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Evernoteのアイデアカードを「くる」方法

By: Justin See (coming back)


倉下忠憲情報カードはなかなか便利です。

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カード1枚に、企画案を1つ書いておけばネタ帳としても使えます。

しかも、それを「くる」ことができるのです。タンジブルなおかげなのか、スピード感なのかはわかりませんが、カードを「くる」行為は、ノートをパラパラめくるのとも、RSSフィードを流し読みしていくのともまた違った感覚があります。言葉にはしづらいですが、「快」があるのです。

しかし、デジタル情報カードとしても使えるEvernoteは、ノートを「くる」ことができません。困りました。

なんとかできないものでしょうか。

プレゼンモード

一番近しい機能は「プレゼンテーションモード」(※)です。
※プレミアム機能

複数のノートを選択して、「プレゼンを開始」を選択すれば、画面が切り替わってプレゼンモードが始まります。

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画面端をクリックするか、左右の矢印キーでノートの移動が可能です。どんどん右を押していけば、カードを「くる」ような感覚が味わえます。

これはこれでよいのですが、問題はそのままの状態でノートの書き込みができないこと。何か追記すべきアイデアを思いついたときは、プレゼンモードを一度終了させる必要がでてきます。もちろん、意図された使い方ではないので、その不便さは仕方ないのですが、あともう一歩な感覚は消えません。

普通の画面では?

「いや、そんなことをしなくても普通のカードビューで右を押していけばノートの表示が変わるじゃないか?」

という疑問はあろうかと思います。

たしかにその通りで、普通のカードビューでも、次々にノートの中身を覗いていくことは可能です。ただし問題が二つあります。

一つは、どうしてもカードの表示領域が小さくなってしまうこと。画面の3分の1ほどしか、ノートの表示には使えません。プレゼンモードに比べると、「余計なものが表示されている」感覚がどうしても出てきます。ただ、これはある程度サイズを調整したり、大きなディスプレイを使えば解決できるかもしれません。

もう一つの問題が、ノートの移動です。右ボタンでノートを移動しながらノートの中身を眺めていたら、何か書くことを思いついたとしましょう。その際、記入するならばそのノートにフォーカスを移動させる必要があります。で、記入を終えたら、再びフォーカスを戻さないと、次のノートに移動できません。

たった2工程ではありますが、数多くのノートを流し読みしているときは、わりと鬱陶しく感じるのです。結局、プレゼンモードと似たような問題が潜んでいるわけです。

ノート相互リンク

というわけで、以前からノートを「くる」ように閲覧しながら、簡単に追記できるアプリの登場を待っていました。

でも、とあることがきっかけで一つのアイデアを思いつきました。

長い前振りでしたが、そんなにたいした仕掛けではありません。こういうノートを作ったわけです。

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アイデアを書き留めたノートですが、一番下に二つのリンクがあります。仮に「ゆるんだネジを締める手間を惜しむとえらいことになる。」をクリックすると、以下のノートが表示。

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さらに「ゲームを売る世界を売る」をクリックすると、こうなります。

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ようするにアイデアを書き留めたノートに、ノートリンクの相互リンクを貼っているわけです。これによって、独立表示させたウィンドウ1つだけで、次々とノートを閲覧していくことが可能になります。つまりノートを「くれ」るわけです。

この方法であれば、さきほどあげた問題は気になりません。1クリックで次のノートに移動でき、書き込んでもフォーカスは移動しません。最小の手間でノートを閲覧し続けられます。

スクリプトに頑張ってもらう

が、しかし。

単純に考えると、これを実現するのは相当に面倒です。1つノートにつき、2つのノートリンクを貼るわけですから、10ノートであれば、20回ものコピペが必要です。500オーバーのノートなら考えたくもありませんね。

そういうときは(Mac限定ですが)、AppleScriptの出番です。

rashita / gist:2a6029ee563b8f69115a

AppleScriptエディタを立ち上げ、上のページから、スクリプトをまるっとコピーして貼り付けて実行すればOKです。その前に、二つ以上(※)のノートをEvernoteで選択しておいてください。
※できれば三つ以上で。

アルゴリズム的ツッコミはあろうかと思いますが、最低限の動作は問題ありません。

スクリプトを実行するとノートの最後に、前後二つのノートリンクが追加されます。ちなみに、一番最初のノートについては、二番目のノートと一番最後のノート、一番最後のノートは、最後から一個前のノートと、一番最初のノートのリンクが貼られます。つまり、一周ぐるっとループできるわけです(※)。
※スクリプトを書き換えれば、最後のノートリンクを外すことも可能。

ただし、注意点が一つ。

ノートリンクは、クライアント上でノートを作成し、その後同期をかけた瞬間に作成されます。つまり、同期前のノートには有効なノートリンクが存在していません。そういうノートを選択に含めてしまうと、機能しないノートリンクになってしまいます。新しいノートの相互リンクを貼りたい場合は、同期後に実行してください。

さいごに

これでノートを「くる」ことができるようになったわけですが、まだリアルの情報カードのように「シャッフル」することはできていません。一度貼ったリンクをランダムに並び替えればよいわけですが、なかなか面倒そうです。ただその代わり「関連するノート」という、情報カードにはない機能もあるので、また新しい使い方ができるのかもしれません。

とりあえず、ご興味ある方は、一度自分のアイデアノートに相互リンクを貼ってみると面白いかと思います。

▼今週の一冊:

「インディーズ作家を応援するマガジン」

さまざまなインディーズ作家さんの新作・既刊サンプルが読める電子雑誌。今回は、冒頭のゲスト記事に私が寄稿させていただきました。

「星空とカレイドスコープ」というタイトルだけだと創作文っぽいですが、「セルフパブリッシング作家の多様な存在可能性」という副題からわかる通り、「作家」の在り方についてのお話です。おそらくこれからの社会では、「作家」という言葉が持つ意味がどんどんと変化していくでしょう。その中で、それぞれの作家が、「自分はどういう在り方をしたいのか」を考えていく必要がありそうです。


▼編集後記:
倉下忠憲



先日、自作電子書籍の新刊『Category Allegory』が発売になりました。「月刊くらした」計画第三弾。そろそろ自転車操業感がぬぐい切れなくなっていますが、私は元気です。今回はブログにアップした寓話的なショートショートをあつめた作品集です。101円ととびきりお買い得価格なので、お暇潰しにでもどうぞ。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。