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メモ処理ワークフローについて


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倉下忠憲

「なんでもメモせよ、ともかくメモせよ!」

と、まるで鬼軍曹のように知的生産技術系の本では語られることが多いですね。

忘却したものを取り戻すのは非常に困難なのに対して、記録したものを捨てるのは極めて簡単だ、という非対称性に注目すれば、このアドバイスはもっともだと言えます。

あと、いろいろメモしていると脳の負荷も減るのでバッチリですね。

しかし、問題はそうして作成したメモの処理です。これが案外簡単ではありません。

GTDのワークフロー

GTDというタスク管理システムには、有名な情報処理ワークフローが実装されています。



inboxに入っているものを、仕分けしてそれぞれを適切な場所に振り分ける。わかりやすい流れです。

この際、鍵を握るのは「これは何か?」の問いです。この自問に対する答えに応じて、振り分け先が決定されます。逆に言えば、この問いにうまく答えられない限りは振り分け先を決められません。

よって、この問いをもう少し掘り下げてみましょう。

自問の言い換え

「これは何か?」は、その情報の性質や属性を明らかにするための問いです。

  • 「これは何か?」→「来週の予定だ」→「カレンダーに登録しよう」

こういったことです。この流れをじっと見つめると、一つのことがわかります。それは「これは何か?」という問いは、むしろ「私はこの情報をどのように扱いたいか?」という問いに言い換えられる、ということです。

  • 「私はこの情報をスケジュールとして扱いたい」→カレンダーに登録
  • 「私はこの情報をプロジェクトとして扱いたい」→プロジェクトリストに登録
  • 「私はこの情報をゴミとして扱いたい」→ゴミ箱に入れる

そして、この言い換えられた自問は、アイデア・メモの処理においても有効です。

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複数のアイデアメモが溜まっているとして、それを処理する場合は、「私はこの情報をどのように扱いたいか?」を考えます。

もし、「今進めているプロジェクトに使いたいな」と思うなら、そのプロジェクトのファイルに書き込んでしまえばよいでしょう。

もし、「来週分の連載に使いたいけど、そのとき思い出せればいいか」と思うなら、ネタ帳を作ってそこに書き込めばよいでしょう。

もし、「これにアイデアを追記していけば、書籍の企画案として使えるかも」と思うなら、普段よく目にする場所にフォルダやノートブックなどを作り、そこに入れておけばよいでしょう。

もし、「面白そうだけど、使えるかどうかはわからない」と思うなら、そのまま放置しておけばよいでしょう。

人が抱えるプロジェクトや企画は、緊急度や重要度に違いがあります。当然それを補佐するリストの在り方も異なってしかるべきです。それを一様に解決しようとすると、不具合が生じかねません。

大切なのは、たくさんのリストを作ることでもなければ、「うまくいっている人」のやり方を真似することでもありません。自分がそれらの情報をどう使いたいと思っているのかであり、実際にそれをどう使うのかの現実です。それを起点にしない限り、適切な情報運用環境は構築できません。

さいごに

もちろん最初は、「私はこの情報をどのように扱いたいか?」に対して適切な答えを返せないことも多いでしょう。うまく答えが出なかったり、間違った答えを出してしまうこともあるかもしれません。それは仕方がありません。

とりあえずリストを作ってみて、それがうまく運用できるかどうかを確認し、うまく運用できないならどこに問題があったのかを考える。その繰り返しで、少しずつ情報運用環境はバージョンアップしていきます。もっと言えば、それぞれの人に最適化された情報運用環境ができあがっていきます。

今回例としてあげたリストたちは、私の環境を念頭においたものです。他の人には他のリストがありうるでしょう。もっと多いかもしれませんし、もっと少ないかもしれません。それはどうだっていいことです。

重要なのは、「どんな風に保存してあれば、自分は嬉しいのか」を見つめ続けることです。それさえできていれば、少しずつ使い勝手のよいリスト環境が作れることでしょう。

▼今週の一冊:

先週に引き続き。森先生は、一時間なら一時間ぐっと集中して同じ作業をするのではなく、もっと短いスパンで作業をして、次々に切り替えていく、という手法を実践されているようです。本人曰く、疲れやすく、飽きやすいので、それに最適化していった結果そうなったとのこと。私はわりと1時間みっちり集中型なのですが、一度森スタイルを真似してみようかと思っています。マルチタスクぎみの人は、きっと勇気づけられる本です。


▼編集後記:
倉下忠憲



急にやることが増えてきました。できるだけ一つひとつの「やること」の負荷を小さくしようと改善中です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。