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「型」を身につけてプレゼン資料の引き出しを増やそう/ビギナーズ・ハック第12回

北真也

ベック君再起動!の巻

5時間にも及ぶメホリ先輩の集中レビューを終えたベック君はそのまま自席に戻り、少し呆然自若としていた。自分のスキルも知識も心構えも、何もかもが足りていなかった。泣きたい気持ちを抑えながら、必死でパワーポイントに向かう。文字が霞んでよく見えない。マウスを持つ手が震えてシェイプの形が定まらない。一向に作業が進まず、焦りだけが募っていった。

ベック君 悔しいな。

誰に問われたわけでもなく、ベック君は一人呟く。
心の底から出た一言だった。ただただ悔しかった。

不意に肩を叩かれ、振り返った先にラシタさんがいた。

ラシタさん 行くぞ。

動こうとしないベック君をラシタさんは半ば強引に引っ張りだした。

 
30分後、いきつけのBar「MH」に二人の姿があった。うつむき加減で、たわいもない雑談を一人しゃべり続けるベック君。それをただ聞くだけのラシタさん。

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ベック君 昨日、うちのアパートの駐車場に猫がいてさ、それがモフモフで超かわいいの。

ラシタさん そうか。そんなかわいい猫なら、今度写メ送ってくれよ。

30分程そんな会話が続いた頃、不意に沈黙が訪れた。
沈黙を埋めようと、次の言葉を必死で探すベック君。

違うことを考え、違うことを話せば気が紛れると思ったのだが、関係のない話をしようとすればするほど昼の出来事を思い出してしまい、気が紛れるどころか、不安や悔しさといった感情がドンドンと大きくなっていった。不安が臨界点を超えたとき、別のことを話そうとするベック君の意思に反して、心の奥にある言葉が零れ落ちた。

ベック君 俺、向いてないのかな。

ラシタさん ・・・そんなことはないと思うけど?なんでそう思うん?

ラシタさんはゆっくり、やさしくベック君に聞き返した。

ベック君 せっかく自分の為にメホリ先輩が時間を割いてくれてるのに、全然上手く資料が作れなくて・・どうやってもうまくいかなくて、何度メホリ先輩をイライラさせてしまって・・・努力が足らないとか、頑張ればできるとかじゃなくて、どんだけやっても絶対自分には出来ないって感じるんだ。

ラシタさん そうか。その絶対に自分には出来ないって感じた時にベックはどう思ったん?

ベック君 ・・・よくは分からないけど、今も頭はぐっちゃぐちゃやけど・・・多分悔しかったんだと思う。

ラシタさん 悔しかったってのは何に悔しかったの?

ベック君 メホリ先輩に迷惑かける自分とか、せっかく任せてもらった仕事で全然成果が出せない自分の才能とか、能力とか・・・とにかく今の自分の出来なさ具合が本当に悔しかったんだよね。

ラシタさん なるほどな。でも、そうやって自分に与えられた仕事に対してそんだけ悩めるってのは、それだけ仕事に真剣ってことやろ?その仕事に対して現状があまりにもかけ離れてるのはショックかもしれんけど、それが乗り越えるべき壁なんちゃうかな?

ベック君 そうなんだけど、その壁を乗り越える方法が全然分からなくて。

ラシタさん 誰かって最初から何でも出来るわけやない。何度も壁に当たっては考えて、がむしゃらに努力して、なんとか壁を越えてを繰り返して成長していくもんやねん。ところで、なんでメホリ先輩がベックについて、ベックの資料作成につきあってくれたと思う?

ベック君 自分一人じゃ不安だったから?

ラシタさん そこは少し違って、最初からうまくは出来やん事は分かってたんやと思うよ。厳しいこと一杯言われたかもしれんけど、5時間も時間掛けて、ベックができるまでつきあってくれたわけやろ?そんで、今もその資料作成はベックに任せてもらったままなんやろう?

ベック君 ・・・うん。

ラシタさん もしほんまにあかんと思ったら、とっくにその仕事から外されてるで。メホリ先輩も、オオハシ課長も、ベックにその壁を乗り越えて貰いたいって思ってるんやと思うで。そうやって応援してくれてる人たちがいるのに、向いてないかも、って言う方がよっぽどあかんのちゃうかな。

ベック君は少しうつむいた状態で、静かに頷く。少しかすれた声で「頑張りたい。」と呟いた。

ラシタさん ほな、一緒に頑張る方法考えようか。まずはそうやな、SlideShareで人気のスライドを参考にしてみるとかどうかな?

ベック君とラシタさんはその夜、終電近くまで、プレゼン資料の作成や、プレゼンの技術を向上させる方法について考えた。SlideShareで人気のスライドをチェックする、会社の共有サーバにある先輩や上司の資料を参考にする、プレゼンの本やフレームワークに関する本を読む、ジョブスのプレゼンをYoutbeでチェックするなどなど、思いつく限りの方法を列挙していった。

次の日—

ベック君は少し寝不足気味だったが、気分は晴れやかだった。
誰に問われるでもなく「さぁ、やるぞ。」と呟き、パワーポイントを起動した。

 

プレゼン資料の型を増やすビギナーズ・ハック

プレゼンシリーズ第3回は前回紹介した6つのポイントの1つ「型(フォーマット)」についてもう少し掘り下げてみましょう。プレゼン資料を作りなれないうちは、白紙のパワーポイントや箇条書きだけ書かれたパワーポイントの前で何を描けばいいのか分からなくなってしまうことがよくあります。プレゼン資料を作りなれた人は皆、あまねくプレゼン資料作成の型を持っています。

まずは型を身につけよう!

実際の所、私の様なシステム屋が行うプレゼンと、学会で発表されるようなプレゼン、新商品の企画プレゼンでは、プレゼンの目的も聞き手が求めている内容も全く異なります。それぞれのプレゼンで「どの様な資料を作ればいいか」を知る一番手っ取り早い方法は、先人の資料を参考にすることです。ストーリーの中でラシタさんとベック君が挙げた以下の方法を使って、様々なプレゼン資料の型を学んでみましょう。

  • SlideShareで人気のスライドをチェックする
  • 会社の共有サーバにある先輩や上司の資料を参考にする
  • プレゼンの本やフレームワークに関する本を読む
  • (ジョブスなどの)実際のプレゼン映像をYoutbeでチェックする

特に2番目の先輩や上司の資料を参考にできる場合は、その型をそのまま持ってきて、中の文字や図だけを入れ替えるところからはじめてもいいでしょう。オリジナリティを出したいと思うのであれば、最初は内容で勝負すればよいのです。

例えば、スポーツや武道の世界にも型(フォーム)がありますが、まずはその型をしっかり学び、次第にそれを変化させて自分の型に変えていくと思います。まずは師匠の教えどおりに型を守り、次に師匠の教えである型破って様々な方法を試し、うまくいったものを組み込んで自分の型を作り上げて師匠の型を離れる、武道でいう所の「守破離」はプレゼン資料作成においても有効な方法なのです。

実際に資料を作成し自分の持ちパターンを増やしていこう

ここでいくつかの有名な型をピックアップしておきます。ここで紹介するものが全てではありませんが、今後様々な型を学んでいく際のとっかかりにして頂ければと思います。また、これらの型を身につけていくためにも、是非一度ご自身の手で資料を作成してみてください。

  • 紙芝居型
  • 画像中心型
  • 高橋メソッド型

 
紙芝居型

例えば上に説明文、下にそれを説明する図や挿絵が入っている形式。上下に説明と図を並べるパターンのほか、左右で並べる場合もあります。説明文が資料中に書かれているため、後から資料を見返し理解を高めることができるというメリットがあります。ビジネスシーンでよく見かけるタイプのプレゼン資料ですね。

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画像中心型

かのスティーブ・ジョブスは動きのある写真中心のプレゼン資料を用いて神懸ったプレゼンを行うことで有名です。プレゼン資料中に文字を殆ど使わないため、プレゼンの中で全てを伝えきる必要があります。プレゼンとしての難易度は高いですが、このタイプの資料での説明をビシッと決めるとかっこいいですね。

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高橋メソッド型

「でかいプレゼン」で有名な高橋メソッドです。画像や図を一切使わずに”やたらにでかいフォントサイズ”の文字だけで構成します。言いたいこと、伝えたいことが直球ストレートで聴衆に届きます。勉強会などのLT(ライトニングトーク)で良く用いられる形式です。

スライド6

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最後に

今回はプレゼン資料作成における「型」を学ぶ方法と、いくつかの型について実例を交えて紹介致しました。プレゼンの型を身につけ、自分の「引き出し」にするためには、実際に資料を作ってみるほかありません。是非挑戦してみてくださいね。

次回はプレゼン発表のビギナーズ・ハックを取り上げたいと思います。ストーリーでもいよいよベック君がプレゼンの場に立ちますので、そちらもあわせて乞うご期待!

 
▼今週の一冊:
発売から3日で5万部を売り上げたという『モレスキン「伝説のノート」活用術』。この本を読んで以来、自分の頭の中でノート術がガシガシ組み替えられています。特にお気に入りはMoleskineに関する逸話とユビキタスキャプチャに関する詳細な解説!僕自身、自分の記憶(特に思い出)を残すことにとても執着している人間なので、堀さんのやり方、考え方にはとても共感を覚えるところがありました。

この本はMoleskineという一冊のノートのノウハウ本ではありません。この本が語るのはMoleskineと人生を共に歩み、より豊かな人生を送るための方法であり、自分の人生をとても大切に生きるための人生哲学なのです。私は本書を読んでいる途中からMoleskineに自分の考えていることや日々の出来事を書き込みたくてウズウズしてしまいました。恐らく、日記や手帳を書くのが苦手という人はこの本を読むことで驚くほどにその抵抗が取り払われるでしょう。個人的には現時点で2010年最高の一冊ですね。

モレスキン 「伝説のノート」活用術~記録・発想・個性を刺激する75の使い方
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ダイヤモンド社
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おすすめ度の平均: 3.5

1 アマゾンには☆ゼロという評価がない。
5 モレスキンを使えきれてない人にお勧めです
5 カスタマイズに脱帽
5 ビジュアルと共に使い方が紹介されていて面白かった
5 モレスキン以外でも使えるノート術

 
 

▼編集後記:
北真也
前回、前々回から引き続き東京ライフハックVol.2の募集を継続しております。今回のテーマは「読書」で、シゴタノメンバーの倉下さんの講演、グループワーク、ライトニング・トークなどを予定しています。もしかすると、あの人やあの人も来る・・・かも。 9月26日(日)14:20から渋谷にて開催致しますので、ご都合の合う方は是非お越し下さい!お申し込みはこちらのページで。

 
▼北真也:
仕事術をもっとカジュアルに! わかりやすさ重視の「ビギナーズ・ハック」をお届け。Blog「Hacks for Creative Life!」と勉強会「東京ライフハック研究会」主宰。