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フィルターバブルをぶっ壊せ



倉下忠憲以下の本を読みました。

» フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)


私たちの元に訪れる情報が、過剰に「私向け」に最適化されたときに起こる問題を指摘した一冊です。

で、おそらくその「私向け化」(パーソナライズ)の流れは止まらないでしょう。規制や提言によって弱まることはあるにせよ、技術進化の方向はパーソナライズを支持しているように思えます。なぜなら、パーソナライズされた方が利用者にとって「便利」だからです。一度誕生した便利なものを、私たちが捨てることは(よほどのことがない限りは)ありません。

よって、フィルターバブルが消えてなくなることはないでしょう。

とは言え、それに抗うことができないわけではありません。たとえ微力であっても、フィルターバブルの膜をつつくことはできるでしょう。そのような個人的なレジスタンスが、フィルターバブルの弊害を弱めてくれることはありそうです。

では、どのようにレジスタンスすればよいのでしょうか。

ノイズを楽しむ

一つ目はノイズを楽しむことです。

最適化の問題は、最適化にあるわけではく「過剰な最適化」にあります。シグナル・ノイズの比率を限りなく100:0に近づけてしまうのが問題なのです。

過剰に最適化された環境では、「その情報を目にするまでは、自分がそんな情報を好むとは思えなかった情報」との出会いがまったくなくなくなります。興味・関心のアンテナが非常に狭く固定されてしまうのです。

だからまず、ノイズが持つ可能性を受け入れましょう。たしかにそれは邪魔なものではありますが、中には宝石の原石が眠っていたりもするのです。しかし、私たちがノイズを拒絶しようとすればするほど、パーソナライズされたアルゴリズムもそれに従うようになるでしょう。つまり出発点はここにあるのです。

レジスタンスは、ノイズの価値を認めるところから始まります。

もし、自分がフォローできる情報を(Twitterのように)選択できるなら、そこにはノイズも加えるようにしましょう。「今の自分にはあまり興味がないもの」「自分の考えとは反対のもの」を組み込むのです。当然、そして構成されるタイムラインは完璧な居心地の良さを提供してはくれません。

でも、それを楽しめるようになれば、レジスタンスは始まります。

たっぷりのソースを

上の話につながりますが、できるだけ多様な情報源に接しておくことです。GoogleやFacebookだけが情報源というのは、あまりに心もとなさ過ぎます。ニュースアプリも単一のものだけを使っているのは、少々危ういでしょう。

本を探す場合でも、Amazonのようなネット書店だけでなく、リアル書店であったり、図書館であったり、古書店であったり、誰かの本棚であったりと、多様なソースを持っていれば、一つのアルゴリズムが私たちをバブルの中に閉じ込めようとしてもそううまくはいかなくなります。

情報を取る、という行動でも、ウェブ記事を検索するだけでなく、本を読む・雑誌を読む・新聞を読む・人に話を聞く・現地に赴くといったアクションがあります。これらのアクションもバブルをつつく行為となるでしょう。

アルゴリズムを驚かせる

パーソナライズを進めるために、アルゴリズムは私たちのアクションのログを学習するわけですが、それを逆手には取れないでしょうか。

「普段降りない駅で降りてみると、思いも寄らない発見がある」といったアイデア発想法がありますが、それと似たようなことをするわけです。擬人的に言えば、アルゴリズムに「えっ、あなたそんなことに興味あったんですか?」と驚いてもらえれば、最適化が歪むかもしれません。

ときどきは、縁やタイミングを重視して普段は見向きもしない情報に飛び込んでみる。これまでやったことがないことに「物は試し」の姿勢で取り組んでみる。フォローする人をまるっと変えてみる。「自分なら絶対に見ないだろうな」という情報をわざわざ探し覗いてみる。そうした行為で、アルゴリズムが学習する「私」にノイズを混ぜるわけです。

結果、提供される情報にもノイズが混ざるようになってくるでしょう。

さいごに

最終的にフィルターバブルがどれくらい力を持つのかは現時点ではわかりません。しかし、私たちがシグナル100%の世界を居心地良く感じ、そこに閉じこもりたがっているならば、それは巨大な力を有することになるでしょう。

レジスタンスのポイントはシンプルです。

  • フィルターに囲まれている自覚を持つ
  • 自分の関心を広げるように意識的に振る舞う

でもってこれは、別段インターネットの世界だけに限定されるものではありませんね。

» フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)


▼編集後記:
倉下忠憲



フィルターバブルの怖いところは、それに囲まれていてもまったく気がつかない、という点ですね。でもって、それは人間のバイアスの外部拡張でもあったりするわけで、テクノロジーというのもいろいろ難しいと思います。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由