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仕事術としてのライフハック



佐々木正悟 これはむしろ最近になって気がついたことなのですが、私にとってタスクシュートやEvernoteを使うということは、仕事を「自分の仕事」にするために、必須なことなのです。

タスクシュートでどんな仕事であっても、「タスク」として表現してやることによって、仕事を「私の扱えるもの」に変えることができるのです。これはなんだか「気持ち問題」のようですが、それだけではないのです。

「ざっくりしたイメージ」「お任せで大丈夫ですから」

メールで見知らぬ出版社の編集さんから「企画案」とかいったものを送られてきます。はっきり言ってそれが先方にとって、あるいは一般的に「なんであるのか」を、私たち著者は、学校などで習ったわけではありません。少なくとも私はそうです。

「企画案」とか「目次案」とか「ざっくりしたイメージ」といった言葉が、本当のところなにを意味しているのか、かっちりと理解できているわけではないのです。ただ、いいかげん慣れっこになっているから、「ああ、それ」というつもりになれているだけです。しかし実は、学校で教わった「仮定法過去完了」などとくらべて社会人になってから突然目にした「ざっくりしたイメージ」は何が何だか定かでないものです。

そんな状態のまま、仕事に入っていくということは、とても不可能です。「ざっくりしたイメージ」から始まって、企画案とか目次案といわれているものを元に(これは編集さんによって形式も細かさも相当にちがっています)、5~7章立て、1節あたり4~8ページといったことなどなどが、「お任せで大丈夫ですから」という不思議な約束に基づき、「だいたい7月ごろまでに」、契約書なく原稿を書きはじめるのが、私に与えられる仕事です。

これらをすべて、私は自分の仕事に書き換えなければなりません。深く考えてみると、考えてみると容易なことではありません。しかし、後から振り返ると、わりと容易にやって来ました。

たとえば「企画案」というものを、アウトライナーツールなどを利用し、Evernoteの「該当プロジェクトノートブック」におさめ、原稿執筆は「タスクシュート」に格納する。するとたちまち、「書籍執筆」という生のままの仕事が「名古屋旅行」と同じになってしまうのです。形式的には。

  • □新幹線に乗る
  • □朝食を食べる
  • □原稿執筆

タスクシュートの中であたかもこの3つは、まったく同じように扱って大丈夫なもののようになり、実際そうできるようになってしまうのです。つまり規格化できるということなわけですが、それは私にとって常日頃から、私の一部のようになっているツールの中に規格化されるから、「私の領域下のもの」として扱えるということになるのです。

もちろん規格化したとしても、できないことができるわけではありませんが、できるかどうか微妙なものを成功させる可能性を、格段に高くします。「ざっくりしたイメージ」から「企画案に直したもの」を元に「7月ごろを目処に」なんとなくワードでものを書くだけだったら、おそらく失敗するでしょう。特に駆け出しの頃だったらそうだったでしょう。

「手帳」とか、「A4ノート」を使う利点にも、こういうことがあげられるはずなのです。その機能が素晴らしいからということもあるでしょうが、自分がライフハック的に愛用しているツールにおさめれば、その中でうまく処理されてきたいろんな物事と似たような概念にして、処理可能だからです。

そういうのは単なる安心感ではないのです。ツールごとに、仕事や資料がどう表現されるかは、かなりちがいます。たとえば付箋とタスクシュートとでは、タスクに対して非常に異なる認知機能が呼び出されます。

私はこれまで、タスクシュートやEvernoteがかなりの高機能だったので、その「高機能ゆえ」に仕事ができていた点ばかりを意識していました。それに違いはありませんが、機能とはまたべつに、ライフハックによって私が自分の何を使えば「仕事」を私の仕事にできるのか。ハッキリ自覚できたというのも見逃せないところなのです。

▼編集後記:
佐々木正悟



記事に書いたような理由で、私は自分の仕事場に、つまり自分のMacやiPhoneにですが、「自分の好きなツール」で固めています。これは、『スヌーピー』の「ブランケット症候群」(これは心理学用語ともされます)のようなものだと思われるかもしれませんが、仕事に行き詰まったときにはむしろ、「安心毛布」が機能して当然でしょう。

もしよろしければ拙著、特に東洋経済さんからの次の2作を、そういう視点から眺めていただくと、新しい発見があるかも知れません。

同僚の一言をいつまでも引きずっているとか、つい仕事を先送りにするといったことが、今の私は不思議なくらいなくなりつつありますが、私にとって少なくともタスクシュートとEvernoteは、機能的にもなくてはならないツールであるとともに「安心毛布」としての役割も果たしているからなのです。

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