結果として、まだ明るいうちに「なんで今これをやっているんだろう?」と自分でも不思議に思うようなタイミングでタスク群に取り組むことになります。
でも、それが正解なのです。
これはとても面白い話でして、私も同じようなことを頻繁に考えますし、よく話題にもします。
しかし非常に多くの人からかなりあっさりと否定されることも多く、まったく驚かされるのです。
物事をカイゼンしたいと思ったら、現状のままではまずダメで、何らかの犠牲を払う必要がある。
これを決して受け入れまいという人は、驚くほど多く見受けられます。たとえば、最近家を建てることになってうちの奥さんは、上限金額を変更することなく坪数を増やして自分の望みの家を建てるということをかなり長い間真剣に検討していました。
これは時間の話にすれば、どうやっても毎日6時間しか寝られておらず、それで寝不足なのに、そのほかにやりたいことも全部やって、さらに7時間は寝たい、というようなものです。
私の知る限り「タスクシュート」に寄せられてきたもっとも多い不満は、これです。
これを訴えられると、現実をねじ曲げられないのはなぜか? と詰め寄られているような感じを覚えます。
おそらく「早起きを定着させる」ために大橋さんの記事を読んだ人は「これは大橋さんだからできるのだ」と思ったことでしょう。「なんだかんだいって、意志が強い」とか、少し意地の悪い人だと「人生の楽しみを犠牲にできる人向けだ」とか。
でも私が思うにそうではないのです。大橋さんも記事中に書いていることですが、これができるのは「たすくまを使っているから」です。それが答えです。
たぶんこれはタスクシュートというものをすでに理解していると思っている人ですら、あまり信じてくれそうにないのですが、私がもう馬鹿みたいに繰り返しているとおりタスクシュートというのは単なる時間管理ツールでもタスク管理ツールでもないのです。
誘惑管理ツールなのです。
普通の人にとって「現在には見えているが、未来については見えなくなるもの」はたくさんあります。その1つに「誘惑」もあります。これが実に重大です。
早く寝なければいけないとわかっているのに、Twitterで時間をつぶしたあげく、やりたくもないゲームを2時間もやってしまうなどといったことは、実は些細なことです。そんなことだけなら、克服する方法もあるでしょうし、克服できることもあるでしょう。
しかし、誘惑が未来永劫続くということは、きわめて重大な問題です。あえて言えば誘惑は、誘惑に身を任せている間には半ば消え去りますが、面倒な仕事に取りかかろうとする直前などには必ず現れます。
しかも悪いことに、私達は未来の誘惑のリアリティをうまく想像できません。明日、ブログを書く前になると必ず、Twitterに50分を費やして、ブログを書く時間を失うだろうな、などとあまり考えないのです。まして仕事の一つ一つについてそうなるだろうなどとは想像しません。
タスクシュートはこれを想像させます。半ば強制的に想像させられます。時間帯、前後の行動の予測などが並んでいると、自分がどういう状況に直面するかがすぐわかるからです。
しかも、基本的にルーチンタスクがずらっと並んでいるため、「これをやろうとした時に昨日も現実逃避した」ということが、いつかは思い出させられるわけです。
そして誘惑に乗っているとどんなことになるかも、リアルタイムで思い知らされます。
» Taskuma — TaskChute for iPhone
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なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか? ~「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術 | |
佐々木 正悟 大橋 悦夫
技術評論社 2014-04-09 |
この本は、記事のようなことをあらゆる角度から検討したものです。アメリカでは、先延ばしをテーマにした本が年間で100冊以上も出ているそうですが、それではまるでこの問題は、問題としてはあるが、解決は不可能だとみんながあきらめているようなものです。
でも解決の糸口はあるのです。