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クラウド時代のメモ術・ノート術入門/ビギナーズ・ハック第1回

北真也
皆さん初めまして、Hacks for Creative Life!というブログを主宰している北 真也と申します。これから金曜日に「ビギナーズ・ハック」をテーマに連載を書かせて頂きますので、よろしくお願いします。

第一話「ベック君早速つまづく、の巻」

ここはST電機の第1ソリューション事業部。配属されたばかりの新人ベック君の胸は高鳴っていた。この日のために新しいスーツを仕立て、ちまたで噂の iPhoneを購入し、新書“SEの教科書”も読破した。ビジネスマンとして、エンジニアとして、これから始まる自分のキャリアに思いを馳せるとき、胸が熱くなるのを抑えられなかった。


オオハシ課長
それじゃぁベック君、まずはPCのセットアップをして、このマニュアルに書かれている通りに設定してくれるかな。このURLからメールの申請ができるから、取り敢えずそこまで出来たら声を掛けて。

ベック君 は、はい!


──1 時間後。

ベック君は当惑していた。PCのセットアップまではうまくいったのだが、PCをうまくネットワークにつなぐことができなかった。マニュアルに書かれたIPアドレスの設定を行っても、インターネットはおろか、部内の共有サーバに接続することもできない。仮にもSEの卵として配属されたのにネットワーク接続すらできない・・・ベック君は完全に自信を失いかけていた。刻一刻と時間だけが過ぎ、何も出来ぬまま1時間が経とうとしたその時──

メホリ先輩 あれ、ベック君どうしたの? なんか困ってるの?

ベック君 実は・・・


ベック君は事情を説明し、ネットワークの設定画面をメホリ先輩に見せて教えを請うた。


メホリ先輩
あぁ、サブネットマスクの第3オクテットが255になってるね。ここ254だよ。ちゃんとこの設定もマニュアルに書かないとだね~。自分で考えるのはいいことだけど、分からないときは周りの人に聞いていいんだよ。新人のうちはじゃんじゃん聞きなよ!


メホリ先輩はそう言うと、ポケットからオレンジ色のメモ帳を取り出し、さらさらとネットワークの設定を細かにメモ帳に書き出した。


ベック君
メホリ先輩、何ですかそれ?

メホリ先輩 RHODIA(ロディア)っていうメモ帳だよ。

メホリ先輩はそういうと書き込んだ先頭の紙をビリッと破ってベック君に手渡し、「じゃ、頑張って」と一言残して自席に戻っていった。

ベック君はその紙に書かれた通りに設定を行い、無事にネットワークへの接続とメールアドレスの取得を行うことができた。メホリ先輩から貰ったメモは用済みと思いゴミ箱に廃棄した。

RHODIA(ロディア)

──それから、数日後・・・


オオハシ課長
今度、新しいプロジェクトメンバーが来るから、このPCのセットアップしといてくれるかな? ネットワークにつなぐとこまでででいいから。

ベック君 はい!任せて下さい!


ベック君ははじめての頼まれ事にうきうきしながら3台のPCのセットアップを開始した。
15分が過ぎた頃・・・


ベック君
あれ・・・またネットワークにつながらない。


2度目の質問をメホリ先輩にした時に「ははは、2度までは聞いてもいいけど、その次はないからね」とにこやかに刺されたベック君。半泣きになりながら、帰り道にRHODIAを買いに走ったのでした。

Rhodia/ロディア ブロック No11【方眼】 cf11200
Rhodia/ロディア
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メモ/ノートのビギナーズ・ハック

いきなりこんなはじまり方で驚かれた方も多いと思いますが、本連載「ビギナーズ・ハック」では、新人ベック君が直面する課題を解決する形で記事を書いていきます。

初回は新入社員に限らず、昨今多くの人にとって課題となっているメモ/ノート術を取り上げます。

まず、今回のお話の中で“最初にネットワークへ接続できなかったことはベック君の過失ではない”という点にご注目ください。組織の中には少なからず暗黙知や不文律が存在しているもので、今回の場合であれば皆が「サブネットの第3オクテットは254」ということを知っていたが為にマニュアルへの記載が漏れてしまったのです。これにより、事情を知らないベック君の作業は完全にストップするという事態に陥りました。

ベック君がこのお話の中で改善出来る点は以下の2点です。

  1. 自力で解決できないことは割り切って周りに助けを求める
  2. 一度教えて貰ったことは記録を取って同じことを何度も聞かない

1点目については、その判断を行うためにも経験や知識が必要となりますので、ひとしきり調べて考えて駄目な時にはメホリ先輩が言うように新人の特権を使ってじゃんじゃん周りに聞くしかありません。そうやって学びながら人は成長していくわけですし、そこで聞かなかったがために進捗が遅れることの方がよっぽど周囲に迷惑をかけてしまいます。人に聞くべき内容かを判断することも、他人から必要な情報を聞き出すこともれっきとしたビジネススキルなのです。

2点目は、要するに人から教わったことをメモやノートに記録を残して、同じ事象に出くわしたときにその情報を再利用できるようになるということです。こちらは今からでも取り掛かることができそうですので、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

メモ/ノートのシステムを構築する

「メモを取って必要な時にその情報を再利用する」と言ってしまえばなんだか簡単な事のように聞こえるかも知れませんが、真っ先に次の様な壁に直面するでしょう。

  • 何をどこまでメモに残せばいいのか?
  • 残したメモを散逸・死蔵させずに再利用可能な形で保存するにはどうすればいいか?

これらの疑問に明確に答えてくれる本を2冊紹介しておきます。

» 「結果を出す人」はノートに何を書いているのか

「結果を出す人」はノートに何を書いているのか
美崎 栄一郎
ナナ・コーポレート・コミュニケーション ( 2009-09-11 )
ISBN: 9784901491938
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こちらの本では母艦ノート、メモノート、スケジュールノートの3冊使い分けの手法について書かれています。特に大切な情報はメモノートから母艦ノートに移し替えられるため、メモの散逸や死蔵を防ぐことができる仕組みをとっています。この常に持ち歩く断片情報が書かれているメモノートと、その中でも重要なものを抜き出して,考えをまとめたりアイデアをふくらませたりする母艦ノートという組み合わせは、情報の取り漏れも少なく、それぞれのノートの長所を活かした理想的な組み合わせと言えそうです。

母艦ノート、メモノート、スケジュールノートの3冊使い分けの手法

» 情報は1冊のノートにまとめなさい

情報は1冊のノートにまとめなさい
奥野 宣之
ナナ・コーポレート・コミュニケーション ( 2008-03-12 )
ISBN: 9784901491761
おすすめ度:アマゾンおすすめ度




こちらの本では100円のA6ノート一冊に全ての情報を集約する方法について書かれています。どんな情報でも常に一冊のA6ノートに集約することで、メモの散逸を防ごうというアプローチです。また、ノートの見出しをPC上でインデックス化することで検索性を高め、メモの死蔵を防ぐ工夫についても紹介されています。この方法を用いた場合、情報を探す先が“全ての情報を集めた”A6ノートに限定できることから、情報の検索コストが引き下げられる点がメリットとなります。

100円のA6ノート一冊に全ての情報を集約する方法
ご紹介しました2冊の本は異なる運用スタイルについて書かれたものですが、以下の様な点が共通的に述べられています。

  • すぐにメモを取れる状態を作っておく
  • 取ったメモを再利用可能な形に整理する

どの様な運用スタイルが自分にあっているか分からない場合でも、まずはメモ帳を常に携帯し、時系列でいいので簡単に整理を行う習慣を身につけると良いでしょう。

母艦ノートとしてEvernoteを使用する

さて、ここでもう一歩踏み込んでクラウドサービスをメモ/ノートに使用できないかについて検討してみましょう。ここではシゴタノ!をお読みの皆さんにはおなじみのEvernoteを母艦ノートとして使用し、iPhoneを組み合わせることでアナログとデジタルを融合させたメモシステムを作ってみたいと思います。

メモを取る入り口はiPhoneアプリのEvernoteやHayamemo、FastFingaなどのiPhoneアプリを使ってもいいですし、手書きでRHODIAやA6ノートにメモをとって写真データとして取り込むというやり方でも良いと思います。大切なことは、“どの入り口を通ったとしても最終的にはEvernoteに行き着くシステムを作る”ところにあります。

どの入り口を通ったとしても最終的にはEvernoteに行き着くシステムを作る
Evernoteを使えばノートやタグで縦横無尽にメモを整理することができますが、いきなりこれらの機能を駆使して情報を整理するというのも難しいと感じる人も多いかと思います。

そういう場合もまずは「仕事メモ」などのノートブックを作成し、そこに情報が全て集まっている状態を作っておくだけで「ここを探せば必ず見つけられる」という安心感を得ることができます。

メモがそれ程多くなければ、一箇所に集めて時系列で追いかけるだけでも十分メモの死蔵を防ぐことができます。
では実際に手書きのメモをEvernoteに取り込んで、ざっくり整理する手順を見てみましょう。

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1.まずはRHODIAでメモを取ってみましょう

まずはRHODIAでメモを取ってみましょう
2.次にiPhoneのEvernoteアプリを使って画像メモを残しましょう
筆者はEvernoteに取り込んだ時点でRHODIAのメモを捨ててしまいます。

iPhoneのEvernoteアプリを使って画像メモを残しましょう
3.最後に、保存された画像メモを「仕事メモ」ノートブックに分類して終了です!
慣れてきたら是非タグ付けにも挑戦してみてくださいね。

とてもシンプルな手順かもしれませんが、何もせずにメモを放置するよりも後からの確認が断然楽になります。今までEvernoteを使ったことがないという方は、まずはこういった簡単な使い方から始めてみてください。

Evernoteをもっと使いこなしたい!という方は、シゴタノ!で堀さんが連載している「Evernoteの育て方」や、筆者がgihyo.jpで連載している「ただのメモでは勿体ない!Evernoteに人生を記録しよう」なども参考にして頂ければと思います。また、Evernoteといえば「Evernoteハンドブック」。

基本的なところからマニアックなところまで、Evernoteユーザのバイブル的存在といえる本です。大橋さん、堀さん、佐々木さんのノウハウが結集した濃い一冊です。

まとめ

今回の内容をまとめれば、

  • 大切なことをメモに残しましょう
  • 必要な時に情報を再利用できるよう整理しましょう

という当たり前のことなのですが、分かっていてもなかなか最初の一歩が踏み出せないということもあるかと思います。
そういうときは、まず

  • メモ帳を常に携帯する
  • 取ったメモを時系列でいいので整理する(Evernoteをオススメ!)

といった簡単なところから始めてみられては如何でしょうか?

▼編集後記:
北真也改めまして、はじめましてHacks for Creative Life!の北 真也(@beck1240)です。
東京ライフハック研究会先日立ち上げた「東京ライフハック研究会」主催の勉強会を7月25日13:30~渋谷で行います。特に参加資格等はありませんので、興味がある方は是非こちらからお申し込み頂ければと思います。









▼北真也:
仕事術をもっとカジュアルに! わかりやすさ重視の「ビギナーズ・ハック」をお届け。Blog「Hacks for Creative Life!」と勉強会「東京ライフハック研究会」主宰。