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明日の自分を動かすコツ

先日、あるオンライン証券会社のページで次のようなお知らせを目にしました。

以下の銘柄につきまして、当面の間、保証金代用有価証券の掛目を引き下げます。ご了承のほどお願い申し上げます。

(以下略)

「保証金代用有価証券? 掛目? 何のこっちゃ?」と思いつつ、並んでいる銘柄を見て何となくよくないことが起きているんだろうなぁ、という程度の認識でいましたが、保田さんが非常にわかりやすく解説してくださっていました。

もちろん、証券会社としては相手にしているのは「保証金代用有価証券」も「掛目」も当然きちんと理解している投資家である、という前提でビジネスをしているのでしょうから、これはこれで問題はないと思います(措置の内容がどうこう、ということについては触れる立場にないのでスルー)。

で、ここで感じたのが、日頃から何となくもやもやしていた、「表現の視点」問題。

で、雑誌「Hanako」の表紙にあった見出し「恋人ができるカラダになる」を取り上げている以下のエントリを思い出しました。

女性誌に学べ。

女性誌おなじみのダイエット特集ですが、「春までに10キロやせる」「グラマーになる」ではなく「恋人ができるカラダになる」というこの表現。IT業界で業務設計だ、SLAだなどと客観的な表現に神経を尖らせている人が見たら、卒倒しそうな造語です。

しかしどんな行動にも目的があります。若い女性(男性もですが)のダイエットなら、往々にしてその目的は「モテるため」でしょう。であれば、「春までに10キロやせる《その結果、男性に対する魅力度が上がって、秋ぐらいまでにはなんとか恋人ができるかもしれない》ダイエット」と《 》内に様々な想像が入ってしまう可能性のある表現よりも、「春までに恋人ができるカラダを作る」とストレートに言い切ってしまった方が、Hanako1月26日号という雑誌の持つ価値をよりアピールすることができます。

言葉には人を動かす力があると思っているのですが、このように実態として実現すること(10キロやせる)と、その結果得られるかもしれないこと(恋人ができるかもしれない)とをきちんと区別して、相手はどっちを求めているのかを見極めれば、より強く動かすことができそうです。

人を動かす言葉には共通点があります。それは、その言葉が、それを受け取る側の視点で語られているかどうか。3種類の視点があります。

 1.言葉を発する側の視点
 2.言葉を受け取る側の視点
 3.どちらにも属さない中立の視点

 冒頭の証券会社のお知らせは1の発する側の視点
 Hanakoの「春までに恋人ができるカラダを作る」は2の受け取る側の視点
 「春までに10キロやせる」は3のどちらでもない中立の視点

という具合に分類できます。

中立の視点というのは、客観的で、大半の人が「あぁ、そうだな」と受け取ることができます。ある意味“スルー”されやすい表現とも言えます。新聞記事などは積極的に中立に書かれています(見た目は)。

ということで、人を動かしたければ、相手の視点に即した表現を心がけると良さそうです。

では、ほかならぬ自分を動かしたい場合はどうすればよいでしょうか。

「自分を動かす」を分解すると、「今の自分」が「未来の自分」という他人を動かす、ということになります(もちろん、過去の自分も他人です)。

例えば、目標を決める、あるいはスケジュールを立てる際、やるべきことを手帳に書き込んだり、タスクリストにタスクを追加したりといった作業の過程で言葉を使います。その時、「今の自分」が言葉を発する立場であり、「未来の自分」がそれを受け取る立場、です。

自分を動かせない場合というのは、予定通り(昨日の自分が決めた通り)に行動できない場合で、その最たるものが先送りです。もちろん、いかんともしがたい理由でやむを得ず先送りをする場合もあるのですが、そうでもないのに何となく、という場合もあります(あ、僕自身の話です)。

先送りの“手口”としては、同じタスクをそのまま翌日に転記する、というのが代表的ですが、今日という1日を経て、そのタスクを取り巻く状況や自分のテンションが確実に変化しているはずですから、まったく同じ名前で「引き継ぎ」をしてしまうと、翌日も同じように先送りしやすくなってしまいます。言うなれば、先送りが先送りを呼ぶ展開(先送りショック)。

同じ名前のタスクを毎日目にしていると、だんだんと先送りへの心理的抵抗が弱くなっていきます。「昨日も先送りしたしなー」という変にもっともらしい理由で自分を納得させてしまうからでしょう。

件名を見ただけで「あっ、読もう!」とすぐに開封して読み始めるメルマガと、「うわー、また来てる。まぁ、アトで読みますかね」と先送りしてしまうメルマガがあるのですが(さっさと解除すれば良いのでしょうが、何となくそのままにしてしまう)、ここでも似たような原理が働いているような気がします。

そこで、その日の仕事を終えて、翌日の予定を決めるときに、明日の自分が「どこから手をつければいいのやら…」と戸惑ってしまわないように、明日の自分(≒他人)の視点を想像して、やるべきことをストレートに表現してあげると良いのではないでしょうか。

例えば、

 ●「A社向けの企画書を作る」というタスクなら、
  → B社の案件を参考に企画書を作る
  → B社の案件に関わったFさんに話を聞く
  → Fさんに話を聞くための質問をまとめておく
 (その他、思いつく限り列挙)

 ●「部屋の整理をする」というタスクなら、
  → 1ヶ月以上見なかった書類を捨てる
  → 書類を、対応が必要なものと保管が必要なものに分ける
  → 本を、未読・読みかけ・既読・不要に分ける
  → 机の上にあるもので、目障りなものは視界の外に出す
 (その他、思いつく限り列挙)

などなど、なかなか手がつかないタスクを別の言葉で表現したり、すぐに手がつけられる単位まで噛み砕く、という“下ごしらえ”をしておくと、翌日の自分が行動に移しやすくなります。

雑誌が、見出しの言葉を読者の視点で表現するのと同様に、タスクの名前を「明日の自分」の視点で工夫すれば、明日の行動はきっと変わります。

<明日の自分を動かすコツ>

「明日の自分」の視点でタスクリストを書き直す。