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長期計画をまちがいなく達成する方法ー『予想どおりに不合理』より

By: slayerCC BY 2.0


予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
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佐々木正悟 本書を読むまで私は、「自分で作ったルールはほぼ役立たない。なぜなら簡単に破ることができるから」と思い込んでいました。しかしこれは間違いで、

自分で作ったルールは、すごく怖い人に課された強圧ルールほど、人を動機づけてはくれないが、ルールなく物事に挑むよりははるかによい

ということを理解しました。
 

『予想どおりに合理的』読書前・読書後

本書を読むまでの思い込み→7自分ルールは役に立たない
本書から得られるパラダイムシフト【一例】→自制ルールは有効利用できる

 

自分ルールは役立たない

アメリカ人ほどではないかもしれませんが、私たちも「長期目標」をよく立てる国民だと思います。そういう教育を受けているからでしょう。「長期計画」を立てることはとにかく良いことだ、という調子が、少なくとも私が小学生だった頃にはありました。そんなに何でもかんでも自分の人生が思い通りになっているのに、なぜ先生たちの口からはあれほど不平不満がポンポン飛び出すのだろうとは、子供心にも思ったものですが。(これは本当に)。

四六時中誰かに監視されたり、指導されたりするのを望まない以上、長期計画を達成するには、ある程度「自分ルール」で縛ることが必要なのですが、これがなかなかうまく機能しません。うまく機能しないからこそ、先延ばしが起こり、計画そのものがダメになってしまうわけです。私自身、あまりに多くの「罪悪感のネタ」を抱えているため、もうこれ以上抱えきれなくなって、麻痺してしまったということがあります。以来、そもそも長期計画など立てない、という方針に切り替えたこともあります。

ただ、「それじゃオマエは全く長期計画なしにやっているのか」と言われれば、そうでもないわけです。たとえば、とらえ方次第ですが、「本を書く」のは長期計画になっています。作品によっては、1年弱かかっているからです。私の中では、短ければ数ヶ月で終わるものは、「中期計画」なのですが、これは呼び方の問題であって、「それを長期計画というのだ」と言われれば、そうでしょう。これをどうやってコントロールしているのか?

ここで「自分ルール」を活用している、ということになるのですが、よくよく振り返ってみると、「自分ルール」というのは、よく雑誌の特集に組まれているような、わかりやすくパッケージ化されたものではないことが分かります。「当日分、4000字の原稿を書いたらビール飲んでよし!」というほどシンプルなやり方では、機能しません。もっと、ある種のリアリティを伴って、複雑な要素が絡み合ったやり方でないと、うまく心に訴えないのです。

 

「自制ルール」は育てるもの

『予想どおりに不合理』は「行動経済学」の本で、主要な部分は「経済学」についての話ですが、5章と6章は「貯蓄と先延ばし」についての実験的エピソードが盛り込まれています。全体としてのテーマは、「思っていること」と、「やっていること」と、「やった後に思うこと」は、客観的にはバラバラで、そこを人間はうまく自分の脳でまとめてしまうが、あとで不都合な現実に見舞われることも多い、という話になっています。

そんなことは本で指摘されなくても分かっている、と言えばそれはそうです。「貯金しなくちゃ」と思うことと、「どうでもいい本を買って」しまうことと、その後に「でも、まあしようがなかった」と思うことは、整合しているとは見えませんが、本人は結構それで矛盾なく過ごしているつもりでいます。ただこれを漫然と繰り返していると、事態はたいてい悪化していきます。〆切のある仕事であれ、健康に関することであれ、浪費癖であれ、やめられない嗜好品であれ、同じ事です。

しかし、「当日分、4000字の原稿を書いたらビール飲んでよし!」(「5km走ったら・・・」「500円貯金できたら・・・」)式のやり方が機能しないなら、どうしたらいいのか? 『予想どおりに不合理』では、大学生たちを使って「先延ばしに関する心理的実験」を行っています。
 

1.学期末のレポート3点について、自分たちで〆切を作らせ、発表させる。自発的な〆切に遅れたら、ペナルティを設ける
2.学期末のレポート3点について、「学期末まで」という以外には何も設けない
3.学期末のレポート3点について、第1は4週間後、第2は8週間後、第3は12週間後という〆切を押しつける。ペナルティもあり。

 
結果として、もっとも成績がよかったのは「強制的な〆切」を設けられた第3のグループ。一番成績が悪かったのは、〆切がもっとも鷹揚だった第2のグループでした。第1の、自発的な〆切を「表明した」グループは、その中間だったというわけです。

この結果を最も簡単に解釈するなら、「人は強制されれば、先送りを回避すべく努力するが、自発的なルールも無意味というわけではない」ということになるでしょう。第1と第2のグループでは、最終〆切の厳しさにおいて、違いはないのです。どちらも学期末に設定することはできます。ただ、第1のグループは、〆切を前倒しに自分で設定できたというだけです。それでも成績は、少なくとも、何も計画を立てなかった学生たちよりはよくなったのです。

自発的なルールが意味をなすのはおそらく、「計画を作ること」や「計画に沿って行動すること」や「計画を自分に守らせること」などが、一種の報酬として働くからなのでしょう。そういう意味で、「自分ルール」というのは、「説明しがたい」ものです。「計画を守ったら」というほど単純なものではなく、「計画とともにあるとき」に感じられる独特の快感が、「ルールを破らないこと」を後押しするわけです。計画はしばしば、ゆるめられ、変更され、厳しくも変えられます。自分自身にたえず相談する、という感触が、このルールには必要なのです。

 
なお、本書は先に述べたとおり、「経済行動学」についての本です。それは、私たちの身近な心理による身近な購買行動に関する研究ですから、興味深いエピソードが満載です。日本でも下記の書籍にあるとおり、すでにおなじみのテーマですが、まだまだ目が離せない分野だと思っています。

 

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▼編集後記:

黄金週間が終わりました。私には、いつもより激しく仕事をした一週間でした。
しかしおかげで、自宅の仕事場もずいぶん使い勝手がよくなり、まずまず満足です。

書棚の中は、大幅に入れ替えました。
ブティックに新しいアイテムを増やさなくても、一切を並べ替えるだけで店内が見違えるように、書棚も本の並べ替えをすると、結構見違えます。これは行き詰まったときには、よい気分転換になります。