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2018年のレバレッジ・リーディング


倉下忠憲2006年に発売された本田直之さんの『レバレッジ・リーディング』という本があります。ビジネス・実用方面における読書法を説いた一冊なのですが、10年以上経った現在でも有用な手法が紹介されています。


なんなら電子書籍が普及してきた現代では、よりいっそう効果的と言えるかもしれません。

レバレッジ・メモ

『レバレッジ・リーディング』のキモは、「レバレッジ・メモ」です。簡単に言えば、本の要約を抜き書きしてつくる厳選読書メモでしょうか。

大まかな手順は以下の通り。

  • 1.本を読み、重要なところに線を引く(印をつける)
  • 2.レバレッジメモに要点を抽出し、繰り返し読む
  • 3.実践で試す
  • 4.レバレッジメモをブラッシュアップし、繰り返し読んで身につける

紙の書籍であれば、線を引くためにペンが必要となりますし、また要点を抽出するために書き写しをしなければなりません。その点電子書籍ならば、マーキングもアプリ上でそのまま行えますし、ストアによってはそうしてハイライトした箇所を後から一覧することも可能です。



そこから普段使うメモアプリ(あるいはノートアプリ)にコピペすれば、あっという間にレバレッジメモの完成です。EvernoteやWorkFlowy、そしてScrapboxといったツールがそうしたメモ書きの保存場所には適しているでしょう。

メモの再編

上記のようなレバレッジメモが溜まってきたら、それらのメモをテーマごとに分類することも勧められています。そうすれば、情報を後から利用しやすくなることは間違いありません。しかし、あまり手間をかけるのも本末転倒です。

気をつけたいのは、分類することに時間や手間をかけすぎないことです。本一冊のメモを携帯しながら、それぞれの箇条書きについて、余白にカテゴリーをメモしていきます。それがたまってきた段階で、各本のファイルを開いて、切り取り、カテゴリーのファイルを内に貼り付けていきます。

このような移動・編集作業それ自体にも記憶強化の意味合いはあるでしょうが、便利なデジタルツールであれば、「余白にカテゴリーをメモ」した段階で、それがカテゴリ分けとしても機能してくれます。つまり、「タグ付け」です。

たとえば、WorkFlowyであれば、項目に#か@でカテゴリをメモしておけば、それが「カテゴリ別のメモ」を引っ張り出すトリガーとなってくれます。さらに、同一のメモを複数のカテゴリにも入れられるメリットもあります。



対して、EvernoteやScrapboxの場合は、一項目一ノート(ページ)としないとこのやり方はできませんので、それが煩雑に感じられるなら「本ごと」と「カテゴリーごと」のそれぞれのノート(ページ)を作っておくのもよいでしょう。

デジタルならではの

というように、デジタル読書+デジタルノートでのレバレッジメモはたいへん簡単に実現できますし、それがクラウドツールであれば「いつでもどこでも」携帯できるのでたいへん便利です。読書を「効率化」させる有効な方法ではあるでしょう。

しかし、です。もう一つ、大切なポイントがあります。

『レバレッジ・リーディング』第4章の「一度読んだ本は二度と読まない」の項では以下のように述べられています。

しかし、名著の中の名著は別です。たとえば、デール・カーネギーの『人を動かす』『道は開ける』(創元社)は、一流のビジネスパーソンの間で、なんと三○年以上も読み継がれています。このような良書は、時間が経ってから読むと、まったく違うところに感銘を受けたりするものです。わたしも折に触れて読み返していますが、初めて読んだ二三歳のときと今では、線を引くところが全然違います。

この変化が読書の面白さの一つではあるでしょう。

重要だと感じる部分に線を引き、それを抜粋・要約してメモを作って、それを何度も読み返して血肉にする行為は大切かもしれません。しかし、一方ではその繰り返しの読書が、ある時点の自分が「重要だと感じる部分」にのみ限定されてしまう怖さもあります。ミニ・フィルターバブルです。

私も『知的生産の技術』という本を、それこそ何度も読み返していますが、やはり時間が経つと感銘を受ける部分、刺激を受ける部分は異なっています。それは、一つの素晴らしい体験だと断言して良いでしょう。そして、そのような体験をするためには、やはり「一度読んだ本を何度も読む」ことが必要となります。

ここで思い出したいのがデジタル書籍(電子書籍)です。

デジタル書籍なら、何十冊でも何百冊でも持ち歩くことが可能です。極端に言ってしまえば、本の内容を「携帯」するために、わざわざ要約する必要はありません。つまり、デジタル書籍本棚+そこでつけたハイライトのすべてが「レバレッジメモ」として機能してくれるのです。

「名著の中の名著」を読み返すために家に帰る必要も、本棚をひっくり返す必要もありません。すぐさまその本を手に取れる環境がそこにあるわけです。そう考えてみれば、デジタル環境というのは単にレバレッジメモを作りやすくなるだけでなく、名著を「折に触れて読み返す」こともしやすくしてくれるのではないでしょうか。そして、案外こちらの方が重要なのかもしれません。

さいごに

ツールやガジェットの環境によって、情報整理・管理の手法は必然的に変わってきます。

冒頭でも述べたように「レバレッジメモ」の作成は、現代でも大いに有用ですし、デジタルツールはさらにそれを助けてくれますが、メモ作成以外の読書にももう一度光を当ててみてもよいのかもしれません。


▼今週の一冊:

今夢中になってガシガシ読んでいる本ですが、人を育てる立場にある人、人を導く立場にある人は必読の一冊です。そして、意外なことに「自分らしい生き方」をしたいと望む人には、かなり刺さる一冊になるはずです。


▼編集後記:
倉下忠憲



はい。絶賛体調不良中です。抗生物質を飲んでおります。とりあえず、こうして原稿を書けるくらいには復帰してきたということで、ひとつ。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。