『書くための名前のない技術 case 1 佐々木正悟さん』という本を読みました。
一番印象に残ったのは「理想を持たずに書く」という佐々木さんの言葉。
多くの書き手が「こんなことを書いたらバカにされるんじゃないか」とか「こんな書き方だと認めてもらえないんじゃないか」といった(多くの場合)幻想に囚われることで、勝手にハードルを上げて、書けなくなります。
そんなときにもたらされるアドバイスとして「割り切る」というものがありますが、今回のインタビューを読んでいて、佐々木さんは割り切っているわけではない、と感じました。
「割り切る」わけではない
「割り切る」には、妥協するというニュアンスがつきまといます。書く前に抱いていた理想の一部または全部を手放すことを迫ってくるのです。
当然、そうやすやすと割り切れるわけもなく、結局書きたいのに書けないまま深い悩みの淵に沈み続けることになります。
この淵から脱するためには、そもそも淵に足を取られないようにするには、どうすればいいか?
それは、「書く」に対する認識をリセットするしかないでしょう。
「書く」という行為を「自らの思いの丈を、自らの言葉で、精確な描写でもって、誰にでも伝わるような比喩を駆使しつつ、誤解なく、広く、多くの人に、知ってもらう」などという濃厚で、リッチな、全部入りの状態から、「考えついたことをとにかく人に知ってもらう」という、これ以上そぎ落とせないくらいのあっさりとした、プレーンな、原形になるまで煮出し切る。
リッチな状態の「書く」の中からプレーンな「書く」という行為のみを切り出すイメージです。
ちょうどWordで文字列をコピーした後に「形式を選択して貼り付け」で「テキスト」を指定するように。
根底にある原形に迫る
いま自分が抱いている「書きたい」の根底にはどんな原形があるのか。
それを切り出しさえできれば、ほかが欠けたとしても書けたものに対する満足度は低くはならない、というより、とにかく書き上げることができてしまうはずなのです。
Tak.さんと佐々木正悟さんが登壇するセミナーを開催します
7月13日(土)に、本書の対談コンビであるTak.さんと佐々木正悟さんが登壇する少人数制のセミナーを開催します。
当日のテーマはアウトライナーですが、本書のテーマである「書くための名前のない技術」についても著者本人たちに直接疑問をぶつけられるチャンスですので、この機会にぜひ!