つねづね感じていることがあります。それは、方法や近道を知ることに費やすエネルギーを、それらを作ることに転換できたらどれほど良いか、ということです。
問題に直面し、これを解決するために何か良い方法がないかを探すのは自然なことです。問題解決という明確な目標が設定されますから、自然とフォーカスも定まります。必要としている解決策を効率よく見つけ出すことができるでしょう。
でも、理想はやはり問題に直面する前から解決策を知っておくこと。そうなると、問題がないのに解決策を探すことになります。
それは次のような誘いに乗ることを意味します。
仮に○○という問題に直面したら困るよね。そこで、事前にこんな方法を知っておくと便利!
否定の余地はありませんから、その方法が今すぐに必要かどうかはさておき、知っておくと便利な方法や近道を集めることに躍起になりがちです。
フォーカスが定まっていませんから、あれもこれもと際限なくどんどん取り込んでいきます。そして、方法や近道を集めること自体には「あとで仕事の役に立つ」という大義名分がありますから、それをしている限りは仕事をした気になってしまいます。
でも実際には仕事はいっさい進まず、時間ばかりが消費されていくことになります。
さらに悪いことに、この「方法コレクション」はとても楽しい。「あんなこと」や「こんなこと」がいとも簡単にできてしまいます。そんな“マジック”に心惹かれてしまうのは無理のないことかもしれません。
とはいえ、これは身体にいいからという理由でさまざまなサプリメントを次から次へと買い求めることに似ています。サプリメントはあくまでも補完するもの(supplement)ですから、本体に目を向ける必要があるのです。
ノウハウに振り回されそうになった時に思い出したいたった1つの質問
そもそも、こうした“サプリメント”が求められる背景には、年々仕事が手強くなっているためだと考えられます。「伝票を整理する」とか「飛行機の予約をとる」といったやればすぐに終わる仕事と違い、やり方によっては短時間で手際よく片付くこともあれば、時間をかけた割にはいっこうに進まないこともある仕事に囲まれて、何とか打開策が求められているのです。
そこで真っ先に確認すべきは、自分はいま何に一番困っているか? です。
それがわからないままインターネットの海に漕ぎ出していてもいっこうに目的地にたどりつけないでしょう。
この質問は、さまざまな局面で使うことができます。たとえば、新しい企画を考えるとき、仕事の段取りを組むとき、相手に何かを誤解なく伝える必要があるとき。
特に、抱えている課題や仕事を整理して、何からどのように取り組んでいくかを決める時には効果を発揮する質問です。
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後半は失速していきますが、前半は「この本を買って良かった♪」と思わせるに足る、力強く説得力のある展開を見せます。
「つまり、こういうことですね。私たちは行動を変えようとするより、知識を増やそうとする。知識を得るのはたやすいから。そして、ネガティブな考え方が、得た知識を活用しようとする意欲をくじいてしまう」
タイトルは、『なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本』。実行できない理由は次の3つだそうです。
- 情報過多
- ネガティブなフィルター装置
- フォローアップの欠如
この3つの理由は本書の冒頭付近、16ページと17ページの見開きに書かれています。ある意味、本書のすべてはこの2ページに集約されているといってもいいでしょう。以降、この内容を詳しく説明するために残りの100ページあまりが費やされます(全127ページ ← 薄い!)。
でも個人的には75ページまで読んだら、いったん本を閉じて行動を開始したほうがいいと思います。ここまでで理由の1と2の説明が終わるからです。3の説明を先に読んでしまうと、おそらく行動を開始しないでしょう。
それが、「後半の失速」の理由です。
本書はなるべく早く読むことをおすすめします。理由は次の通り。
セミナーに出たり本を読んだりして、たえず新しい情報に接することが習慣になっていると、忘れることも習慣になってしまう。実践することではなく、新しいことを知るトレーニングばかりしている。すべきことの真逆をやっているわけです。
こうしている間にも、どんどん忘れていっているのですから。
行動を起こすことができて、それが一巡したら、76ページ以降を読みましょう。そこに書かれている内容が腹に落ちるはずです。
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