「自分がやったことを逐次記録することで、日々の生産性を上げる」と言われますが、その理由としてドラッカーは「時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除していく」ことができるためとしています。
また、記録をすることで、実際の作業と、自分がそれをするのに必要な時間の組み合わせをストックとして持つことができます。このストックが多ければ多いほど見積もりが精緻になり、早い段階で完成形を人に伝えることができたり、トラブルを未然に防ぐことができるようになります。
とはいえ、実際のところ、忙しい仕事の合間に逐次記録を取っていくのは容易ではありません。ちょっと気を抜くとすぐに「あれ、もう1時間たっているけど何やっていたんだっけ?」という事態に直面します。
そこで、予め自分がやるべきタスクをリストアップしておき、可能な限りこのタスクリストに沿って仕事を進めていくことで、記録すべきは、
1.やったか、やらなかったか
2.やったのなら、それにどれだけの時間がかかったのか
3.作業の過程で気づいたことや思いついたこと
4.予定外の作業
といった諸項目になります。白紙に一から記録をつけるよりも予め下書き(あるいはフォーマット)がある状態で記録をつけることになるため、このタスクリストが未来の予定であるだけでなく、ここに実際の作業結果を書き足していくことで、後から自分の作業を振り返るための(過去の)記録として活用できるようになります。
作ったばかりのタスクリストはフィールド調査のための未記入の白地図のようなものです。実際のフィールドで見聞きしたことを追記していくことによって、自分だけの記録地図が作られていきます。
この地図は、次の調査の足がかりになります。どんな作業にどれだけの時間がかかるのか、そして作業に入る前に想定していた作業手順は、実際の作業を通してどのような修正や例外に遭遇したのかを記録しておくことにより、精度の高い“地図”を描くことができるようになります。
例えば、
1.具体的にどのような作業が発生するのか、
2.その作業にどれぐらいの時間がかかるのか、
3.どのようなことに注意しなければいけないのか、
4.予め準備しておくべきことは何か、
といったことが事前にわかります。そこから「では、どうしたらよいか?」という自分に対する質問を引き出すことができます。
思い返すからこそ、「次はこうしてみよう」という工夫が生まれ、さらには「どうしたら、もっとうまくできるんだろう」という質問に発展していくのです。このような試行錯誤を繰り返していくと、自分の中に「どうやら、こうすればうまくいくようだ」という自信が芽生えます。これを言語化したものが、例えば「支配人はかくあるべき」であり「新聞を毎朝6紙」読む、というノウハウになります。
記録を活用することによって、より意図的かつ合目的的に自分を動かすことができるようになる、と言えそうです。
いま作ろうとしているタスク管理ツールは、文字通り未来のタスクを管理するためのものであると同時に、後から活用するための作業記録にもなるはずです。