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『三極発想法』で「知的生産の技術」の体系化にトライしてみた



倉下忠憲以下の記事を読みました。

» 『三極発想法』の感想を一言でいえば「体系化ってこういうことだったのか!」

魔方陣のような独特な図解フォーマットに、一定のルールに従って言葉を埋めていくと、自然に思考の整理が進みます。

「な、なんと……。すげー、楽しそう!」というのが第一感です。

手元に解説書がないので、見よう見まねで自分でもやってみました。ちなみに検索すると、以下のページも見つかります。

» 572. 三極発想 | 起-動線

こちらも参考にさせていただきました。

それでは、いってみましょう。

まずはフレーム

Keynoteを立ち上げるのが面倒だったので、紙とペンで行きます。後々のことを想定して、フレーム部分はボールペンで、中身はシャープペンで書くことに。

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いびつですが、とりあえず完成。さっそく言葉を埋めていきましょう。

入力開始

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こうしたもののとっかかりは、あまり複雑に考えすぎないのがコツなのは世の常です。ぱぱっと思いつくままに書いていきます。真ん中にはテーマである「知的生産の技術」。あたまに「あたらしい時代の」を付けるか悩んだので、若干空白を入れてあります。

三極には、「考える」「読む」「書く」を入れました。この時点で気がつきます。どうやら三極のポジションにも何かしら意味があるぞ、と。

一番大きなフレームである三角形は、ある意味で「逆」を向いています。底辺が下にくるのではなく、三角形の頭とも呼べる頂点が下に来ているのです。このデザインに明確な意図を感じました。

そう考えて、再び上の記事を読み返すと、例示された図では「これまで」「いま」「これから」の順に並んでいます。下の頂点に来ているのは、「いま」なのです。言い換えれば、視覚的に自分に一番「近い」場所に「今」が配置されているのです。これはまったく違和感がありません。逆に「いま」「これまで」「これから」の順に並んでいたら違和感があるでしょう。

三極はそれぞれ等価なのですが、どの順番に並べるのかはビューポイントの問題がありそうです。

というところを、踏まえて書き直します。シャープペンにしておいて正解でした。

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「読む」「考える」「書く」の順で極に要素を配置し、中心のテーマとつながる部分にもとりあえず書き込んでおきます。「読書」「発想」「原稿」の3つです。
※あと、うっかりつなぎ忘れていた線があったのでそれも修正。

これで埋めるのはあと3マスになりました。

試行錯誤

難しいのはここからです。

「読む」と「書く」の間には「貯蔵」と書き込みましたが、外周の残り二つが埋められません。とりあえず、そのポイントにはどんな要素が入るだろうかを記述してみます。

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「読んだことから考える技術」「考えたことをまとめる技術」と書きました。思考の補助文です。

そして、ここから大きくマス目が変わっていきます。以下、いささかランダムに__つまり私の思考が飛び跳ねた順に__その変化を追いかけます。

「読む」は本当に読むでよいだろうか。「読む」と「読書」はどう違うのか。むしろ、「読む」をもっと広く、たとえば「入力」のような言葉に置き換えたらどうなるか。そうすれば、右側の頂点も「出力」となる。いささか、コンピュータ的過ぎるきらいはあるが、言葉が支えるイメージは拡がる。

「考える」ことから「出力」するための技術とはなんだろうか。考えたことはそのまま文章にできるわけではない。構造を作ることが必要だ。アウトライナーはそのような場面で活躍するのだった。だとすれば、外周の一マスには「構造」が入りそうだ。

「読む」を「入力」に変えると、「読書」があまりに目立ちすぎはしないだろうか。つまり、本を読むことに限定されすぎないだろうか。だとしたら、「読書」ではなく「Read」としたらどうだろうか。同じように「原稿」や「執筆」だと堅苦しい文章に限定されてしまうかもしれないので「Write」とするのはどうだろうか。

「貯蔵」はあまりに固すぎないだろうか。「ストック」ぐらいふんわりいったらどうだろうか。

「入力」から「考える」をつなぐものはなんだろうか。思考の発展・展開・熟慮・熟成……。多面的に考えること、疑問を呈すること、証拠となるものを集めること、ソースを確認すること、新しいアイデアとつなげること。それらをまとめる言葉は何だろうか。

やはり「入力」と「出力」は、人間的な響きが少ない。もう少し自分に近い言葉を選ぶとすればどうなるか。入力ではなく「刺激」に、出力ではなく「表現」に。いや、「刺激」に対応するのは「反応」だろう。しかし、「反応」はどうにも受け付けにくい。「表現」の方が適している。なぜだろうか。それは、知的生産には「考える」こと、すなわち思考が欠かせないからだ。「刺激」→「反応」は直接つながっている。しかし、知的生産はそこに「思考」を割り込ませる。また、そうして思考したものを、ひとにわかる形に整える必要もある。つまり、「構造化」だ。

「思考」と「発想」は、言葉が近すぎないだろうか。「アイディア」の方が見た目のバランスはよくないだろうか。

……といったことを考えながら、書いては消し、書いては消しを繰り返しました。

完成図

そうしてできあがったのは、これ。

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中心のテーマは「知的生産の技術」。

三極には、「刺激」「思考」「表現」。

内周部には、「ストック」「読む」「深化」「アイディア」「構造」(構造化)「書く」。

以上のように仕上がりました。なかなか悪くありません。もう一段階ぐらいのブラッシュアップはできそうですが、骨組みとして十分機能しそうです。

三極にはそれぞれ「〜〜の環境」を、内周部には「〜〜の技術」を付ければ、知的生産の技術の大きな構造を提示できそうな気がしてきました。

さいごに

三極発想法は、見た目はマンダラートに似ており、近しい要素もたしかにありますが、基本的には別の思考技法と言えるでしょう。要素同士の流れや関連性に関する思考が強く促される感覚があります。

ただし、3×3のマス目を準備するだけで良いマンダラートに比べると、若干フレームの準備が面倒かもしれません。それでも、大ざっぱに書くだけなら紙とペンさえあればすぐにでも取りかかれます。もし、大きなテーマのとりまとめに悩んでいるならば、一度チャレンジしてみる価値はありそうな技法です。

▼今週の一冊:

たまには漫画を。読書好き、特に小説をよく読まれる方ならば、楽しめる一冊です。基本的には「あるある」系のギャグなんですが、それだけではない深さもチラリと感じられます。あと、この漫画で紹介されている本がすごく読みたくなります。不思議です。

» バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)


▼編集後記:
倉下忠憲



今回の記事は大橋さんの記事を朝読んで、その日にすぐに取りかかって書きました。善は急げというわけではありませんが、良い技法というのは、まるで焼きたてのお肉のようにいい匂いがするものなのです。今回もすぐにピンときました。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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