問題です。弱小フリーランスには少なくて、新卒正社員にはある程度備わっているもの。それはなんでしょう?
・・・ピンと来た方はするどい。ズバリ「信用」です。
クレジットカード入会、ローン、引っ越しと、目に見えずとも「信用」は多くの人の転機を助けてくれるもの。もちろん、勤続年数の少ない社員の信用にも限りがありますが、同じキャリアであれば、大体の場合社員の信用が勝るでしょう。
ならば、独立する前に会社の制度を利用しきってから卒業したほうが賢いというもの。
将来フリーランスとして活躍したいと考えていらっしゃる方が、太く長く生きていくために会社員時代からしておきたい下準備について、(私自身の「こうしておけば良かった!」という反省も込めて)ご紹介したいと思います。
1.引っ越す
フリーランスの仕事を軌道にのせるまでには少なからず時間がかかると思います。その間の期間を別の仕事で埋め合わせるとしても、使えるお金は今よりずっと少なくなる人が多いはず。
自宅を買ってローンを支払っておらず、賃貸住宅にお住まいの方は、退職前にもう少し家賃を軽減できないか、改めて引っ越しを検討されることをおすすめします。
(自宅を事業所とする場合には、引っ越し先を探す時にその旨不動産会社の方に伝えるのをお忘れなく。)
2.借金を無くす/クレジットカードを作る
事業に関わりのない借金を抱えたまま見切り発車的に起業し、計画通り進まず借金を返せない、なんて笑い話になりません。身軽なのがフリーランスのいいところなんですから、事業に不要な借金はまず無くしましょう。また、相反するようですが、事業専用のクレジットカードが1枚あると便利です。ここから、できるだけ事業に関わる経費を引き落とすようにすれば、あとでバラバラに散らかった領収書と格闘する手間を減らせます。フリーになりたての場合、審査の厳しいクレジットカードは作れなくなるので、ぜひ在職中に。
3.顔写真付きの公的な身分証明を準備
免許証やパスポートをお持ちであればそれで問題無いのですが、フリーランスになると、たびたび顔写真付きの身分証明書を提示する機会が増えます。(おそらく、どなたも国民健康保険証は持っていると思いますが、こちらには顔写真が入らないため、身分証明のさらなる提示を求められることがあります)退職前に、ひとつ作っておくと便利です。
4.応募する
「そや。応募いうても、懸賞はがきを出すような応募ちゃうで。自分自身を世の中にアピールすんねん。起業支援の団体に事業プランをプレゼンしてもええし、資格試験受けてもええし、もう何でもええんや。とにかく、自分の才能が他人に判断されるような状況に身を置いてみるんや。」(『夢をかなえるゾウ』P297)
引っ越しをはじめとした信用不足は、他の人に頼ったり信用会社を利用することでなんとかなります。しかし、これだけは、多少信用や金銭があったところで手に入りません。だからこそ私は、フリーランスになる前にやっておくべき事で一番大切だと思っています。
応募することで、フリーランスにとって必要な技術と目標、そして人脈の3つすべてが手に入るのです。
自分がなにに応募するのであれ、それが人の目を介すものならリアクションが返ってきます。無反応も込みでリアクションです。たとえばビジネスプランのコンテストに応募して、あえなく落選したなら、それは審査員が他の作品と比較してよりよいものを選んだということ。さらにプランを磨くか新しいものを作って、魅力的にする必要があるのは明白ですね。ここに技術力向上のための努力と、目標が生まれます。
さらに、世の中に自分を知ってもらうことは、新たな人脈につながります。たとえ、一回のチャレンジではすげなくされても、二度三度と回を重ねるうちに、スキルの向上を感じ取ってもらえるかもしれません。一緒の目標に向かって努力する仲間との出会いがあるかも知れません。
このように、応募には、結果如何を問わず、自分の力を向上させる要素がたっぷり詰まっているのです。
しかし、なぜ私たちはひとつの会社にとどまるなかで「応募」をおろそかにするのでしょうか?
もっとも多い答えは、恐らく毎日の仕事が忙しいとか、日常の作業で精一杯というようなものだと思います。人生を良くしようと考える人ほど頑張り屋さんだったりするので、きっと読者の方も、こんな状況で「私はどうしたらいいんだ」と悶々とされるのではないでしょうか。
でも、もう少しだけ考えてみてください。「頑張っても失敗するんじゃ意味がない」とか「この年齢で今更昔の夢を追ったって、モノにならない」「応募なんてやって、本当に意味あるのかな」なんて、ふと脳裏をよぎりませんか。
もしあなたが、少なからずこういう考えに囚われているように感じたら、転職でも休養してもいい、手段を問わず必ずフリーランスになる前に、この考えの鎖を断ち切ってください。
フリーランスは自分が商品。自分の経験豊かさ、人間性までもが金銭面、ひいては生活の質に直結します。もしあなたが仕事を頼むとしたら、雑談が面白くて教養豊か、コミュニケーション力豊かな人と、商談でのビジネストーク以上の話が出来ない人と、どちらとおつきあいをしたいと思うでしょうか?
企業に勤めていれば、自分の存在は会社の看板で隠せます。しかしフリーランスとなればそうはいきません。応募し続けることで、その結果を問わず自分を魅力的にしていくことは、社員時代から身につけておくことで、将来のあらゆる場面で助けてくれる、素晴らしい習慣だと私は思います。