PDFファイルに赤字を入れたり、ハイライトしたりするだけなら、Macに付属している「プレビュー」でも、マークアップ機能を使えば、かなり自在に書き込みができるようになっています。ほとんどの人には、これだけで十分なように思えます。それでも、私がPDFファイルで原稿の校正をするときに使うのは、SmileOnMyMac,LLC dba Smileの「PDFPen」なのです。
SmileOnMyMac,LLC dba Smileは、TextExpanderの方が有名かもしれません。私も、ときどき配信されてくるニュースレターで「PDFPen」のことを知ったのだと思います。以前は、iPad版のPDFPenを使っていました。なぜなら、Mac版は超高いからです。Apple Storeの金額を見ると、「PDFPen 8」が8,800円、「PDFPen Pro 8」が14,800円もします。そう簡単に人に勧めることもできませんし、ここでも、すごくお勧めするというわけではありません(笑)。
私は、「PDFPen Pro」版を使ってはいますが、これは、年末にあったセールで手に入れました(Parallelsとバンドルされていたのです)。
Pro版、無印版、iOS版の各PDFPenの機能と価格の違いは、公式サイトをご覧ください。
» PDF Tools – PDF Editor – Editing Software | Smile Software
Mac版が気になる人も、iPhone/iPadを持っているなら、iOS版から試してみることをお勧めします。とくに私が気に入ってるのが、「ライブラリ」機能で、これはMacの無印版、Pro版、iOS版のいずれにもある機能です。
» PDFpen 8
PDFPenの「ライブラリ」とは、よく使う記号を登録しておいて、繰り返し使えるようにする機能です。あらかじめ、たくさんの校正記号が登録されているので、これをそのまま使っても良いですし、色などを変更して新たに登録しておくこともできます。アメリカで開発されているアプリですから、校正記号もアメリカ仕様なため、そのままでは使えないものもありますが、二重線などすぐに使えるものもあります。
ペンツールを使えば、自分で記号を描けるので、それをそのままライブラリに登録して、繰り返し使えるようにすることも可能です。
ライブラリの他によく使うツールについては、冒頭のスクリーンショットにすべてを盛り込んであるのですが、「コメント」、「ノート」、「強調表示」の3つです。
「コメント」ツールを使うと、枠線のついた長方形内にテキストを入力できます。私の場合は、その名の通り編集者さんやDTPオペレーターさんへのコメントを入力するために使います。
「ノート」ツールは、「プレビュー」アプリでは「メモ」にあたりますが、コピー&ペーストしてそのまま使って欲しい、長めのテキストがある場合に使います。修正箇所のそばに赤字で書き込むのは、長くても10文字程度までにして、それ以上になる場合は、入力の手間を省くために「ノート」に入力しておきます。
「強調表示」ツールは、そのまま、強調表示したい箇所に使います。ハイライトとも言います。
ぶっちゃけ、紙に直接書いた方が早いですし、この程度のことなら「プレビュー」でも十分かもしれません。校正作業が、「内容を校正する」という本来の作業以上に大変に思えようと、PDFPenのような高機能なツールを使うのには理由があります。
それは、私が元DTPオペレーターだったからです。まだ、デザイナーもコピーライターも直筆のデザインやコピーをFAXで送ってくる時代から、DTPオペレーターをやっていました。
それはもう、解読不能な文字や指示で埋め尽くされた原稿を、探偵さながらの推理力で読み取って、データ化しなければならないことも多々ありました。さんざん、そういう原稿を見てきたので、ほかの人、とくにDTPオペレーターさんにわたる原稿については、もう、なるべく誤解のないように、「絶対にこうとしか取れない」指示の書き方で、長文テキストをわざわざ入力し直さなくても良い状態にして送りたいのです。
そこまで著者に求められていないかもしれませんが、自分がDTPオペレーターの立場だったことがあるので、もうなるべく手間のないようにしたいという気持ちは無視できないわけです。「自分がこの修正の入ったPDFファイルを見る立場になった場合どう思うか」まで考えざるを得ない。
そのようなわけで、校正記号を作れる上、記号やテキストの使い分けや配置を細かく調整できるPDFPenは、私にとっては欠かせないツールのひとつなのです。
» PDFpen 8
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佐々木正悟さんの記事で紹介されていますが、技術評論社から『たった1日で即戦力になるMacの教科書』という新刊が発売されます。もちろん、この本の校正作業にもPDFPen Proを使いました。
▼海老名久美:
フィーリング重視のテクニカルライター。個人ブログは「SPEAQ」。
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