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習慣の“経年劣化”を防ぐための習慣を身につける

習慣の“経年劣化”を防ぐための習慣を身につける

大橋悦夫どんなことであれ、習慣化に成功した後も、折に触れてその習慣が当初の目論見通りの成果を上げ続けているかどうかのレビューを行うことが大切だと考えています。

習慣もまた“経年劣化”するものだからです。

※本記事は2013年3月2日に公開した記事を最新化したものです。後述する「5分歯みがき」というiPhoneアプリがAppStoreからなくなっていたのですが、数日前に復活していたことに気づいたので改めてご紹介させていただきます。



歯医者さんに歯の磨き方を褒められた

5分歯みがき」というアプリがあります。

▼iPhoneアプリ


その名の通り、5分間で一通りの歯みがきの手順と勘所をアニメーションでガイドしてくれるアプリです。

冒頭の画像のように、どの部分をどのようにみがけばいいかを磨く順番にアニメーションで示してくれるので、磨きもれがなくなるのはもちろん、必要以上に長い時間磨き続けてしまうことを防ぐことができます。

歯みがきは多くの人にとってすでに定着している習慣だとは思いますが、毎日欠かさず歯を磨いているにもかかわらず、虫歯になる人がゼロにならないのは、磨き方に問題があるからでしょう。

逆に言えば、正しい磨き方ができていれば虫歯はゼロにできるのです。

このことを実感したのは、このアプリを使い始めてから1年半後に定期検診で歯医者に行った時のことでした。

いつもなら必ず1,2カ所は虫歯が見つかり、そのまま何度か通うはめになっていたのが、この時は虫歯は1本も見つからず、さらに「上手に磨けているようですし…」というお墨付きまでもらえました。

もちろん「このアプリを使わずに同期間過ごしていたらどうなっていたか」というコントロールサンプルがないので、必ずしもこのアプリを使い続けたおかげだとは言い切れませんが、周囲でこのアプリを使い続けている友人たちからも同様に「歯医者さんに褒められた」という報告を耳にしているので、一定の効果はあるのだろうと考えています。

※「5分歯みがき」の経緯については、こちらでまとめています。

いつの間にか使わなくなっていた…

歯医者で褒められたことで安心したこともあったのでしょう。

ほどなくして「もうガイドを見なくても大丈夫、覚えた!」という日がやってきました。

それがいつのことだったかは記録し忘れたために失念してしまいましたが、とにかくその日以降、このアプリを起動することはなくなりました。

その後、iPhoneからも削除されました。

手元の記録によると「5分歯みがき」を使い始めたのは2010年2月で、歯医者で褒められたのは2011年8月でしたから、少なくとも1年半は使い続けたことになります。

ふたたび使い始めてみたら愕然とした

それから1年半たった2013年2月9日に、ふたたびこのアプリを再度インストールして使い始めることになりました。

きっかけは「子どもがなかなか歯みがきをしたがらなくて困っている」という知人からの相談を受けたこと。

すぐさま「5分歯みがき」のことを思い出しました。「N○VAうさぎ」を彷彿とさせるキャラクターが歯みがきガイドしてくれる、というこのアプリのコンセプトは大人よりもむしろ子どもにぴったりじゃないか、と思いいたったからです。

さっそくオススメしてみたところ、予想通り「夢中になって磨いてくれるようになりました♪」との結果報告。

このことに気をよくして、せっかくだから久々に自分でも使ってみるか、ということで再度インストールとあいなったわけです。

しばらくぶりに「ガイド」に沿って歯を磨いてみたら、いつの間にか磨き方が我流に陥っていたことに気づいて愕然としました。

ステップを一部を省略していたり、必要以上に同じ箇所を磨き続けていたりして、トータルでも余計に時間がかかっていたのです。

かけた時間に比して得られる効果が減衰する、すなわちROT(Return On Time;時間効率)が下がっていたわけです。

歯みがきをしながらiPhoneでメールチェックやRSSチェックをするようになったことで、読むことに夢中になって歯を磨く手の動きがおろそかになっていたのです。

儀式には意味がある

少し前に以下のようなツイートをしました。



儀式と形式という2つの言葉を使っています。

儀式については、以下の記事で詳しく書きましたが、一言でいえば「ある1つの成果物を作り上げるための手順」です。

この手順が身についた状態が習慣です。


歯みがきには目に見える成果物はありませんが、強いて言えば「その日に歯についた汚れを除去した状態」ということになるでしょう。

この状態を作り上げるための手順が歯みがきであり、「5分歯みがき」のガイドはこの手順を最適化したもの、すなわち儀式といえます。

上記の記事でも書きましたが、一度手順を身につけてしまえば、いちいちガイドに立ち戻らなくてもできるようになります。

でも、この状態は“経年劣化”していきます。気づいたら我流に陥ってしまうのです。

すべての儀式には意味があります。一つでも手順が抜ければ全体としての意味を失ってしまうのです。

逆に余計な手順が加わるのならまだましですが、その分だけ儀式に余計な時間がかかるようになるので、意味は薄められてしまうでしょう。

経年劣化が進むと、儀式はいつしか形式に変異します。

意味が失われた抜け殻の状態です。

さすがに意味がゼロになることはめったにないと思いますが、歯みがきのように、

  • 必要な手順が抜けたり、
  • 不必要に同じ箇所を磨き続けたり、

といった過不足によって本来の意味が薄まることは仕事では頻繁に起こっているのではないでしょうか。

もちろん、時間の経過とともに前提や環境が変化し、当初の儀式の持っていた意味自体も経年劣化することもあるでしょう。

従って、

  • 儀式が最新の前提と環境にフィットしているかどうか、
  • 所期の効力を発揮するものであるのかどうか

を常に検証する必要があります。

儀式だと思っていたことが形式に変異していたら、思い切ってそれをやめてしまうか、あるいは改めて意味を吹き込み、儀式に戻すようにします。

自家用車を定期的に車検に出すのと同様に、身についた習慣も定期的にメンテナンスが必要なのです。

このメンテナンスは週次レビューや月次レビューなどの各種定点観測ポイントで行うようにすると良いでしょう。

儀式を見直すための儀式です。

合わせて読みたい:

本書で言う「テンプレート」は「儀式」と言い換えることができます。

興味深いのは、「テンプレートに完成はない」「テンプレートは進化する」といったことが書かれている点です。

またテンプレートの劣化を防ぐための、「テンプレート仕事術」を続けるための「テンプレート」が提案されています。

時間の経過と共に、当初の目的についての意識が弱まったり、面倒臭いといった怠け心の誘惑に惑わされることもあるので、その時に機械的に「続けざるを得ない」ような仕組みを用意しておくのです。いわば、「テンプレート仕事術」を続けるための「テンプレート」作りです。

儀式にも同じことが言えます。儀式を続けるための儀式、それがレビューです。



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