから使えない、Bluetoothキーボードからの入力に向かないなどの制約がありますが、今後のAppleの対応と、ATOKのバージョンアップに期待したいところです。

 

ATOK Pad 1.0.0(¥900) for iPhone

iPhone および iPod touch 互換 iOS 4.0 以降が必要

ATOK Pad 1.0.0
カテゴリ: 仕事効率化
価格: ¥900 App
リリース:2010/09/22

 
 

▼編集後記:
北真也前回ストーリーでシリアスな展開にしてみたところ「笑いどころが無かった(泣)」といった感想を頂いてしまいました。たまにはシリアスな展開でもと思ったのですが、あまりウケがよくなかったようなので、今後とも基本は「ベック君のおまぬけ路線」で行きたいと思います。

 
▼北真也:
仕事術をもっとカジュアルに! わかりやすさ重視の「ビギナーズ・ハック」をお届け。Blog「Hacks for Creative Life!」と勉強会「東京ライフハック研究会」主宰。