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年末には、情報環境の見直しを!

倉下忠憲さて、年末です。

去年も似たようなことを書いていますが、この時期は情報環境を整理するよいタイミングと言えるでしょう。

日頃ため込んだ情報を「消化」することに時間を使ってもよいですが、そもそもその「日頃ため込む」ことについて改善してみるのもよいかもしれません。

すべての情報は拾えない

情報は大量に存在しています。そして新しいものが日々生まれ続けています。現実的に考えて、一人の人間がすべての情報を「インプット」することはできません。

自分の興味あること、面白いことに限ったとしても、遙かにキャパを超える量の情報が提供されています。

それが「書籍」という形を取っているのならば、購入するためのお金や本棚の許容量などによって制約がかかります。しかし、無料で手軽に読めるネットソースだと際限がありません。

いくらでも無制限に使える「魔法」のクレジットカードを持って書店に行くことを想像してみてください。(読書好きの方ならば)あきらかに読み切れない量の本を、ホクホク顔でカゴに突っ込んでいくのではないでしょうか。それと同じようなことがネットでは簡単に起きます。

自分の興味あることに関する情報を集めるのは別段悪いことではありません。むしろ、そういうことができるのは生活における「豊かさ」と言えるかもしれません。しかし、あれもこれもと手を広げていくと、確実に失われるものがあります。

言うまでもなく、それは「時間」です。

読む以外の行動ができているか?

たとえば、こういうことはないでしょうか。

  • 新しい本を読むことに追われて、昔読んだ本を再読できていない
  • 新しいブログ記事をたくさん読むのに夢中で、一つの記事について考えを巡らせられていない
  • 情報を読むことだけで一日が終わり、自分のアウトプットが作れていない

これを「本末転倒」とまで言えるかどうかはわかりませんが、ちょっともったいないことは確かです。

一度読んだ本を再読する、あるいは読書メモを作る、「考えさせられる」記事を読んだら実際に考えてみる、そしてそれを文章化する。

そういう行為をやってみると、もう一段深いところでその情報と接することができるようになると思います。おそらく「情報が血肉になる」というのはこういう段階を経た状態を指すのでしょう。

しかし、こういう作業をするにも「時間」が必要です。読むことばかりに時間を使っていると、こういう作業が削られてしまいます。逆に言えば、こういう作業も含めて「インプット」の時間として自分の「時間割」を立てておく必要があるのかもしれません。

少なくとも、情報を「読み終える」ことすらできていない「ため込み状態」は完全にオーバーフローしていると言って良いでしょう。

止めるのが実は一番害がない&難しい

毎日読んでいる新聞や、ブログのRSSを一日だけまるっきりストップしてみてください。

やってみると分かりますが、ほとんど問題なく日常生活が送れます。天気などの情報を必要に応じて検索するようにすれば、プッシュ型で流れてくる情報を追いかけなくても別にやっていけます。そう考えると、時間の「仕分け対象」になってしかるべきなのが、このタイプの情報収集です。

しかし、実際それを削減するのは簡単ではありません。

それは、デザートを食べなくてもカロリー的には生命活動に問題ないけれども、それを食べるのを止めるのが難しい、というのに似ているかもしれません。

基本的に新しい情報を仕入れることは楽しいことです。さらに、「毎日読んでいる」という行動習慣が、「今日それを読む」という行動を強化します。だから、意識的に何かの制約を浸けない限り、ずるずるとインプットに時間を使うことになってしまいます。

では、どうすれば良いのか。手っ取り早いというか一番の解決策は時間ログを取ることです。一週間分でも自分の行動記録をつけて、円グラフでも棒グラフでも自分が何に時間を使っているのかを表示させてみることです。

そして、手持ちの時間に合わせてインプットの量を調整します。24時間から、仕事や生活を維持するために使う時間を差し引いた時間が「手持ちの時間」です。

子どもの頃、「テレビゲームは1時間だけ」というルールを指定された方もいるでしょう。それと同じように自分の「手持ちの時間」のサイズに合わせてプッシュ型の情報インプットの時間を決めてしまいます。

手持ちの時間が2時間あって、「ブログを読むのは30分だけ」と決めてしまえば、残りの1時間30分は別のことに使えます。当然、それに合わせてRSSの登録もより厳選されたものになってくるかもしれません。

さいごに

情報は大切ですが。すべての情報が大切というわけではありません。

朝食の時間に朝刊を読む習慣がある人が、たまたま前日の新聞を読んでいないとしたらどうするでしょうか。それぞれ二倍の速度で読む、昨日の新聞は一面だけ読む、あるいは昨日の新聞はあきらめる。いろいろな対応が考えられます。

しかし、プロのジャーナリストでもない限り、朝食の時間を延長してまで昨日の新聞にまでじっくり目を通す必要はないでしょう。

年末でも年始でもよいですが、湯水のように流れ込んでくる情報から身を置いて、ちょっと自分の環境について考えてみるのがよいかもしれません。

「一人の人間がインプットできる情報には限界がある」と割り切って、情報八方美人を止めれば、情報ソースやインプットに使う時間についての考え方もきっと変わってくるでしょう。

▼関連エントリー:

年末には情報ワークフローの見直しを! 

▼今週の一冊:

コメントを書くのが大変難しい本です。「面白い本」であることは間違いないのですが、「面白い」という言葉で表現してしまうと物足りない気分になってしまいます。

軽いエッセイの文体と、客観的な視点による分析思考、そしてどうしようもなく重い現実とそれに向き合う著者。この絶妙なバランスが希有な一冊を生み出しています。

この短い「今週の一冊」では、「読んでみてください」という以上の事は書けそうもありません。


▼編集後記:
倉下忠憲



最近MacBookAirを13の新品に変えてホクホクしてます。バッテリー容量の増量とメモリが4MBになったので、快適さが上がりました。もちろん、画面も大きくなったわけですが、多少「持ち歩こう」という気持ちが薄くなったというのが正直な感想です。11の方は「持って歩きたい」ぐらいのテンションで、13は「持ち歩くのにも便利」というぐらいのテンション。

ほんとにちょっとした違いですが、案外この差は大きいです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。