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ボトムアップの罠



大橋悦夫セミナーを開催するときの話。

  • 「これはセミナーに使えそうだ」ということで「ねた」をせっせと集めていき、
  • 日程が近づいたら集めた「ねた」を整理して、当日の内容を組み立てていく。

こういうボトムアップなやり方は一見良さそうなのだが、致命的な難点がある。

それは、「ねた」を集めすぎてしまうこと。

まず、伝えたいメッセージを決める

「ねた」を集めている間は全体の構造が見えないために、その不安を解消したい気持ちも手伝って、後からふり返ると全く役に立たない「ねた」でも「これも使えるかも?」と、どんどん取り込んでしまう。

その結果、

  • 多すぎる「ねた」の整理に時間をとられ、
  • 集めた「ねた」にほんろうされ、
  • 伝えたいメッセージがあいまいになり、
  • その立て直しに手間取り、
  • せっかく集めた「ねた」を使い切れなかったという「損をした気持ち」にさいなまれたまま、
    セミナー当日を迎えることになる(この気持ちは要するにサンクコストだ)。

従って、セミナーをやるとなったら、伝えたいメッセージを最初に一行で書き表しておくこと

次に、それがもっとも効果的に伝わるような構成案(骨組み)を作ること。

ここまでできて初めて、「ねた」を集め始めてよい。

むしろ、ここまでできていない段階では「ねた」を集めることは本来はできないはずなので、もしできるとしたら、それは単に、おもしろい「ねた」を見つけたからとにかくこれをシェアしたい、という欲求ドリブンな行動にすぎない。

伝えたいのは自分の外にある「ねた」ではなく、自分の内にあるメッセージである。そのメッセージを過不足なく伝えるうえで、集めた「ねた」が文字通り「ねた」になるにすぎない。

このことはセミナーに限らず、文章にも当てはまる。

とはいえ、最初に「伝えたいメッセージ」を決めるうえでは、ボトムアップのプロセスが役に立つ。

注意すべきは「ねた」に主導権を持って行かれないようにすること。

まとめ

全体の流れをまとめると次のようになる。

  • ふだんから気になることを「ねた」として集めていく
  • ある程度たまったところで整理する
  • そこから自分の伝えたいメッセージをあぶり出す
  • 集めた「ねた」はいったんリセットする ← 重要
  • メッセージがもっとも効果的に伝わるような構成案(骨組み)を作る
  • 伝える上で「ねた」になる「ねた」を集める

以下略。

ボトムアップで「ねた」をまとめる上ではやはりKJ法、といえばこの一冊。