最近読み返している『全脳思考』に出てきた一文を読んで「そうかー」と納得していたところ、同時に読み進めている別の本でほとんど同じことが書かれていて「やっぱりそうかー」と確信を強めたことがありました。
まず、『全脳思考』ですが、以下のような内容がまずあり、
- ビジネスにおいて、われわれは正しい戦略を見いだせば、ゴールに向けて一直線に成功できると考える。
- ところが、どんなに正しい戦略を見いだしたといっても、提案書が描くように一直線に成功することは、現実にはありえない。
- 仕事上でさまざまな葛藤を経験せずして、ゴールすることはないのだ。
そのうえで、
それは、われわれは無意識レベルでは、むしろ葛藤を望んでいるからだ。
という、問題の一文に続きます。
理解できないのに分かる
なぜ「葛藤を望んでいる」のか?
これについては書き始めると長くなるので、僕なりに思い切り要約すると「そういう風にプログラムされているから」ということになります。
このプログラムを『全脳思考』では「神話」と呼んでいます。「神話」などと言われたら、もうそこで思考停止するしかありません。
いや、それでいいのです。すべてを説明し尽くそうとするところにそもそも無理がある。
そのことを象徴的に言い表した、もう1つ僕が今回納得した一文があります。
むしろ、自分の行動は自分で決定しているという思い込みを手放すと、ビジネスパーソンは重要なスキルを身につけられるようになる。
「流れ」に身を任せましょう、ということです。
でも、本当に身を任せてもいい「流れ」なのかどうかはいかにして見極めればいいのか?
未来から逆算して現在を見る
読み進めていくと、そのヒントが書かれています。
(サッカーの)名将は、未来に勝利することから逆算して現在の事象の意味を自分に問う。それに対して、凡人は、現在の事象の成否を延長して未来を調整してしまう。
もうほとんど「答え」と言ってもいいでしょう。
「葛藤」がプログラムされている理由
以上について納得していたところで、『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』を読んでいたら以下のくだりにぶつかったのです。
私たちが飲食店を営む目的は、お客様に喜んでもらうこと。そして、また来ていただくことだ。
しかし、難しいもので、店側が喜んでいただいていると安心した途端に、なぜか足が遠のき始めるというのがお客様だ。店の売り上げも比例して下がる。
では、なぜお客様は来なくなるのか? 安心すると、店側の注意力が散漫になるのかもしれないが、本当のところ、その理由は私にも、よく分からない。
ただ、はっきりと言えることは、お客様の数が減ったときに、今までと同じことをしていても、お客様は戻ってはこないということだ。これは、見方を変えるとチャンスでもある。
なぜなら、何事も上手くいっているうちは、何かを変えて、新しいことに挑戦するのが難しいためだ。こうした人間の習性は、「慣性の法則」によく似ている。ある方向に動いている物体は、新たな力を加えられない限り、一定のスピードで、一定の方向にずっと動き続けるという物理の法則だ。何も起きなければ、ずっと同じことをしていたいのが、人間なのではないだろうか。
その私たちを、新しいことに挑戦せざるを得ない状況に導くのが、実はお客様が減るというピンチなわけだ。そう考えると、「お客様が来なくなるから、何かを変えられる」のであって、さらに言えば、「お客様が来なくなるのは、以前よりお客様がもっと来る店に変えるため」とも言えると私は思う。
文中で、著者は「(お客様が来なくなる)理由は私にも、よく分からない」と書いています。
「お客様が来なくなる」などという良くないことが起きれば、その原因を分析し、再発を防止するように動きたくなるものです。
でも、それは「現在の事象の成否を延長して未来を調整」することになります。
これは、言い換えれば、「お客様が来なくなるのは、以前よりお客様がもっと来る店に変えるため」という意味づけを行っていることになります。「未来に勝利することから逆算して現在の事象の意味を自分に問う」を実践している、ということです。
「未来の勝利」にたどり着くためには、「お客様が来なくなる」という“事件”が欠かせないものであり、ここで生じる葛藤が物語を前に進めることになるわけです。
ここでとらえ方を誤ると、次のステージに進むことができずに、振り出しに戻されてしまう。一見すると良くないことのように思えますが、実はこれは“追試”であり、基本路線としては“合格”させようとする“意図”を感じます。
“不合格”となったらそこで物語が終わってしまうからです。
参考文献:
» サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ (日経ビジネス人文庫)