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情報カード、ブログ、Twitter

倉下忠憲
「思いついたことを書き留めよう」

と私はたびたび書きます。大切なことだからです。

頭の中にあるものは、結構簡単に消えていきます。なので頭の中身を記録の形で書き留めておくのは有用なのです。ただし、「頭の中にあるもの」にはいろいろな形がありうる、というのが一つの注意点でしょうか。

その点も踏まえて、書き留める上での注意点を考えてみましょう。

速度の重要性

思いついたことを書き留める上で、最重要課題はその速度です。なるべくスムーズに、なるべく手間なく記録できる環境を整えておくこと。そうしないと、多くのものがポロポロとこぼれ落ちてきます。

二つの写真を見比べてください。私の机の上を写したものです。

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どちらも「手の届く場所」に情報カードが置いてあるのですが、片方は買ったままの状態でビニールに包まれています。もう片方はそれを取り出し裸のままで置いてあります。

ほんのわずかな違いでしかありません。何かを書きつけたくなったとき、片方は袋から一枚取りだし書きつける。もう片方はそのまま一番上のカードに書きつける。時間にすれば3秒ほどの違いでしょうか。それでも前者の方は、「ちょっといいか」という抵抗の気持ちが芽生えてきます。簡単に言えば、面倒に感じるのです。

メモ環境の速度には、短期記憶が消滅する前に、という意味合いと、心理的抵抗感が小さいので特に強いやる気を必要としない、という意味があります。この二つがキープされていれば、メモをよりたくさん残していけるようになるでしょう。

展開の重要性

心理的抵抗値を下げる、スムーズに取れるようにする、というのは重要なのですが、そればかりに注目していると「簡単に書けることしか書きとめない」という傾向が生まれてきます。

一行でさっと書きとめる、一行でさっと書きとめる、一行でさっと書きとめる。

こればかりになるのです。もちろんそうした着想も、たしかに頭の中身ではあります。しかし、それだけが頭の中身ではないでしょう。書き留めたもとをベースに、思考を発展させていくこともできるでしょうし、それもまた頭の中身ではあります。

二つの写真を見比べてください。私の情報カードを写したものです。

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最初にあげたカードは、着想を書き留めたものです。シンプルな箇条書きになっており、意味は(私には)わかりますが、着想の簡単なスケッチでしかありません。

次にあげたカードは、その箇条書きを文章で展開しています。このカードを読めば、そのときの私が何を頭に思い浮かべていたのかがわかりますし、他の人が読んでも(ある程度は)意味が伝わるでしょう。

ポイントは、一枚目のカードから二枚目のカードに移行するときに、私の頭の中で思考が進んでいる点です。言い換えれば、書きながら考えている点です。簡単に書きとめたものは、単に書きとめた(=短期記憶を記録に移動させた)だけですが、こうして文章化してみると、それ以上の何かが頭の中で発生します。

これは、書きとめた着想メモを使って短いブログの記事を書くことに非常に似ています。カードとブログ記事という体裁の違いはあるにせよ、書きながら考えを進めているという点では同じなのです。

フレームの重要性

ということを考えると、「小さな着想をきっかけに、大きなアウトプットを生みだそう」という発想が生まれてくるかもしれません。思いつきを書きとめるだけでなく、そこから思考することが良いことであるならば、それをどんどん拡張していけばもっと良いに違いない、という発想です。

B6の情報カードならせいぜい300文字くらいなので、それをB5に、B4に、B3にと大きくしていけば、もっとたくさんの文字を残せますし、より精緻なより巨大な思考を展開することも可能でしょう。

が、ここにはジレンマがあります。

第一に、サイズを大きくすればするほど取り回しが悪くなります。使うのに一手間かかるようになり、速度が落ちます。となると、そもそも書き留めなくなるようになるのです。

第二に、「大きいものを書かないといけない」という気持ちは、それだけで心理的抵抗感を生みます。そこには短期記憶で扱える以上のものが含まれており、それを一気に文章化しようと思えば、すさまじい認知資源が必要となるでしょう。脳は、できればそんなものには関わりたくないと判断するので、行動を起こす意欲が湧いてこないのです。

だからこそ、フレーム(枠)は大切です。

B6の情報カードは、一枚せいぜい300文字程度しか書けません。できることは一つの着想を少し膨らませることくらいです。でも、だからこそ「ちょっとやろうかな」という気持ちが湧いてきます。

で、これとまったく同じことがTwitterにも言えます。「140字しか書けない」というコンテンツの制約は、気軽に書く気持ちを呼び起こすのです。

さいごに

効率性だけを考えれば、最初から大きいものを直接アウトプットした方が良いように思えます。が、それはいろいろな面で現実的ではありません。小さく書き留め、それを中ぐらいに膨らませ、それを組み合わせて大きなものを作っていく方がうまく進むことはよくあります。

「情報カード」の面白いところは、そこそこ小さいので取り回しが良いながらも、それなりの文章量が書けることです。あるいは「それなりの文章」しかかけないことです。もちろん、300文字ですら多く感じるならば、これよりも小さいサイズのカードを使うのが良いでしょう。

というか、別にカードを使う必要すらないのです。取り回しの良さと制約をうまく意識できれば、デジタルツールでもまったく問題ありません。ポイントは二つあります。

  • 書き留める気持ちになるかどうか
  • それを発展させる気持ちになるか

スタートは前者に注目すべきですが、ある程度慣れてきたら後者にも注目した方が良いでしょう。「メモ書き」→「情報カード」や、「Twitter」→「ブログ」の関係は、これをうまく実現してくれます。

▼今週の一冊:

マンガでタスク管理を学ぶ一冊。

シンプルにまとまっているので、30分もあれば読めるでしょう。細かいテクニックというよりは、本質的に重要なことがぎゅっとまとめられています。あと、ひよこが良い味出しています。いや、焼き鳥という意味ではなく。

» 残業を減らし定時で帰る仕事術〜SE女子のタスク管理奮闘記〜[Kindle版]


▼編集後記:
倉下忠憲



一気に三冊の自著が電子書籍化されました。嬉しい限りです。もう数年前の本になりますので書店では見かけないこともあるかもしれません。その際はぜひKindle版も選択肢に入れてやってください。

» クラウド時代のハイブリッド手帳術[Kindle版]


» ソーシャル時代のハイブリッド読書術[Kindle版]


» KDPではじめる セルフ・パブリッシング[Kindle版]


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由