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精神的な未病に気づいて早めに手を打つ

佐々木正悟 未病、という言葉の意味を私はよく知りませんでした。「養命酒」のCMで聞いたことがあるな、という程度でした。

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未病とは|薬用養命酒|養命酒製造株式会社

私はこの定義を読んですぐさま、精神的にもこれと似たようなことがよく見受けられると思ったのです。

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つまり、こういう時にです。

ここでなんの手も打たずに無理を押していけば、遠からず何かよくないことが起こる、というタイミングが、きっとあるはずなのです。

精神的健康を損なう原因、ではなく条件

精神的なトラブルにおいて、何か原因を1つに特定するということはきわめて困難ですが、暴飲暴食を繰り返すことが健康を害するように、次のような状態にずっと置かれると、人は精神的健康を害しやすいとは言えるでしょう。

  • 慢性的な寝不足
  • 親しい人とのトラブルが解消しない
  • 環境に対してコントロールがきかない
  • 断続的な徒労感
  • 自分としては「正しい」と思うことができなくなっている

このコミックの冒頭では「親しい人とのトラブル」以外のすべての条件が整ってしまっています。
寝不足が続いているし、仕事をコントロールできないし、やってもやっても問題が解決しない。

加えて、自分としては「正しい」と思うこと、というのはちょっとしたことなのですが、お風呂には夜に入るとか、朝に朝食を食べる、お化粧してから会社に出かける、というレベルのことが難しくなっています。

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どんな仕事術でもタスク管理でも、上記の悪条件すべてをバッチリ解消するということはできませんが、いくらかの緩和は十分に期待できます。

時間管理によって最優先的に睡眠を取るようにすると、少なくとも慢性的な寝不足を緩和はできるし、自分として「正しい」と思うことも多少はできてきます。

また、ここは大事なポイントなのですが、そもそもタスクを管理するということ自体が、たとえそれがさほどうまくいかなくても、コントロール感の回復に役立ちます。

これは本当にちょっとした、しかし重要なことで、高齢者用の施設などでの心理学実験において、やることがまったく変わらなくても、自分がやることのスケジュールを手帳で組むようにすると、疾患に罹る率が低下するのです。

しかもふつうに考えれば、タスクやスケジュールを整理しておきながら、自分を徹底的に徒労に導くようにしたりはしないでしょうし、対人トラブルを増やすようにもっていくこともしないでしょう。

会社によってはそうしたものをなくすにはほど遠いとしても、やろうとするだけでも、心理的には意味があることなのです。

「成果主義」と「成果ゼロではダメ主義」とはぜんぜん違う

いちばん怖いのは、何をやってもまったく同じように悪い事態しか待っていない、という状態が慢性化することです。

イヌを檻に閉じ込めて、どうやっても避けることのできない電気ショックを与え続ける。するとイヌは学習性無力感に陥り、逃げ出せるようにしておいても逃げすらしなくなる。

というのは、非常に不自然です。自然な状態でそんな事態に陥ることはめったにないでしょう。だから野生の生物が、学習性無力感に陥ったところを目にする機会は、多くはないはずです。

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このコミックを読み進めると、「魔王」は必ずしも成果主義ではないことがわかってきます。魔王は、成果がゼロではダメだとキツく縛りをかけているのです。この2つを混同してはいけないのです。

失敗してもいいじゃないか。挑戦すること自体に意味がある。というのは、少なくとも環境にあまり「悪意」がない、自然な状態でこそ成立する話です。

失敗してもいい、というのは、試行回数や気持ちの持って行き方次第では、十分に成功しうるケースで話をしているのです。
がんばっても電気ショック。がんばらなくても電気ショック。何をやっても電気ショックというのでは、気力を用いる機能不全になっても不思議はないのです。

たとえ仕事時間に違いはなくても、仕事量に変化がなくても、それでも「いつ」「何に」「気力を用いるか」を、可能な限り自分で決めるということは、現代のような環境下ではむしろ大切です。

▼編集後記:
佐々木正悟



パッと見ただけでは、『やる気クエスト』と『SE女子のタスク管理奮闘記』のあいだの関連性は見えにくいと思いますが、エントリに書いたとおり、両者はいろんなところで深くつながっています。

私たちは毎日、ひっきりなしに気力を使って生きています。冬に寒さに耐え、夏の暑さに耐えつつ、理不尽なクレームや、家族の無理解などに対応し、そのうえで旬の食事を味わったり、ぐっすり眠ることができるのも、みんな「気力」があるおかげなのです。つまり、「そうすることには意味がある」と頭が信じて働いてくれていてこそのことです。

頭がこれを信じられなくなると、些細なストレスに耐える力が激減するため、ちょっとの苦痛がひどいものに思えて、立っているのもつらくなるでしょうし、モノの味は薄れ、疲れているのになかなか眠ることもできないという、信じがたい状態に踏み込むことになります。

その上「頭が人生には苦痛に耐えるだけの意味があると信じている」ことと、「人生の意味を信じさせてくれるだけの感触を成立させる」こととの間には、フィードバックループが成立してしまっています。頭が生きる価値を信じているから食事がおいしく感じられ、食事がおいしく感じられるから頭としては生きる価値を信じられるのです。この相関関係がいったんくずれると、取り戻すのが難しいわけです。

というような視点から、3冊のコミックをもう一度読んでみてください。

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